(1)ICT関連産業の動向 ICT産業における決算動向を見てみると、上位レイヤー、特にプラットフォームレイヤーの好調さがより鮮明になっている。海外ではGoogleやFacebookを初めとした上位レイヤーが大幅な増収となっており、日本国内に置いても楽天、Yahoo、DeNA等の企業が好決算となっている。また、国内の通信キャリアにおいてはスマートフォンへの移行によるデータ通信料増加に支えられる形で増収傾向となっている。 ITベンダーにおいては、海外ではOracleやSAPなど自社の強みを生かしている企業は増収を確保している一方で、国内では富士通など事業転換を急いでいる企業は減収傾向が目立つ。メーカー系にいたっては昨年に引き続きApple、Samsungの好業績が目立つ一方、我が国のメーカーはICT以外の事業も含まれるとはいえ、金融系で柱を持つソニーを除きおおむね厳しい決算状況となっている。(図表1-2-1-1)。 図表1-2-1-1 国内・海外の主要ICT企業の決算動向 (出典)各社決算発表資料より作成 一方で好調と言われる海外の上位レイヤーにおいても変化が起き始めている。2010年前半にiPhoneの好調に押され、GoogleやMicrosoftの時価総額を抜き世界1位の時価総額になったAppleだが、2012年9月に1株700ドルを突破したのをピークに株価は下落しつつある。かつてはGoogleの2倍以上の6千億ドルを超えていた同社の時価総額は2013年5月7日現在で4千億ドル強、世界2位のエクソンモービルと時価総額の上下が入れ替わる局面もある状況となっている(図表1-1-1-10参照)。 一方で、国内の上位レイヤーをみると、近年成長を続けているソーシャルゲームに関して変化が起こっている。以前よりパソコン向けのオンラインゲーム事業を行っていたガンホー・オンライン・エンターテイメントが、2012年2月にリリースしたスマートフォン向けソーシャルパズルゲーム「パズル&ドラゴン」が2013年4月末時点で1,300万ダウンロードを超える大ヒットを記録し、同社決算は前年比で売上高が約2.7倍、営業利益は約7.9倍となり、それに伴い株価もおよそ50倍以上 1 に上昇。時価総額は2013年4月に1兆円を超え、DeNAの2.5倍、GREEの3倍以上にまで急成長を遂げている(図表1-2-1-2)。これまで急拡大してきたソーシャルゲーム業界だが、最近では同社に代表されるゲームアプリを自社開発する企業も多数参入してきており、今後更に競争が激化していくことが予想される。 図表1-2-1-2 主要国内ゲーム関連企業の株式時価総額比較 (出典)総務省「ICT産業のグローバル戦略等に関する調査研究」(平成25年) 1 同社は2013年3月27日に1株を10株とする株式分割を行ったため、2012年2月1日時点の株価終値173,000円を1/10に換算し2013年5月10日終値1,042,000円と比較。