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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第3節 オンラインプラットフォームとデータ利活用

第1章まとめ

本章の第1節では、スマートフォン社会の到来について、その普及状況や利用状況という側面から取り上げた。スマートフォンの世帯保有率はPCに肉薄して72%に達し、モバイルネット利用時間が2012年比で5割増加したことは、スマホが国民全般の社会生活に浸透していることの典型例だ。特に、2000年以降に成人したミレニアル世代(そのうちの特に20歳代)は、モバイル利用がPC利用の4倍超で、SNS・動画の利用時間となると他世代の2倍超に至っており、一段とスマホのヘビーユーザーであることが分かった。

第2節では、スマートフォン経済の拡大をもたらす新サービス群に焦点を当てた。日米英の3か国比較調査を行ったところ、従来からのサービスの代表例であるネットショッピングでは三者で同様の傾向が見られる一方、フィンテックやシェアリング等の新サービスでは日本の利用意向が低いことが分かった。また、スマホを介した消費促進効果については、旅行・宿泊やファッション、外食といった分野で消費金額が大きいという分析結果を紹介した。

第3節では、オンラインプラットフォームの寡占度が上昇する一方、アプリ事業者によるサービスの多様化が進行し、その結果として、イノベーションが促進され、消費者の利益・便益が増進される可能性があることを紹介した。最後に、IoT時代を先取りしたMWC2017におけるポスト・スマートフォンの動きとして、音声データに対応したAI機器や画像データに対応したAR/VR機器のほか、新たな通信技術としてLPWAと5Gを利用したサービスの広がりの可能性について言及した。それら新機器・新技術で通底しているのは、データが新たな価値として認識されていることと考えられる。

コラムSOHMO 1 子供のICT利用に向き合う〜低年齢化が進むICT利用と求められる対策

インターネットやスマートフォンの普及が進む中、子供たちの間でもICTの利用が広がっている。2016年通信利用動向調査によると、13歳〜19歳のスマホ保有率は81.4%、6歳〜12歳でも33.8%に達している。ICT利用の広まりは子供たちの暮らしや学びに大きな変化をもたらす一方、スマホ依存やネットいじめなどのトラブルに巻き込まれるリスクを高めている。子供たちにとり、ICT利用が安全で実りあるものになるよう、様々な取組が行われている。

熱血校長が実践するプログラミング教育

2020年度から小学校においてプログラミング教育が必修化される。東京都の小金井市立前原小学校では、このプログラミング教育をいち早く実践している。その旗振り役が松田孝校長だ。松田校長は、自らプログラミング教育の開発と実践を進めるだけでなく、公開授業を通じて、ノウハウや考え方を教育関係者に伝えようとしている。

〈児童と一緒にプログラミングに取組む高市総務大臣〉

松田校長の進めるプログラミング教育とは、どのようなものなのだろうか。前原小学校の校長室には、一見するとクルマのおもちゃにしか思えないプログラミング教育用の教材が置かれている。教育用ブロックでできたこのクルマは、「車輪2回転分前に進む」、「次に車輪1回転分バックする」といった一連の動きをタブレットの専用アプリでつなぎ合わせ、その指示のとおり動かすことができる。子供たちはタブレットから操作指令をクルマに送って動かし、この体験から「プログラミング」という概念を学んでいく。

〈お菓子を使ってプログラミングを学ぶアプリの教材研究に参加する高市総務大臣〉

しかし、松田校長によれば、もっと大きな狙いがあるという。

「例えば、前に5回転進んで、次に後ろに8回転戻る、というプログラムを作って動かします。すると、クルマはスタート地点から3回転分、後ろに下がっています。これはマイナス3ということですよね。マイナスの数字は中学校で習う概念ですが、こうすると、小学生でもごく自然に理解してしまうのです。」

これはプログラミング教育が算数・数学の学びにつながる例だが、他にも英語、図工、理科など、様々な教科で従来とは異なる効果的な学びの形を作ることができるという。

もう一つ、プログラミング教育を進めることで大きく変化するのが、教室の中での先生の役割だ。前原小学校のプログラミング教育は、「先生が子供に教える」という形をとっていない。先生は授業の最初に「お題」を出すが、後は子供たちが自分でプログラムを作って考え、主体的に学んでいく。先生は子供の興味をかき立て、学びの手助けをするファシリテータに徹する。

「プログラミング教育に取り組んで分かったのは、情報端末は先生が『教える』ためのツールではない、ということです。本当に活用するためには、子供が自ら『学ぶ』ためのツールにならなければならない。そこに気づくと、先生の役割意識も変わるのです。」

