(5)インドの情報通信政策の動向 インドの情報通信分野は、1991年以降の経済自由化政策の流れに従い、規制緩和、外資活用等による自由化路線がとられた。その結果、2000年以降、特に移動体通信分野において加入者が爆発的に増加した。2010年後半より、成長率はやや鈍化したものの、2012年12月末の加入者数は8億6,472万で人口普及率は70.82%となり、世界的には中国に次ぐ規模の市場となった。その一方で、固定通信サービスの加入者数は微減傾向を示しており、同じく2012年12月現在では3,079万で人口普及率2.52%にとどまっており、投資とサービス普及が移動体通信分野に集中している状況である。固定インターネットの加入者は2,533万(人口普及率5,49%)、そのうちブロードバンドは1,498万(3.25%)で増加傾向を示しているもののまだ普及率は低いといえる。 情報通信産業、特に通信分野は、電力、交通、水力等と同様にインドの経済成長にとって重要な基礎的インフラと考えられている。インターネット加入者が10%増加すると、GDPは1.08%増加し、移動体通信サービス加入者が10%増加するとGDPが1.5%増加するとの調査結果が出ている 1 。 ア 2012年国家電気通信政策 インド内閣は2012年5月31日、今後約10年間のインド情報通信分野の方向性を決定付ける新たな規制・政策の枠組である「2012年国家電気通信政策(National Telecom Policy-2012)」を承認した。 2012年国家電気通信政策の目標は「安心安全で信頼でき、手ごろな価格で利用でき、高品質で融合された電気通信サービスが、いつでもどこでも利用できるようにし、それが社会経済全体の発展を加速させること」となっている。また、電気通信サービスが経済全体に乗数効果と変革をもたらすような影響を与えることをも目指している。 この政策は、今後制定される各種のガイドラインによって実施されることになり、現在のサービス・プロバイダが新しい自由で公平な政策枠組に迅速に移行できるよう、適切な対策が推進されることになる。 イ 2012年国家IT政策 インド内閣は2012年9月20日、「2012年国家IT政策(National Policy on Information Technology 2012)」を承認した。同政策は、情報通信が人々の生活を変革する力を有するという確信の下、国家の経済的、開発上の課題に対処するためICTを活用することを目的としている。 ウ 2012年国家電子機器政策 インド内閣は2012年10月25日、「2012年国家電子機器政策(National Policy on Electronics 2012)」を承認した。インドでは電子機器産業が急速に発展しており、同政策は、電子システム・設計・製造(Electronic System and Design and Manufacturing:ESDM)分野において国内需要を満たすと同時に国外輸出を増やし、インドがESDM分野の国際的なハブとなると同時に、同分野の雇用を増大させることにより、さらなる経済成長を達成するという内容となっている。 また、海外製品に頼るのではなく、国内製品を普及させることによって、安全保障の面だけでなく、民間のインフラ部門(通信、電力、鉄道、航空等)においてもサービスの連続性を確保することが重要としている。 インド政府は、ESDM分野の強化のため、2012年2月に主管庁である通信IT省傘下の情報技術局(Department of Information Technology:DIT)を「電子情報技術局(Department of Electronics and Information Technology:Deity)」に名称変更している。さらに今後、同政策目標達成のために産業界からの人材登用により「国家電子機器本部(National Electronics Mission)」が設立されることとなっている。 1 ICRIER(インド国際経済関係研究所) 「インド:インターネットの影響(India:The Impact of Internet)」(2012年1月19日) http://www.icrier.org/pdf/Internet_Release_20jan12.pdf