(4)自前主義への拘り 我が国の産業の特徴として、国内で激しい市場競争を繰り広げている点がある。例えば、2000年のBSデジタル放送開始時には、シャープ、ソニー、東芝、パイオニア、日立、松下、三菱電機、JVCの8社が対応テレビを自社生産するなど、数多くの社が競争力の確保をめざし、網羅性の高い技術を保持していた。一方で、欧米や韓国では、それぞれの分野で高い競争力を有する社は各国とも少数であり、必要な技術がその少数の社に集中していると考えられる。 その一方で、我が国の大企業は、他社技術の導入については、パーツや部材として完成している技術については製品開発に当たり多種多様なものが利用されているが、技術を持つベンチャー企業や中小企業のM&Aや、大学や他社からの技術そのものの購入など、第三者が開発した技術を自らのものとする動きや、グローバルな共同研究開発への取組が弱い。例えば、大企業の新規事業創出への研究投資は、海外拠点を含めた自社研究所の研究開発にその大宗が使われている 5 。 また、「技術発」の視点が強く、例えば大企業が、自らが保有する技術により新たな製品・サービスが提供できないかを模索する傾向が強く、さらに、当該技術が複数の強みを有する場合、その強みすべてを活かした製品・サービスを生み出そうとする傾向が強い。 さらに、自己の技術に自信があるが故に、環境変化への対応に際し、技術を先鋭化させ、持続的イノベーションで戦い続けようとする傾向もある。 この傾向は、個々の企業単位だけでなく、国全体としても「国内主義」「国産主義」として存在しており、我が国の国際競争力維持の観点では重要な姿勢ではあるが、破壊的イノベーション創出の芽を見落とす原因となっている可能性もある。 5 情報通信審議会情報通信政策部会イノベーション創出委員会(第4回)濱田専門委員提出資料参照