(3)行政機関 ア 行政手続の電子化 インターネットの普及に伴い、国や地方への各種申請手続等の電子化も進められてきた。国の行政手続のオンライン化については、近年は2008年の「オンライン利用拡大行動計画 13 」に基づいて進められている。同計画で重点手続分野 14 に指定された6分野のオンライン利用率推移をみると、2008年から2013年までの間にいずれの分野のオンライン利用率も上昇しており、輸出入・港湾と産業財産権出願関連のオンライン利用率は100%近くに達している。近年は、自動車登録でのオンライン利用率の向上が著しく、2008年度から2013年度までに60ポイント近く向上している(図表2-1-3-8)。 地方公共団体の行政手続については、2006年の「電子自治体オンライン利用促進指針」に定められた21手続 15 のオンライン化が進められた。その結果、21手続平均でのオンライン利用率は、2005年度には11.3%であったのが、2013年度には45.2%にまで上昇した(図表2-1-3-9)。21の手続の中で年間総手続件数(推計)が特に多い3手続の利用率推移をみると、2011年度から2013年度まで「図書館の図書貸出予約等」は52.3%から59.4%、「文化・スポーツ施設等の利用予約等」は52.6%から54.7%、「eLTAX」は23.8%から38.5%へとそれぞれ伸びている。(図表2-1-3-10)。 イ 災害時のICT利活用 1995年の阪神・淡路大震災では、普及の初期にあった携帯電話とインターネットが、被災地での救援活動や復旧活動、被災状況や安否情報の発信等に貢献した。携帯電話については、震災の被害を受けた基地局もあったものの、電波の届く範囲内に別の基地局がある場合が多く、震災後の初期数日は固定電話よりも通じやすい状態にあり、災害時の有効な連絡手段として利用された 16 。インターネットについては、甚大な被災状況を迅速に世界に知らせることに活用されており、神戸市によって神戸市外国語大学のホームぺージに被害写真が掲載される等の取組が見られた。 2004年の新潟県中越地震では、阪神・淡路大震災の時よりもインターネットの普及が進んでいたため、インターネットを活用して被災地に関するより多くの情報が発信されるようになっており、被害の大きかった山古志村の災害対策本部からの救援物資や義援金受入れに関する情報、ボランティアセンターの情報等を、ブログに掲載して全国から閲覧可能にする等の取組が見られた 17 。 2011年3月11日の東日本大震災を経て、改めて災害時における携帯電話とインターネットの役割が注目されるようになった。東日本大震災では、津波による通信インフラの被災や長時間における停電等により電話(音声通話)に一部支障が生じた一方、携帯電話のパケット通信やインターネット回線は、通信規制が少なかったため、これらを用いたSNSの情報が災害救助に貢献する事案が見られた 18 。 東日本大震災以後、携帯電話とSNSの組合せが注目されるようになり、現在ではSNSを用いて情報発信する自治体は多く、その数は市区町村では672、都道府県では31に達している(図表2-1-3-11)。 13 2008年9月12日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定 14 オンライン利用拡大行動計画では、国民が広く利用するオンライン化された手続のうち、国民や企業による利用頻度が高い年間申請等件数が100万件以上のもの及び100万件未満であっても主として企業等が反復的又は継続的に利用する手続等を「重点手続」と分類し、オンライン利用率の大幅な向上を図るため、重点的に取り組むこととされた。オンライン利用拡大行動計画には、71の重点手続が指定されており、これらは@登記A国税B社会保険・労働保険C輸出入・港湾D産業財産権出願関連E自動車登録と分類され、この6分野以外のものをFその他として同計画では整理している。 15 21手続の具体的内容は次のとおり:【主に住民向け手続】(@図書館の図書貸出予約等、A図書館の図書貸出予約等、B粗大ごみ収集の申込、C水道使用開始届等、D研修・講習・各種イベント等の申込、E浄化槽使用開始報告等、F自動車税住所変更届、G職員採用試験申込、H犬の登録申請、死亡届、⑩公文書開示請求)。  【主に事業者向け手続】(⑪地方税申告手続(eLTAX)、⑫入札参加資格審査申請等、⑬道路占用許可申請等、⑭入札、⑮産業廃棄物の処理、運搬の実績報告、⑯感染症調査報告、⑰港湾関係手続、⑱食品営業関係の届出、⑲特定化学物質取扱量届出、⑳後援名義の申請、㉑暴力団員による不当な行為の防止等に関する責任者の選任届 16 固定電話は震災発生後に一時使用不能になっていたが、これについては、各家庭と電話局を結ぶ電話線に大きな被害が生じたこと、停電で交換機が稼働できなくなったことに加え、安否確認・緊急通信・受話器はずれ等のために通話量が急増して電話回線は輻輳したことが理由として大きい。内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」(2006年) 17 たとえば、ながおか生活情報交流ねっとが運営する『山古志緊急BLOG』は災害発生後三日目には開設されている。http://www.soiga.com/adg/ 18 総務省消防庁「大規模災害時におけるソーシャル・ネットワーキング・サービスによる緊急通報の活用可能性に関する検討会報告書」(2013年)