第8節 国際戦略の推進 1 国際政策における重点推進課題 (1)ICT海外展開の推進 総務省では、我が国のICT産業の国際競争力強化を目的に、ICT企業の海外展開への支援として、海外での各種普及・啓発活動の実施、諸外国情報の情報通信事情の収集・発信等の活動を行っている。 ア 地上デジタルテレビ放送日本方式(ISDB-T)の普及促進 地上デジタルテレビ放送分野においては、官民連携で日本方式(ISDB-T)の普及に取り組んでおり、2006年(平成18年)のブラジルを皮切りに、2013年(平成25年)にボツワナがアフリカで初めて日本方式を採用するなど、中南米・アジア・アフリカの合計14か国(日本を含まない。)が日本方式の採用を決定している。今後も、南部アフリカ諸国等に広く働きかけを実施していく予定である(図表5-8-1-1)。 図表5-8-1-1 世界各国の地上デジタルテレビ放送の動向 イ ASEAN諸国へのICTプロジェクトの展開 ASEAN地域は、6億人を越える人口を抱えており、近年成長が著しく、我が国企業の進出意欲が旺盛な、巨大なICT市場を擁している。また、2015年(平成27年)までに「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会・文化共同体」の3本柱から成るASEAN共同体の実現を目指している。このような状況にかんがみ、総務省は、ASEAN諸国に対するICT分野の国際展開に係る取組をより強化している。 2011年度(平成23年度)に開始した「アジアユビキタスシティ構想推進事業」では、我が国の先端的なICT利活用システムの導入を支援することにより、アジア地域での社会的課題の解決に役立てるとともに、我が国のプレゼンスの向上、我が国発ICTの国際標準化の推進及びICT産業の国際競争力の向上に貢献している。 また、2011年(平成23年)11月の日ASEAN首脳会議で採択されたバリ宣言においては、先端的なICT利活用やユビキタス環境の実現を通じて、ASEAN諸国における様々な社会問題の解決や経済活性化等への貢献を目指す「ASEANスマートネットワーク構想」(第1章第2節参照)が我が国の提案により盛り込まれたところであり、今後は日ASEAN統合基金(JAIF)等を活用しつつ、同構想を推進していく予定である。 さらに今後は、自然災害が多発するASEAN諸国を中心としたアジア地域に対し、我が国ICTを活用した防災分野への協力を推進していく。(詳細は2(1)ウ参照) 具体的には以下のとおり、ICT分野の国際展開の取組を行っている。 (ア)ミャンマー ミャンマー政府は、2010年(平成22年)の総選挙を経て民政移管後、政治・経済改革を進め、ICT分野では、携帯電話利用者数を2012年度(平成24年度)から5年間で3000万に増やすことを目標と掲げている。 また、2013年(平成25年)12月にはASEAN諸国が参加する東南アジア競技大会、2014年(平成26年)にはASEAN議長国就任が予定されている。これら国際行事に対応するため、ミャンマー政府は、我が国に対して通信網改善の要請を行い、我が国は、それに応えて無償資金協力「通信網緊急改善事業」で、経済活動の中心となる主要都市(ヤンゴン、マンダレー及びネピドー)での通信網の改善を行うこととしている。併せて、有償資金協力「広域通信網改善事業」による通信網の増強を図るべく、協力準備調査を実施している。引き続き、国際情勢を注視しつつ国民生活向上、日系企業進出につながる協力を続けていく予定である。 (イ)ベトナム 総務省は、持続的に経済成長を保持しているベトナムとの間で、2010年(平成22年)にベトナム情報通信省との間で情報通信分野における包括的な協力関係の推進に係る覚書を交換し、2012年(平成24年)6月にはソン情報通信大臣が来訪し意見交換を行うなど協力を進めてきた。 具体的な協力としては、環境情報等(大気、水質、水位等)を収集・分析するセンサーネットワークシステムの導入を推進している。今後、両国関係者において、同システム導入のための検討を進めることとしている。 (ウ)インドネシア ASEAN諸国の中でも最大の人口を抱え、経済成長を遂げているインドネシアは、巨大なICT市場を有しており、我が国にとっては非常に重要な地域である。2010年(平成22年)には、総務大臣とインドネシア通信情報大臣間で、日・インドネシア間の情報通信分野における包括的な協力に係る覚書の交換を行うなど、両国間の一層の協力を進めてきた。 ICT分野の協力としては、インドネシアが、我が国同様自然災害が数多く発生していることから、ICTを利活用したシステムの導入に関する取組を進めている。 たとえば、インドネシアでは災害時における住民への情報伝達の不十分さが被害の拡大や混乱を招くという深刻な問題が発生しており、迅速かつ正確な情報伝達が必要とされている。その実現のため、防災分野における数々の知見・経験を有する我が国ICTを活用した、災害情報の収集、処理、国民への配信といった一貫した防災ICTシステムの導入が非常に有益であり、特に情報・電力の手段が限られている僻地においては「コミュニティワンセグ 1 」システム等の普及が効果的である。総務省では、これまで、防災ICTシステムやコミュニティワンセグの有効性に関する調査研究や実証実験を実施してきた。この成果を踏まえ、2013年(平成25年)4月には、総務大臣がインドネシアを訪問し、インドネシア通信情報大臣と、防災ICTシステムの早期導入に向けた実現可能性調査等について相互に協力することで合意を行い、今後は、先方政府の協力のもと、実現可能性調査等の実施により、当該システムの早期の導入を目指している(第1章第2節参照)。 ウ デジタルコンテンツの海外展開支援 総務省では、平成23年11月より、コンテンツの海外展開促進に向けた諸課題に対して官民が連携して取組を進めることを目的として「コンテンツ海外展開協議会 2 」を開催し、平成24年8月に報告書が取りまとめられた。報告書では、海外展開促進の具体的方策として、「海外発信チャネルの継続的な確保(海外放送メディアを通じたレギュラー放送枠の確保やネット配信等新たなメディアを活用した情報発信等)」、「ローカライズへの対応」、「コンテンツ産業と関連産業を融合させた総合的な海外展開」、「海外向けネット配信も視野に入れた権利処理の更なる円滑化」等が示された。協議会の提言等を踏まえ、総務省においては、@海外現地の放送事業者との国際共同製作、A現地語字幕の付与等に対する支援について、平成24年度補正予算において、経済産業省と併せて計約170億円の予算を確保した。また、平成24年11月から放送コンテンツの海外展開、スマートフォン・スマートテレビに対応したコンテンツ配信等の新たな市場開拓に向けて、放送事業者、権利者、行政など関係者が連携して取り組むべき方策を検討することを目的として「放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会」を開催している。今後も、我が国のプレゼンス向上やコンテンツ産業及び関連産業の活性化に向け、クールジャパン戦略の一環として我が国コンテンツの海外展開の機会創出に向けた支援等を実施していく予定である(第1章第2節参照)。 1 太陽光発電やワンセグ等といった省電力のICTを活用して、無人島等でのテレビ放送を可能とするシステム。僻地におけるデジタル・ディバイド解消に有効であり、今後は防災、教育等への活用も期待される。 2 コンテンツ海外展開協議会: http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/contents_kaigai/index.html