(2) 政府情報システムの改革 ア 政府CIO法の成立及び新たな戦略の決定 電子行政に関して述べると、平成25年は政府のICTガバナンスを強化する年として、象徴的な年となった。まず、平成25年通常国会(第183回国会)において、「内閣法等の一部を改正する法律案」が成立したことにより、政府CIOの設置や権限等が法定化された。政府CIOは、ICTの活用による国民の利便性の向上や行政運営の改善に関する事務を所掌する「内閣情報通信政策監」として内閣法(昭和22年法律第5号)に位置づけられた。 また、これまで政府情報システムの改革について、運用コストの削減、政府情報システムの活用による業務処理時間の削減、行政手続のオンライン利用の促進等、様々な取組を進め、一定の成果を挙げてきたところであるが、平成25年3月28日のIT総合戦略本部において、「これまでに利活用の促進に向けた戦略を策定したが、未だ、国民・社会全般において十分な利活用が進んでいるとは言えない」とされ、新たなICTの戦略が必要とされていた。 これを踏まえ、「世界最先端IT国家創造宣言」(以下「創造宣言」という。)が平成25年6月14日に閣議決定され、また同日に「世界最先端IT国家創造宣言工程表」(以下「創造宣言工程表」という。)がIT総合戦略本部で決定された。 イ 政府情報システムの改革工程の可視化(政府情報システム改革ロードマップ) 創造宣言では、政府における情報システムの改革を推進するため、「2013年中に政府情報システム改革に関するロードマップを策定し、政府CIOの指導の下、重複する情報システムやネットワークの統廃合、必要性の乏しい情報システムの見直しを進めるとともに、政府共通プラットフォームへの移行を加速する」こととされ、「2018年度までに現在の情報システム数(2012年度:約1,500)を半数近くまで削減するほか、業務の見直しも踏まえた大規模な刷新が必要なシステム等特別な検討を要するものを除き、2021年度を目途に原則全ての政府情報システムをクラウド化し、拠点分散を図りつつ、災害や情報セキュリティに強い行政基盤を構築し、運用コストを圧縮する(3割減を目指す)」こととされた。 これに基づき、平成25年12月26日に「政府情報システム改革ロードマップ」(以下「ロードマップ」という。)が各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で決定された(図表4-2-1-5)。 図表4-2-1-5 政府情報システム改革ロードマップの概要 ロードマップでは、約1,500ある情報システムのうち平成25年度に現存する1,363のシステムについて、統廃合・クラウド化の時期等を明らかにし、個々のシステムについて改革工程表を作成して、改革スケジュールを可視化した。また、これらの情報により、情報システム数の推移の見込みが算出可能となった。 これによれば、2012年度(平成24年度)において分散して1,450存在した政府の情報システムは、統廃合により、2018年度(平成30年度)においては871まで減少(▲40%)する。さらに、このうち252の情報システムについては、統合基盤である政府共通プラットフォーム(図表4-2-1-6)に移行するため、これらを一つのシステムとみなせば、619(▲57%)まで情報システムの統合・集約化が図られる見込みであることが明らかになった(図表4-2-1-7)。 図表4-2-1-6 政府共通プラットフォームの概要 図表4-2-1-7 情報システム数の推移の見込み ウ 行政手続のオンライン化・オンライン利用促進 これまで述べたことは、行政機関での情報システムの集約等による効率化であるが、行政機関内における効率化に加え、国民・企業に対する負担軽減をもたらすツールとして、行政手続のオンライン利用がある。 各種法令に基づく国の行政手続については、年間4億件を超える件数の申請・届出等が行われており、オンライン利用の促進によって国民・企業等の負担軽減をもたらす。行政機関においても、効率的な事務処理を可能とし、正確で迅速な行政サービスを提供することに寄与する。 一方、現状のオンライン利用率(図表4-2-1-8)についてみると、近年は上昇傾向にあるものの、一部の分野においては低調な状況となっており、オンライン利用の普及・定着に当たって、引き続き改善の必要があるといえる。 図表4-2-1-8 分野別オンライン利用率の推移 こうした状況から、創造宣言及び創造宣言工程表では、オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針を策定することとされており、これを踏まえ、平成26年4月1日に「オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針」(以下「オンライン改善方針」という。)が各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で決定された(図表4-2-1-9)。 図表4-2-1-9 オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針の概要 オンライン改善方針では、一部の分野におけるオンライン利用率が低調となっている背景として、利用者の意見・要望が手続所管府省に届いていないこと、オンライン申請の情報システムがAPIを開発・仕様公開しておらず、民間事業者が開発するソフトウェアで連携できないこと等を挙げている。これらに対して、利用者の意見・要望を把握すること、改善取組計画を策定して利用者の満足度やオンライン利用率の目標等の評価指標を明記すること等により、単なるオンライン利用率の改善のみならず、オンライン手続の利便性向上を図ることとされており、今後のオンライン手続の利便性向上が期待される。 エ 行政手続内部の電子化の推進(電子決裁) ウでは、国民と行政とのインターフェースという観点からオンライン申請について述べたが、オンライン改善方針では、行政手続のオンライン利用の状況に差異が生じている理由の一つとして、行政側の事務処理が簡素・効率化されていないことが背景として挙げられている。したがって、行政機関における事務の電子化の推進は、単に行政機関内の効率化という点に留まらず重要なものである。さらに、電子化の推進によって、庁舎外からの就業を可能とする等、職員のワークスタイルの変革にも資するものである。 こうした観点から、創造宣言工程表においては、ペーパーレス化、ワークスタイル変革等のKPIの指標の一つとして電子決裁率が挙げられており、「2013年度〜2015年度を、電子決裁推進の集中取り組み期間とし、全府省において電子決裁の普及・利用促進の取り組みを推進する」こととされている。 一方、現状では、電子決裁の実施が低調な府省等も存在しているため、決裁に係る定めや決裁業務・決裁ルート等の見直し、低調な部局等による集中的な取組などを定めた「電子決裁推進のためのアクションプラン」が平成26年4月25日の各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で決定された(図表4-2-1-10)。 図表4-2-1-10 電子決裁推進のためのアクションプラン(概要) オ その他の取組 これまでに述べたことは、主として電子化の取組と電子化から直接に業務効率化に資する例を述べたものである。これ以外にも、業務・システムの最適化、オープンデータの推進に関する取組、ICT投資の状況等を国民が確認できる仕組みの構築など、電子行政の推進に向けた様々な取組が行われているところである。また、ICT化の取組を実践するために、総務省では、「世界で最先端のICT国家になる」というミッションを実現するための施策を、平成26年5月27日の経済財政諮問会議において「行政のICT化−世界最先端のICT国家の実現−」としてとりまとめている。その中では、強力な推進体制を作るための閣僚級の会議の提言などを行っている。今後、こうした会議による推進や政府CIOとの連携・協力により、関連施策を着実に推進し、国民本位の電子行政の実現を目指していくこととしている。