このように、プログラミング教育は学校教育の形を大きく変えていく可能性を秘めている。では、プログラミング教育は日本の学校現場にどういう変革をもたらすのだろうか。

「学校は本来、子供たちが生きていく時代に必要な技術を学ぶ最先端の場ではないかと思うのです。今10歳の子供が30歳になる頃、世の中はIoTでつながれAI化が進んでいることでしょう。今の子供たちは、IoTの感覚や仕組みに対する興味を育んでいくことが絶対に必要です。その役割をプログラミング教育が担うべきことだと思います。」

プログラミング教育は、子供たちが生きる「未来」を見据えた教育の創造につながっている。しかし、多くの学校はICT環境が十分でなく、プログラミング教育推進の前提条件が整っていない。関係府省庁が連携して必要な環境を整備し、その創造と普及を加速することが求められる。

広がりを見せる学校向け安心・安全啓発活動「e-ネットキャラバン」

子供たちのスマホ利用が広がるにつれ、子供たちが「ネットいじめ」や「ネット詐欺」などのトラブルに直面するケースも増えている。そんな中、子供たちに敢えてインターネットやスマートフォンの「影」の部分を伝え、安全な利用を啓発する出前講座の取組が10年以上にわたって行われている。一般財団法人マルチメディア振興センター(FMMC)が情報通信分野の企業・団体の協力を得て実施している「e-ネットキャラバン」だ。

〈e-ネットキャラバン実施件数の推移〉
(出典)一般財団法人マルチメディア振興センター提供資料

2006年度から始まったe-ネットキャラバンは年々その活動規模を拡大し、2016年度は全国の学校で1,755回の出前講座を行った。受講対象は小学校3年生から高校3年生までの児童・生徒とその保護者、学校の教職員等で、2016年度1年間の受講者数は32万人にのぼる。

このe-ネットキャラバンのトップ講師の一人が、宇津木麻也子さんだ。数多くの出前講座を通じて、宇津木さんは何を子供たちに伝えようとしているのだろうか。

〈e-ネットキャラバン講座の様子〉

「子供たちがICTを利用するに当たり、良い面だけでなく影の部分があることを具体的に説明して、理解を促し、その先がどうなるのか想像してもらえるよう努めています。私がいつも子供たちに言っているのは、なんでもかんでもすぐにクリックしたり書き込んだりせず、一度立ち止まってよく考えてからスマホを使うように。ということです。何も考えずに書き込んだり、写真や動画を気軽に載せてしまうと、ネットの中にその情報がデジタルタトゥー1となって残ってしまい、その子の後々の人生に影響してしまうからです。」

毎年、多くの関係者と接している宇津木さんは、子供たちのICT利用の安心・安全を守るために、周囲の大人たちの理解が追い付かない現状を危惧している。

「スマホの登場によって、子供たちの生活が一変しました。大半の学校の先生方は危機意識をお持ちですが、最近のスマホ事情や、子供達の間で最近流行っているアプリやゲームには精通しておられない事が多いです。一方、保護者はこの問題への関心が薄い方も多く、講座を実施してもなかなか集まらない。子供たちよりも、むしろ保護者にリスクを伝える機会がなかなかないのが現状です。」

宇津木さんのお話からは、子供たちに一番身近な大人たちの知識や意識が十分でない、という現実が伝わってくる。では、子供たちの安心・安全のためには、誰が、何をすればよいのだろうか。

「まず保護者の方は、子供にスマートフォンを買い与える際には、子供たちのスマホ利用の現状とリスクを十分に把握し、フィルタリング等の設定をしてから、ルールを作って子供に渡すようにしていただきたいです。」さらに、保護者と学校にとどまらない地域と連携した幅広いセーフティネットづくりが求められると宇津木さんは言う。

「何かあれば苦情を言われる立場の携帯電話ショップ店員さんたちは、ネットのトラブルに関して豊富な知識をお持ちです。ですから、トラブルに遭遇する前の相談先として、また万が一トラブルに見舞われた際の子供たちの駆け込み寺として、近所の携帯ショップが相談を受けてくれたら理想的です。また、消費者センターにもネットトラブルの相談が多くあり、子供たちからのネットに関する相談も数多く寄せられているとの事。どこで相談を受けてくれるのかがもっと明確になり、e-ネットキャラバンと連携できるとよいなと思います。」

携帯電話ショップ側も、色々と活動を進めている。スマートフォンを販売するショップの業界団体である一般社団法人全国携帯電話販売代理店協会が進めているのが「あんしんショップ認定制度」である。同制度は「消費者保護と関係法令遵守」というスローガンのもと、「携帯電話の犯罪利用等、不正利用防止に努めること」、「フィルタリングの徹底等、青少年の健全なインターネット利用環境整備に寄与すること」等の認定基準を設け、認定基準を満たす取組の推進を宣誓し審査に合格したショップをあんしんショップとして認定し、認定マークを交付している。また、e-ネットキャラバンの講師として、多くのあんしんショップ認定店のスタッフが参加している。あんしんショップ認定制度は、こうした活動を業界として後押しする役割も果たしている。

