第2節 ICT産業構造のパラダイムシフト 1 世界のICT産業構造の変化 ICT産業は、スマートフォンやクラウド事業等の拡大を背景に、世界規模で急速に成長や変化を続けている。その変化の範囲も上位レイヤーとも呼ばれるコンテンツ・プラットフォーム業界、ソリューションやデータセンター等のB2BビジネスをはじめとしたICTサービスレイヤー、移動体及び固定通信などを行う通信事業者、それらに通信機器を提供する通信機器ベンダー、スマートフォン端末や液晶テレビ等を製造する端末メーカーに至るまで、ICT産業全体の幅広い領域へ波及しているところである。 これらの変化は、これまで存在していたICT企業のビジネスモデルを激変させただけでなく、ICT産業以外の領域や国レベルの産業構造までも大きく変えつつあり、本項においては、これら変化がもたらした背景及び変遷等について分析する。なお、本節から3節までICT産業を以下の通りに分類して分析を行う 1 (図表2-2-1-1)。 「上位レイヤー」は、コンテンツ・アプリケーション事業者、プラットフォーム事業者によって行われているスマートフォンアプリ、検索、SNS、広告事業等のB2Cビジネスが主に含まれる。 「ICTサービス」はSIer 2 、NIer 3 等が行うICTシステム、ソフトウェア、クラウド、データセンター等のB2Bビジネスをおもに指し、この領域にはICTソリューションベンダーが行うインフラ等のライフライン(電力・水道・鉄道など)や防災、製造、金融、農業、小売等におけるシステム構築等も一部含まれる。 「通信」レイヤーは、通信事業者による移動通信や固定通信等のB2Cを中心としたビジネスであり、「通信機器」レイヤーについては通信事業者へ提供する基地局やIPルーター・スイッチ通信機器の製造を行う通信機器ベンダーが含まれる。 「端末」レイヤーは、携帯電話・スマートフォン、PC、テレビ、デジタルカメラ等の情報通信機器を製造している端末メーカー事業が含まれる。 図表2-2-1-1 ICT産業のレイヤーおよび事業者 4 (出典)総務省「ICT産業のグローバル戦略に係る成功要因及び今後の方向性に関する調査研究」(平成26年) 1 一部データの制約等によりグラフ等では統合される場合がある。また各図表における算出方法や原出典等は巻末付注2-2を参照されたい。 2 System Integratorシステムインテグレーター。顧客の業務内課題に応じた情報システムの構築や運用及び保守等をおもに請け負う事業者 3 Network Integratorネットワークインテグレーター。政府や企業などの通信ネットワークの構築や運用及び保守等をおもに請け負う事業者 4 図表における企業名は例示である(以下同)