(2) 電子行政の強化に向けた戦略的取組 (1)に述べたように、電子行政については、これまで政府情報システムの運用コストや業務処理時間の削減、行政手続のオンライン利用の促進等、様々な取組を進め、一定の成果を挙げてきたところである。一方で、行政の電子化を国民が十分実感できていないことなど、いくつかの課題が挙げられており、こうした課題を解消するため、今後、さらなる行政サービスの利便性向上や徹底したコストカットに取り組んでいくことが必要である。 こうした状況を踏まえ、総務省では、「便利なくらしを創る!」というミッションの下、「より便利で利用者負担の少ない行政サービス」、「徹底したコストカットと効率的な行政運営」、「災害やセキュリティに強い行政基盤」という3つのビジョンを実現するための施策を、平成25年3月28日に開催されたIT総合戦略本部に提言した(以下「総務省提言」という。図表2-1-1-10及び図表2-1-1-11)。この提言内容は、「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月閣議決定及びIT総合戦略本部決定。以下「新戦略」という。)にも反映されており、同提言及び新戦略には、以下のような取組を推進していくことが示されている。 図表2-1-1-10 電子行政の推進 -ICTで引き出す行政の活力-平成25年3月28日IT総合戦略本部総務省提出資料から抜粋) 図表2-1-1-11 電子行政のStrategy - 取組の方向性 (出典)平成25年3月28日IT総合戦略本部総務省提出資料から抜粋、加工 ア 利便性の高い電子行政サービスの提供 行政手続のオンライン利用については、既述のとおり、近年の利用促進の取組により利用率が向上しているところであるが、国民ニーズの把握・使い勝手の改善や、オンライン手続の利用促進を通じて行政運営の効率化を図っていくことなどが今後の課題として考えられる。 総務省提言では、利用者視点で業務を見直し、時間、労力、コストといった国民負担を軽減する行政サービス改革を進めることを示し、これを受けて新戦略では、「2013年度中に、これまでのベストプラクティスも参考にしつつ、オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針を策定する」とともに、「業務改革を計画的に進め、利用者が望むワンストップサービスやモバイルを通じたカスタマイズ可能なサービスなど利便性の高いオンラインサービスを提供するとともに、効率的な行政運営を実現する」こととされている。 イ 国・地方を通じた行政情報システムの改革 情報システムの改革については、従来進めてきた業務・システムの最適化の取組に加え、さらなる行政運営の効率化を推進する観点から、総務省提言において、各府省の情報システムの統廃合を進めるとともに、政府情報システムのクラウド化を加速し、災害やサイバー攻撃にも強い、強靱なシステム基盤の構築に取り組む方針を打ち出した。 新戦略では、「2013年中に政府情報システム改革に関するロードマップを策定し、政府CIOの指導の下、重複する情報システムやネットワークの統廃合、必要性の乏しい情報システムの見直しを進めるとともに、政府共通プラットフォームへの移行を加速する」こととされ、これらを踏まえ、「2018年度までに現在の情報システム数(2012年度:約1,500)を半数近くまで削減するほか、業務の見直しも踏まえた大規模な刷新が必要なシステム等特別な検討を要するものを除き、2021年度目途に原則すべての政府情報システムをクラウド化し、拠点分散を図りつつ、災害や情報セキュリティに強い行政基盤を構築し、運用コストを圧縮する(3割減を目指す)」こととされている。 さらに、地方自治体においても、自治体クラウドについて、「番号制度導入までの今後4年間を集中取組期間と位置付け、番号制度の導入とあわせて共通化・標準化を行いつつ、地方自治体における取組を加速する」こととされている。 また、社会保障・税番号制度(以下「番号制度」という。)は、複数の機関に存在する個人の情報を同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり、社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、公平・公正な社会を実現するための社会基盤となるものである。平成25年通常国会において成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)」により、平成28年以降、個人番号の利用が開始されることとなった(図表2-1-1-12)。 図表2-1-1-12 番号制度の概要 番号制度を導入する行政分野等については、制度導入のスケジュールに合わせて、行政サービスと業務改革及び情報システムの改革に関し、政府CIOの指導の下、関係機関が連携しつつ計画を策定し、これに沿って着実に取り組む。 また、今後整備される「マイポータル(仮称)」を活用した個人向けサービスを展開し、行政のコンシェルジュサービスともいえる利用者一人ひとりのニーズに合わせたワンストップ・プッシュ型サービス等、利便性の高いオンラインサービスをパソコンや携帯端末など多様なチャネルで実現する。 ウ 政府におけるICTガバナンスの強化 電子行政に関する様々な施策を推進する上での共通的な課題として、電子行政についての政府内のガバナンスや評価体制が弱く、PDCAが十分に機能していないことや、ICTを利活用できる人材が不足し、ICTを活用した改革の意識が乏しいことがこれまで指摘されてきた。 こうした課題に対処する方策として、総務省提言は、 ・政府CIOの下、第三者の視点による評価の枠組も導入し、費用対効果の明確化、実効性・効率性を確保すること ・情報システムの整備・運用や資産管理に関し、共通ルールをガイドラインとして整備し、品質レベルを底上げすること ・職員のICT能力、情報システムのマネジメント力を育成し(年間延べ1万人程度を養成)、電子行政推進の担い手を輩出すること を示した。 これらの提言に対応する形で、新戦略では、 ・政府CIOの下、政府情報システム改革に関するロードマップの着実な実施に向けた政府情報システムに関する投資計画を2014年度予算編成に合わせて策定・推進すること。また、IT総合戦略本部の下に新たな評価体制を整備すること ・情報システム調達やプロジェクト管理に関する共通ルール等を整備すること。また、政府情報システム資産管理等のためのデータベースを整備・運用すること ・政府におけるICT人材の育成を図るため、研修プログラムの見直し・充実を政府横断的な取組として実施すること などが掲げられている。 エ 電子行政推進に向けた今後の取組強化について 新戦略は、従来の電子行政の取組において、サービスの電子化・ワンストップ化に一定の成果が挙がっていることを評価しつつも、あくまで窓口・紙による行政サービスが基本で、オンライン・電子化は補助的手段であったことや、省庁あるいは省庁組織内の縦割り構造が原因となって、利用者にとって必ずしも使い勝手の良いサービスが提供されてこなかった点を指摘している。 こうした課題への反省に立ち、今後は、より便利で利用者負担の少ない行政サービスの提供を、災害や情報セキュリティに強い行政基盤の構築と、徹底したコストカット及び効率的な行政運営を行いつつ実現することが求められている。総務省としても、政府CIOと連携・協力し、関連施策を着実に推進することにより、国民本位の電子行政の実現を目指していくこととしている。