(1)我が国におけるビッグデータ流通量の推計 ここでは、昨年までの調査を踏まえつつ、我が国におけるビッグデータ流通量の推計を行う。 ア 対象主体 ビッグデータを活用することにより社会・経済的価値を創出する主要な経済主体は企業であると考えられることから、昨年までの調査と同様、企業が電子的に受信するデータについて計測を行った。また、推計対象産業も、昨年までと同様に、産業連関表にある13部門分類から農林水産業、鉱業、公務及び分類不明を除いた9部門とした(図表5-4-3-1)。 図表5-4-3-1 データ流通量等計測の対象主体(出典)総務省「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実態に関する調査研究」(平成27年) イ 計量対象データ 計量対象とするデータは、下図にある21種のデータである 11 。21種のデータは、データ量の違いに着目したテキスト、音声、画像、動画という軸と、データの特性に着目した業務データ、販売記録、顧客等とのコミュニケーション、自動取得という軸で分類し(図表5-4-3-2)、推計モデルを用いて個別産業ごとの合計データ流通量を推計、それらを積み上げることでマクロ全体のデータ流通量を計測した 12 。 ウ 推計の結果 推計を行ったところ、2014年のデータ流通量は、9産業(サービス業、情報通信業、運輸業、不動産業、金融・保険業、商業、電気・ガス・水道業、建設業、製造業)の合計で、約14.5エクサバイトとなる見込みとの結果になった 13 。 データ流通量の経年推移をみると、2005年の約1.6エクサバイトから2014年には約14.5エクサバイト(見込み)となり、2005年から2014年の9年間で、データ流通量は約9.3倍(同期間の年平均伸び率は28.2%)に拡大している(図表5-4-3-3)。 データ流通量のメディア別推移をみると、2014年時点の水準で、防犯・遠隔監視カメラデータが約8.5エクサバイトともっとも大きく、次いで、センサーデータ(約3.5エクサバイト)、POSデータ(約1.1エクサバイト)が大きく、1エクサバイトを超えている。また、各メディアの伸びの程度をみるために、2005年時点の各メディアの流通量が100になるように基準化した上で指数化し、データ流通量の経年推移をメディア別にみると、動画・映像視聴ログ、センサーデータ、画像診断データ、防犯・遠隔監視カメラデータ、気象データの伸びが大きく、2014年で2005年の10倍以上となっている(図表5-4-3-4)。こうしてみると、ビッグデータが注目される以前から既に長期間にわたって活用されてきたPOSデータは依然としてデータ流通量が大きいものの2005年以降はあまり伸びていないことが分かる。逆に、画像診断データは高齢化による患者の増加や技術の発展等の影響、気象データはPOSデータとの組合せによる需要予測での活用増加等の影響によって近年データ流通量が大きく伸びているとみられるが、2014年時点でも総量は未だに比較的小さい水準にあることが分かる。このように、データ流通量からは古いメディアの成熟や新しいメディアの成長を読み取ることができる。また、防犯・遠隔監視カメラデータとセンサーデータはデータ流通量が大きくかつ伸びも大きいため影響力が大きいメディアだということが言える。 防犯・遠隔監視カメラは、2015年に国内市場規模が400億円を突破し、その後も拡大するとの予測があり、防犯・遠隔監視カメラの市場拡大と共にデータ流通量が増大していることがうかがえる 14 。市場拡大の背景には金融店舗や小売店舗での360度全方位カメラの採用増加やカメラメーカーが映像・画像ソリューション提案に注力していることがある。映像・画像ソリューションには小売店舗での客数カウンター起用、陳列棚の確認、防災遠隔管理システムとの連動等があり、こうしたソリューションの採用が拡大すれば、増大するデータが新たな価値を生み出すことが期待できる。 なお、防犯・遠隔監視カメラデータは動画データという特性のためバイト単位で計ったデータ量が大きくなっているという点は、他のデータと比較する際に注意が必要である。 センサーデータは、様々な種類のセンサーが多様な目的で使用されるようになるにつれて、データ量も拡大している。1つ1つのセンサーから得られるデータ量は小さいが、センサーの数とセンサーからの通信頻度が大きくなることで、データ流通量が拡大していると考えられる。 さらに、データ流通量の産業間比較を行うために、2005年時点の各産業のデータ流通量が100になるように基準化した上で指数化し、その経年推移をみたものが図表5-4-3-5である。これをみると、すべての産業においてデータ流通量が伸びていることがみてとれるが、特に運輸業や不動産業、建設業での伸びが大きい。これらの産業は防犯・遠隔監視カメラの利用が多く、防犯・遠隔監視カメラデータが流通量の伸びを牽引している。一方、商業はデータ流通量の伸びが最も小さいが、これはPOSデータが大きいためであり、データ流通量が伸びていないというよりは他産業に先駆けてデータ利用を進めた結果が表れていると解釈するのが適切と考えられる。 11 昨年までの調査からの継続性を重視しつつ、一部で統一のとれていなかったデータの名称を変更し、分類の見直しも合わせて行った。 12 データ流通量の推計についての詳細は巻末の付注7-3を参照。 13 昨年の白書に掲載した推計結果は、2013年時点の見込値で約13.5エクサバイトという結果であったが、今回、2014年の確定値を推計したところ約10.8エクサバイトに修正された。 14 富士経済「FK通信」第141号(2014年2月25日)http://www.group.fuji-keizai.co.jp/mgz/mg1402/1402m2.html