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第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第3節 超高齢社会におけるICT活用の在り方

3 総務省の取組─ICT超高齢社会構想会議の内容─

今後、アジアを中心とした世界各国が高齢社会を迎えるが、これに先行する我が国が、課題解決先進国として、ICTにより「一人ひとりが安心して元気で暮らすことのできる活力ある社会」を実現し、なおかつ、経済成長をも成し遂げられることを世界に示すとの考えから、総務省では、ICT成長戦略会議傘下の8つの会議のうちのひとつとして、昨年12月から、ICT超高齢社会構想会議(座長:小宮山宏/(株)三菱総合研究所理事長)を開催し、2020年を視野に、そのような社会の実現に向けて必要となるICTの活用方策について検討した。同会議報告書8の内容を紹介する。

同会議では、社会の閉塞感を打破し、パラダイムシフトをもたらす原動力としてICTを最大限活用していくことが必要であるとの共通認識の下、目指すべき超高齢社会の在り方について議論を重ね、その上で、

ア 超高齢社会の到来がもたらす様々な政策課題のうち、ICTを活用することにより、明確な解決方策を提示できるものを重点的に検討すること。

イ 今後の超高齢社会における高齢者を、必ずしも「支えられる」存在としてのみとらえるのではなく、現役世代とともに社会経済活動を「支えていく」存在としてもとらえる必要があること。

ウ ICTシステムやサービスの開発・普及については、供給者目線ではなく、利用者目線に立って検討を進めること。その際には、生産性や効率性のみを追求するのではなく、運用コストも含めた持続可能性を念頭に置くこと。

エ 多様化する社会のニーズに対応し、新産業の創出につなげるため、ICT産業内の連携に加え、ICT産業と他産業との異業種連携(オープンイノベーション)を進めること。

オ 国内におけるICTシステムやサービスの普及を促進することは言うまでもないが、同時並行的に急速に高齢化が進むアジア諸国を中心とするグローバル展開を目指すこと。

の5項目を内容とする「スマートプラチナ社会」の実現を今後のミッションとして示した。スマートプラチナ社会とは、「シルバー」を越え、すべての世代がイノベーションの恩恵を受け、いきいきと活動できる超高齢社会のことであり、ICTにより、安心・元気なくらしを創造することを目指すものである。

さらに、同会議では我が国が目指すべき超高齢社会のビジョンを以下の3点に集約し、その実現に向けたICTの活用方策(図表2-3-3-1)を示した。

図表2-3-3-1 目指すビジョンのため推進すべき施策
(出典)総務省「ICT成長戦略会議」(第4回)資料

① すべての国民が、可能な限り長く健康を維持し、自立して暮らすことができ(健康寿命の延伸)、また、病気になっても住み慣れた地域で、質の高い医療・介護サービスを享受することができる社会の実現

② 健康で意欲のある高齢者が、その経験や知恵を活かし、現役世代と共生しながら、生きがいを持って働き、コミュニティで生産活動や社会参加ができる社会の実現

③ 世界に先駆けて超高齢社会を迎えた我が国が、課題解決先進国として、その解決方策となるICTシステム・サービスの日本モデルをいち早く確立し、新産業の創出とグローバル展開を実現

同会議報告書では、ICTの積極的な活用に加え、法規制の在り方等社会制度そのものの見直しを含む環境整備を行うことにより、すべての国民がその健康を維持し、また、健康で意欲のある高齢者が現役世代と共生しながら生きがいを持って就労・社会参加できるといった活力ある社会を実現することが重要であることも提言されている。

また、同会議では経済効果推計を行った。超高齢社会においては、医療・介護・健康分野、移動・住まい分野、就労分野、コミュニティ・社会参加分野等の各分野において、ICTを活用した新産業が創出されると考えられる。経済的影響を推計するに当たっては、各分野におけるICTシステム・サービスを想定した。具体的には、医療・介護・健康分野では、遠隔健康相談システム、予防医療・疾病管理サービス、医療情報連携サービス、移動・住まい分野では、見守りサービス、ライフサポートサービス、就労分野では、クラウドソーシング、テレワーク、コミュニティ・社会参加分野では、生活支援関連ロボット等が考えられる。

上記で想定した新産業について、ICT超高齢社会構想会議では、現状(2011年)の最終需要と2020年の最終需要を推計9したところ、現状(2011年)の高齢者向けICTを活用した新産業の経済効果(直接経済効果と間接経済効果の合算)は約1兆7,111億円と推計した。さらに、2020年時点の経済効果を2つのケースに従って推計した。これは、①施策効果により、潜在的に利用意向のある消費者の利用が拡大したケースA、②施策効果により、想定される高齢者ユーザーのほぼすべてが利用するケースB、である。2020年時点の経済効果は、ケースAが約10兆6,939億円、ケースBでは約23兆3,676億円となった(図表2-3-3-2)。

図表2-3-3-2 高齢者向けICTを活用した新産業(システム・サービス)の経済効果
(出典)総務省「ICT超高齢社会構想会議報告書」


8 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000069.html別ウィンドウで開きます

9 算定に当たっては、各種データソース(日銀短観、特定サービス産業実態調査等公的統計の他、民間調査機関調査の統計も使用)に加え、アンケートの調査結果を用いた。

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