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第3部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

第2節 電気通信事業政策の展開

1 電気通信事業政策の展開

(1)世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けた取組

ア 世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けた取組

ICTは、我が国の経済・社会活動の重要な基盤としての役割を有しており、ICTの普及・発展に伴い、生産性の向上や新たな事業の創出等をもたらすあらゆる産業の基盤として、また、国民生活における不可欠な基盤として、その役割はますます増大している。このような状況の中、「日本再興戦略」(平成25年6月閣議決定)では、「世界最高水準のIT社会の実現」のための世界最高レベルの通信インフラの整備が掲げられており、その実現のために必要な制度見直し等の方向性について、平成26年中に結論を得るとされた。

これらを踏まえ、総務省は、「2020年代に向けた情報通信政策の在り方−世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて−」について、平成26年2月に情報通信審議会に諮問し、「2020-ICT基盤政策特別部会」が設置された。

情報通信審議会では、世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展による経済活性化・国民生活の向上の実現に向け、2020年代に向けたICTの役割やその動向を踏まえ、2020年代の我が国にふさわしいICT基盤の姿を明らかにした上で、ICT基盤を担う電気通信事業の在り方について個別具体的な検討が行われ、平成26年12月、総務省は、情報通信審議会から答申を受けた(図表8-2-1-1)。

図表8-2-1-1 情報通信審議会答申「2020年代に向けた情報通信政策の在り方」 概要

この情報通信審議会答申等を踏まえ、総務省は、2020年代に向けて、我が国の世界最高水準のICT基盤を更に普及・発展させ、経済活性化・国民生活の向上を実現するため、平成27年4月、電気通信事業法等の一部を改正する法律案を国会に提出し、同年5月に成立した。(第1章第1節「政策フォーカス:電気通信事業法等の一部を改正する法律」参照)

また、総務省では、高速のブロードバンド環境の整備・確保を図るため、民間事業者による整備が見込まれない離島・過疎等の条件不利地域において、市町村等が基盤整備を実施する際、事業費の一部を支援している。

イ モバイルサービスの推進

現在、スマートフォンなど携帯電話は国民生活に必要不可欠なサービスとなるまでに普及しているが、今後、スマートフォンのみならず、ウェアラブル端末、M2M、IoTなど、モバイルは経済社会活動全体に広く浸透していくものと考えられる。

このような状況を踏まえ、利用者が、「もっと自由に、もっと身近で、もっと速く、もっと便利に」モバイルを利用できる環境を整備するため、総務省は、平成26年10月に「モバイル創生プラン」を取りまとめ公表した。同プランのアクションプランにおいて、(1) 自由に選べるモバイルの推進(SIMロックの解除等)、(2) 安くて安心して使えるモバイルの推進(MVNOの普及促進、青少年等が安心して利用可能な環境整備)、(3) モバイルの更なる高速化(4G割当て)、(4) 新たなモバイルサービスの創出(事業者に対する規制の見直し)を掲げ、モバイル分野の活性化に取り組んでいる。

特に、同プランを踏まえ、スマートフォン等に設定されているSIMロックの解除について、総務省は、平成26年12月に「SIMロック解除に関するガイドライン」を改正し、本年5月以降新たに販売される端末については、事業者は原則無料でSIMロック解除に応じることとしている。これにより、端末を買い換えずにMVNOを含め他の通信事業者の通信サービスに乗り換えることが可能となり、サービス本意の競争を通じて、料金の低廉化や多様化につながると考えられる。また、海外渡航時、現地の携帯電話事業者のSIMを使用しようとする際、SIMロックがかかっているため、現地の携帯電話事業者のSIMカードを差しても通信できないといった問題の解消につながることも期待される。

また、2019年ラグビーワールドカップの日本開催、2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催に向けて、世界各国との人的交流が活発になり、我が国と海外を往来する旅行者等の数は年々増加する傾向にある。渡航先での滞在期間が短い旅行者等にとっては、渡航先で自国で使用しているモバイル端末を電話番号等を変えずにそのまま利用できる「国際ローミングサービス」に対するニーズは高く、人的交流を一層促進するためには国際ローミング料金の低廉化が重要である。

