第1節 ビッグデータ活用とパーソナルデータ ICTの普及により、ライフログ 1 など多種多様な個人に関する情報を含む大量の情報(いわゆるビッグデータ)がネットワークを通じ流通する社会を迎えている。これにより、新事業の創出、国民の利便性の向上、より安心・安全な社会の実現などが期待される一方、個人に関する大量の情報が集積・利用されることによるプライバシー等の面における不安も生じている。 また、スマートフォン、タブレット端末などいわゆるスマートデバイスの普及が、我が国においても急速に進展している。スマートデバイスの特徴は、ネットワークに接続した状態で携帯され、いつでもどこでも多種多様なサービスを享受することができることにある。スマートデバイスにおいては、利用履歴、位置情報等の様々な情報の蓄積・発信が可能となっており、利便性の高いサービスを安心・安全に利用できるようにするため、これらの情報の適正な利活用が確保されることの重要性が増している。 また、ICTの普及は、クラウドサービスなど国境を越えた情報の流通を極めて容易としており、国際的な調和の取れた、自由な情報の流通とプライバシー保護の双方を確保する必要性が高まっている。こうした中、海外においてもEUのデータ保護規則提案 2 、米国の消費者プライバシー権利章典の公表 3 など活発な議論が行われている。 本節では、海外でのパーソナルデータの活用に関する先進事例を紹介した後、現在、急速に普及するスマートフォンにおける利用者情報の収集に関する議論や、海外におけるパーソナルデータの取扱いに関する議論を紹介する。その後、各国政府や国際機関におけるパーソナルデータ保護に係る制度・政策の動きについて、米国及びEUを中心に紹介する。 続いて、我が国を含む6か国の利用者に対して行った、パーソナルデータの取扱いに係る利用者意識に関するアンケートの結果を紹介した後、我が国におけるパーソナルデータに係るルール作りに向けた総務省の取組について紹介する。 1 蓄積された個人の生活の履歴をいい、購買・貸出履歴、視聴履歴、位置情報等々が含まれる。 2 European Commission, Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on the Protection of Individuals with Regard to the Processing of Personal Data and on the Free Movement of Such Data (General Data Protection Regulation)(2012). 3 White House, Consumer Data Privacy in a Networked World: A Framework for Protecting Privacy and Promoting Innovation in the Global Digital Economy (2012).