(3)総務省の取組 以上のような状況を踏まえ、総務省においては、昨年12月から「ICT生活資源対策会議」を開催し、世界規模の課題であり、かつ、国民の安心・安全に直結した課題である、“生活資源”の安定的・効率的な確保に、ICTでどのように貢献することができるか検討を行い、計8回の会合での議論を経て、本年5月に報告書を取りまとめた 51 。その提言事項(図表2-2-2-20)を以下に紹介するが、詳細については報告書を参照されたい。 図表2-2-2-20 生活資源対策の全体概念図 (出典)総務省「ICT成長戦略会議」(第4回)資料 ア Mission(使命)、Vision(目標)とApproach(取組の方向性) ICTを活用した生活資源対策を真に実効あるものとし、その効果を最大限に発揮するためには、社会経済システムへの実装を進めていくことが重要であり、そのためには、広く関係者間に共通認識を醸成することが必要である。このような観点から、まず、ICTを活用した生活資源対策のMission(使命)として、「「便利で安心な暮らし」を創る!〜世界最高水準の効率性による持続可能な社会の実現!〜」を定め、Vision(目標)として、「I.生活資源対策のICTによる徹底した高度化・効率化、II.積極的なグローバル展開による国際競争力の強化、III.社会・暮らしを支えるICT共通基盤の強靱化」の3つの柱を示している。 また、Mission(使命)とVision(目標)の実現に向けたアプローチとして、6 つの基本的視点(生活者視点・利用者視点、経済効果・合理性・持続可能性、分野横断的な連携・官民の役割分担、共通性・連関性、柔軟性・安全性及び透明性)に留意することとし、これらの視点を踏まえて、具体的な実現可能性が高く、政策効果・経済効果の高い取組を、ICTを活用した生活資源対策として推進していくことが必要である。 まず、重点分野として、「鉱物・エネルギー」、「水」、「農業(食料)」、「社会インフラ」の4分野について、それぞれ短期の実証実験等、中長期の研究開発という時間軸を意識した2つのステップを有機的に組み合わせ、重点プロジェクトとして総合的に推進していくことが必要である。あわせて、これらの重点プロジェクトをはじめICTを活用した生活資源対策を支える、オープンデータ連携基盤の確立やネットワーク基盤の高度化など、ICT共通基盤の強靱化にも取り組むことが必要である。 イ Action (具体的な取組) (ア)重点4分野(鉱物・エネルギー、水、農業(食料)、社会インフラ)におけるプロジェクトの推進 鉱物・エネルギー資源分野では、文部科学省、 独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)、その他関係省庁・機関と連携しながら、短期では通信衛星(きずな)を活用した「海のブロードバンド環境」の実現、中長期では次世代超高速ブロードバンド通信衛星による最適な調査環境の実現に取り組むことが期待される。 水資源分野では、水道事業を実施する地方自治体(公営企業)や関係省庁等と連携して、短期ではICTを活用した高度な漏水検知システムの構築、中長期では水利用をネットワーク化した水版スマートグリッドの実現に取り組むことが期待される。 農業(食料)資源分野では、農林水産省等と連携して、短期では農業の生産性向上に向けたICTによる知識産業化、中長期では生産から流通、消費まで一貫したバリューチェーンの構築による高付加価値化に取り組むことが期待される。 社会インフラ資源分野では、地方自治体等関係機関と連携して、短期ではプローブ情報を活用した道路の効率的な維持管理の実現(国土交通省と連携)、中長期ではセンサー等を活用した遠隔監視による予防保全的な維持管理システムの実現に取り組むことが期待される。 加えて、以上の重点4 分野におけるプロジェクトの成果を、課題先進国である我が国の優れた先進的課題解決モデルとして、海外にも積極的に展開することにより、相手国の抱える社会的課題の解決に貢献するとともに、我が国ICT産業の国際競争力の強化に寄与することが期待される。 (イ)社会・暮らしを支えるICT共通基盤の確立 ICTを活用した生活資源対策を社会実装していくためには、個々のプロジェクトの推進に加えて、これらの取組を支える共通的な基盤について、機能・インフラの共有・連携を最大限進めることにより、効率的でオープンなICT共通基盤として、オープンデータ連携基盤、アプリケーション共通基盤及びネットワーク基盤を確立することが必要である。特に、ネットワーク基盤の確立においては、様々な分野において多種多量のデータを収集・分析・活用するための共通の基盤となるM2Mプラットフォーム(センサーネットワーク)技術の研究開発・実証や、超省電力小型センサー技術(エネルギーハーベスティング)の研究開発・実証の取組を推進することが期待される。 (ウ)生活資源対策を支える研究開発・人材の強化、国民の参加 先に掲げた重点プロジェクトを着実に推進していくことに加え、今後も、ICTを活用した生活資源対策のシーズの発掘・創出に不断に取り組むことにより、生活資源対策の裾野を拡大していく仕組を構築することが必要である。 また、ICTを活用した生活資源対策の一層の高度化を図っていくためには、その担い手となるICT人材の育成に努めることが不可欠であり、例えば、総務省における他の人材育成の取組 52 などと連携しながら、効果的な人材育成を推進することが必要である。さらに、生活資源対策は、国が政策として進めるだけではなく、国、自治体、事業者及び国民が一体となった取組が求められる。 同会議では、以上に記載した各プロジェクトの実施により、2025年までの累計で、国内で約20兆円の経済効果(約2.6兆円の市場創出効果、約18兆円の社会コスト削減効果)が見込まれると試算 53 している。 51 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin01_03000184.html 52 「実践的ICT人材育成推進事業」、「ICT地域マネージャー派遣事業」等 53 株式会社国際社会経済研究所が大胆な仮定に基づき推計したもの。