このため、オーストラリア、シンガポール、タイ及びマレーシア政府との間で、国際ローミングの事業者間精算料金を引き下げるための原則及び方策について協議を行っている。また、APEC等の多国間協議においてもこうした原則及び方策について合意形成すべく協力することについて合意したところである。

ウ 光回線の利用向上

総務省は、前述の情報通信審議会答申を踏まえ、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社のFTTHアクセスサービス等の卸電気通信役務の提供に関して、卸提供事業者、卸先事業者及び卸先契約代理業者の行う行為について、現行の電気通信事業法の適用関係を明確化することを目的に、電気通信事業法の業務改善命令等の対象となり得る行為を整理・類型化する「NTT東西のFTTHアクセスサービス等の卸電気通信役務に係る電気通信事業法の適用に関するガイドライン」を平成27年2月に策定した。

エ 電気通信事業分野における競争状況の評価

総務省では、複雑化する電気通信事業分野における競争状況を正確に把握し、政策に反映していくため、平成15年度から毎年度、「電気通信事業分野における競争状況の評価1」(以下「競争評価」という。)を実施している。平成26年10月に公表した「競争評価2013」においては、戦略的評価については、競争政策の展開との機動的な連携を図る観点から、①企業グループにおける連携サービスの競争環境への影響に関する分析、②地域ブロックにおける超高速ブロードバンドサービスの競争状況の分析、③固定ブロードバンド・モバイルインターネットの上流サービスの利用分析(競争評価2011からの継続)の3つのテーマを取り上げ、分析を行った。

また、定点的評価について、「競争評価2012」の市場画定の枠組みを原則として維持し、「移動系データ通信市場」、「移動系音声通信市場」、「固定系データ通信市場」、「固定系音声通信市場」、「法人向けネットワークサービス」の5つの領域について個々のサービス市場を画定して分析・評価を行った。

「競争評価2013」の評価結果の概要(抜粋)

[移動系データ通信市場]

・移動系データ通信市場における市場支配力に関しては、首位のNTTドコモの契約数シェアは高く、同社が単独で市場支配力を行使し得る地位にあると考えられる。ただし、NTTドコモは引き続きシェアを低下させており、その結果として2位・3位の事業者とのシェアの差は縮小傾向にあり、同社の市場支配力を行使し得る地位は低下している。

・2013年度末時点における3グループの移動系データ通信市場におけるシェアは100%であり、また市場集中度(HHI)が3,461と高い水準にあることから、複数事業者が協調して市場支配力を行使し得る地位にあると考えられる。

・市場競争をめぐる上位MNO3社の関係や、第二種指定電気通信設備に係る規制措置等に鑑みれば、NTTドコモが単独で、又は複数事業者が協調して市場支配力を実際に行使する可能性は低い。

「競争評価2014」においては、平成26年12月に「電気通信事業分野における競争状況の評価に関する実施細目2014」を決定・公表し、戦略的評価については、競争政策の展開との機動的な連携を図る観点から、①固定系超高速ブロードバンドに関する事業者間連携サービスの競争環境への影響に関する分析、②移動系通信に関する新たな料金施策の競争環境への影響に関する分析の2つのテーマを取り上げることとしている。また、定点的評価におけるサービス市場の画定について、「データ通信」、「音声通信」、「法人向けネットワーク」の3領域と、「競争評価2013」で市場として設定した「移動系データ通信市場」、「移動系音声市場」等の9つの市場画定を維持しつつ、需要の代替性等を踏まえ、固定系ブロードバンド市場の部分市場として新たに固定系超高速ブロードバンド市場を位置づけることとした。

なお、競争評価については、前述の情報通信審議会答申において、「市場支配力の有無等を中心に分析・評価してきた競争評価と非対称規制を中心に運用してきた公正競争レビュー制度を更に充実・発展させ、競争政策のみならず、料金政策等も含め市場動向を分析・検証する新たなツールとして位置付けることが適当」とされており、この方針を踏まえ、今後は新たな市場分析・検証の仕組みを設けた上で、その結果を法令・ガイドライン等に反映させることとしている。

