(3)パーソナルデータの利用目的に係る利用者の意識 パーソナルデータの利用目的ごとに、利用者に自身に係るパーソナルデータの相手方への提供の可否について尋ねた。 ア パーソナルデータを提供しても良いと考える相手方 まず、想定される利用目的を公共目的・事業目的の2つに大別した上で、適切な同意がとられる前提で、どのような相手であれば自身に係るパーソナルデータを提供できるかを尋ねた(図表3-3-2-4)。 図表3-3-2-4 パーソナルデータを提供しても良いと考える相手方 (出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年) 公共目的での利用を想定した場合、提供しても良いと考える組織は、「国」が29.8%と最も高く、次いで、「地方公共団体」(24.2%)、「病院」(19.0%)の順となった。 他方、事業目的での利用を想定した場合、提供しても良いと考える組織は、「公共性のある大企業(ライフライン系)」が12.4%と最も高く、「公共性のある大企業(交通関係)」が11.8%と続く結果となった。また、「上記以外の一般企業(あなたが知らない)」になると、「どんな場合でも提供したくない」の回答が5割を超えるなど、知名度によっても差が生じる結果となっている。 公共目的と事業目的を比較すると、公共目的の方が許容度が高い結果となっており、また、公共性の高い組織であれば許容度は向上する傾向にあることがうかがえる。 イ パーソナルデータを提供しても良いと考えるケース(利用目的別) 続いて、適切な同意がとられる前提で、どのような目的であれば自身に係るパーソナルデータを提供できるかを尋ねた(図表3-3-2-5)。 図表3-3-2-5 パーソナルデータを提供しても良いと考えるケース(利用目的別) (出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年) 公共目的での利用を想定する場合、提供しても良いと考える利用目的は、「大規模災害などの緊急時の場合」が45.5%と最も高く、次いで、「防災に関わる内容」(33.6%)、「国民の健康・福祉に関わる場合」(26.4%)、「国家・国民の安全保障に関わる内容」(25.3%)と続いた。安心・安全を確保する目的での利用については許容度が高くなる傾向が示され、快適性・利便性を追求する目的での利用については許容度が低くなる傾向が示されている。 一方、事業目的での利用を想定する場合、「自分へのサービスが向上する場合」(14.0%)、「自分への経済的なメリットが受けられる場合」(13.8%)となっている。利用者自身が直接的なメリットを受けられる場合には許容度が高くなる傾向が示され、「製品の機能向上」や「新商品・サービス開発に活用」といった間接的なメリットの場合は許容度が低くなる傾向が示された。 ウ パーソナルデータを提供しても良いと考えるケース(加工手法別) パーソナルデータを取り扱う時の処理方法として仮名化や無名化といった匿名化処理の方法が考えられるが、サービス利用者は適切な同意がとられる前提で、サービス提供者がどのような加工処理を行うのであれば、データを提供しても良いと考えるか、その認識について尋ねた。 まず、パーソナルデータの加工手法として、以下A〜Dの4通りを想定した。 続いて、図表3-3-2-1で取り上げたパーソナルデータのうち、「氏名」及び「個人識別番号」を除く35種類のデータについて、上記A〜Dの加工手法を施した場合に、適切な同意がとられる前提であれば無条件で提供しても良いか、目的別(公共目的・事業目的)にプロットした結果が図表3-3-2-6である。なお、図表3-3-2-1において、パーソナルデータのそれぞれに関してプライバシー性の程度を尋ねていることから、「プライバシー性が極めて高い」、「プライバシー性が比較的高い」、「プライバシー性がないまたは比較的低い」の3つに分けた上で、プライバシー性の程度との相関性も含めて分析する。 図表3-3-2-6 パーソナルデータを提供しても良いと考えるケース(加工手法別) (出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年) データの加工を進めるほど利用者の許容度は上昇する傾向にあるが、その中でも加工手法BとCの間に大きな差異がみられることから、無名化処理を行った場合には利用者の許容度は格段に上がるものと推測される。また、データ別では、口座情報やクレジットカード情報は、他のパーソナルデータと比較して、仮名化や無名化、統計処理を行った場合でも利用者の許容度が低い点も特徴的である。 さらに、プライバシー性の程度との間では、「プライバシー性が極めて高い」と「プライバシー性が比較的高い」の間ではほとんど差が見られないが、「プライバシー性がないまたは小さい」データについては、許容度が高く出る結果となっている。 エ 個別事例におけるパーソナルデータ提供の許容度 最後に、パーソナルデータが実際に活用されている事例を想定した上で、それぞれの事例におけるパーソナルデータ提供の許容度について尋ねた。 提供しても良いとの回答を上位から順に見ると、「災害時に車の位置情報を統計情報として被災地支援に利用」(25.0%)、「車の位置情報を統計情報として渋滞削減に利用」(18.1%)、「防犯カメラの情報を警備・保安に利用」(13.6%)となるなど、利用目的の公共性が高いほど許容度が高くなる傾向にあることがうかがえる(図表3-3-2-7)。 図表3-3-2-7 個別事例におけるパーソナルデータ提供の許容度 (出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年) 以上の結果から、我が国利用者のパーソナルデータに係る意識をまとめると、データ別では自身に直接アクセスできるデータや財産に関わるデータについてはプライバシー性が高いと認識していることがわかった。 パーソナルデータの提供については、提供時に重視する事項として、適切な同意の取得、適切な情報の取扱いなど相手方におけるデータの取扱方法に強い関心を有しており、同意を求められた際は利用目的、第三者提供の有無、取得する項目といった内容を重視する傾向にある。 利用目的別では、事業目的よりも公共目的の方が、許容度が高く、かつ、安心・安全に関わる目的であれば許容度が高くなる傾向にある。提供先も公共性の高い組織ほど許容度が高くなる。 データの加工処理については、氏名やIDまで削除する無名化処理を行った場合、データ提供に係る利用者の許容度は格段に上昇する傾向にある。