オ 無料公衆無線LAN環境の整備促進

スマートフォンやタブレット等の無線LANを搭載した携帯端末の普及を背景として、無線LANを利用する機会が増えてきており、無線LANは、家庭、オフィス及び公衆スポットにおける快適なワイヤレスブロードバンド環境の実現のために必要不可欠な存在となっている。

総務省では、平成24年3月から「無線LANビジネス研究会2」において、無線LANに関する現状を整理するとともに、その安心安全な利用や普及に関する課題の抽出・整理を行い、平成24年7月に報告書を取りまとめた。

同報告書における提言を踏まえ、無線LANを巡る諸課題について、事業者間等での意見・情報交換を通じて連携・協調する場として、平成25年1月に「無線LANビジネス推進連絡会3」が発足し、平成25年9月には同連絡会において、岩手県釜石市で大規模震災を想定した公衆無線LANの無料開放にかかる実証実験を行った。本実証実験の成果は平成26年5月に「大規模災害発生時における公衆無線LANの無料開放に関するガイドライン」として取りまとめられ、平成27年2月に公表された同ガイドラインの第2版では、平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害の経験を踏まえ、災害用統一SSIDの開放契機に自治体からの要請を追加したほか、災害初動期の周知方法を具体化するなど、より実践に即した内容に改訂された。また、多種多様なサービスが存在し、今後更なる事業者の参入が想定される公衆無線LANサービスについて、総務省は、サービスの事業運営に際し留意すべき事項等を定めた「無線LANビジネスガイドライン」を策定し、平成25年6月に公表した。

さらに、総務省では、先述(第3章第2節「政策フォーカス:ふるさとテレワークの推進」参照)の「地方のポテンシャルを引き出すテレワークやWi-Fi等の活用に関する研究会」において、公衆無線LAN(Wi-Fi)環境整備に取り組む自治体への支援のあり方等について検討を行い、平成27年5月に、報告書を公表した(図表8-2-1-2)。

図表8-2-1-2 「地方のポテンシャルを引き出すテレワークやWi-Fi等の活用に関する研究会」報告書の概要(Wi-Fi部分)

また、総務省では、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)4自治体Wi-Fi普及促進WGと連携し、自治体におけるWi-Fiの導入や運用、利活用を促進することを目的に、それらの具体的な検討事項や手順等をまとめた「自治体業務におけるWi-Fi利活用ガイドブック」を作成した。

あわせて、総務省では、自治体及び第三セクターを対象に「観光・防災Wi-Fiステーション整備事業」を平成26年度補正予算及び平成27年当初予算で実施しており、観光や防災等の観点から、地域活性化に寄与する公衆無線LAN環境の整備を促進している。

今後、総務省では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を見据えて、観光立国の推進に資するために、外国人旅行者にとって特に要望の高い無料公衆無線LAN環境について、整備の促進や利便性の向上等に取り組んでいくこととしている。

総務省は平成26年6月、訪日外国人が我が国の世界最高水準のICTを「サクサク」利用できるよう、選べて(Selectable)、使いやすく(Accessible)、高品質な(Quality)、ICT利用環境を実現することを目指し、無料Wi-Fiの整備促進と利用円滑化を含むアクションプランとして、「SAQ2(サクサク)JAPAN Project 」を取りまとめた。

また、同年8月には、訪日外国人旅行者向けの無料公衆無線LANの整備促進に取り組むため、総務省は、観光庁と連携して「無料公衆無線LAN整備促進協議会」を設置した。同協議会は、公共交通、宿泊・商業施設、通信事業者、自治体等関連する幅広い分野の団体・企業から構成されており、無料公衆無線LAN環境の更なる整備促進、利用できる場所の周知・広報、利用手続きの簡素化等を検討している。



1 電気通信事業分野における競争状況の評価:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyousouhyouka/別ウィンドウで開きます

2 無線LANビジネス研究会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/lan/index.html別ウィンドウで開きます

3 無線LANビジネス推進連絡会:http://www.wlan-business.org/別ウィンドウで開きます

4 一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC):http://www.applic.or.jp/別ウィンドウで開きます

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