〈あんしんショップ認定マーク〉
(出典)一般社団法人全国携帯電話販売代理店協会提供資料

子供たちが安心・安全に暮らせるICT社会の実現は喫緊の課題である。e-ネットキャラバンで培われた全国の学校とのリレーションを核として官民の幅広い関係者が連携し、子供のICT利用に関する有効なセーフティネット形成を進めていくことが期待される。



1 インターネット上では、データやログがいったん記録されたら永続的に残り続け消すことはできないことを、入れ墨(タトゥー)にたとえた言葉。



※「コラムSOHMO(草莽)」では、情報リテラシー向上やICT利活用推進に取り組んでいる民間団体の活動を紹介しています。

コラムSOHMO 2 しっかり考えようスマホとの付き合い方〜高校生が社会に出る前に

中学・高校生にとって今やなくてはならない生活ツールとなっているスマートフォン。一方でスマホを使うと、ネット詐欺やスマホいじめなど様々なリスクと向き合うことにもなる。内閣府の調査結果によると、保護者はフィルタリング使用(45%)や子供のネット利用状況把握(34%)、目の届く範囲でスマホ利用の許可(28%)といった対策を取っているようだが、まだまだ不十分だ。そこで、次世代の社会を担う若者たちがスマホを安全に使っていく方法を自ら考え、実践する取組が進められている。

〈スマートフォンにおける保護者の取組の経年比較(2014年度〜2016年度)〉
(出典)内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」により作成
http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/net-jittai_list.html別ウィンドウで開きます

高校生の白熱熟考イベント「高校生ICTカンファレンス」

高校生ICTカンファレンスは、スマホやネットとのつきあい方を高校生が集まって議論する、ワークショップ形式のイベントである。2011年にスタートしたこのイベントは年々規模が拡大し、2016年は全国107校、476名の高校生が参加した。

主催するのは、安心ネットづくり促進協議会、一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構、一般財団法人草の根サイバーセキュリティ運動全国連絡会及び大阪私学教育情報化研究会で構成される高校生ICT Conference実行委員会。同委員会に対し、総務省をはじめとする国、民間団体、協賛企業等が後援を行っている。

2016年度の検討テーマは「ネットトラブル!どうする?【予防】と【対策】」。8月から10月までに全国14か所で地域別のワークショップが開催され、11月には「サミット」と呼ばれる全国大会に各地域代表の高校生が集まった。

〈サミットで熱い議論をかわす高校生たち〉
〈総務省金子政務官へのサミット報告を終えた鈴木さんと栗田さん〉

地域ワークショップもサミットも、進め方の特徴は徹底して高校生自らが議論するところにある。参加した高校生たちは6~8名のグループに分かれて討論し、疑問、課題、意見などを書き出し、さらにその場でパソコンのソフトを使いながらグループとしての考えをまとめていく。この作業を通じ、高校生自身が様々な気づきを得ることを重視している。約2時間にわたる白熱したディスカッションの結果、高校生たちは次のような提言をまとめた。

提言① 大学生など身近な世代によるネットマナー、ルール、トラブル予防についての「出前授業」の実施

提言② ネットいじめが原因で発生する問題や損害に対する「いじめ保険」の導入

提言③ 高校生が相談しやすく、問題解決できる環境づくり

2016年12月、大阪府立東百舌鳥高等学校の栗田瑞穂さんと東北学院中学・高等学校の鈴木崇弘さんの2名の高校生が代表として総務省ほか関係府省庁を訪れて成果の報告を行った。総務省では、金子めぐみ政務官から提言の理由についての質問を受けた。両代表は、「世代の近い人に、親や先生に相談できないことを相談したい」、「大人から話を聞く形では、興味のない人は学ばない」、「先輩から話を聞いて、自分で考えるきっかけを作ることが大事」と矢継ぎ早に答えていた。

このやりとりから、保護者や教員とは別の目線で、若者が若者を教えることの意義が垣間見える。

大学生による出前授業「スマートフォンセキュリティ・ワークショップ」

サミット提言①の大学生など身近な世代による出前授業を実践している団体の一つにRe:inc(リンク)がある。

Re:incは、2014年にサイバー防犯ボランティア活動をしていた慶應義塾大学の学生を中心に創設されたインターカレッジ団体。一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会からの支援を受けて、「スマートフォンセキュリティ・ワークショップ」を首都圏の中学校や高校を中心に展開している。こうした活動を開始した動機として、団体代表の窪田大悟さんは情報リテラシーやネットモラルを学ぶ機会の少なさを挙げている。

〈スマートフォンセキュリティ・ワークショップの様子〉
(出典)Re:inc提供資料

さらに「啓発活動で一番効果があるのは、ジェネレーションギャップのない世代からの助言」で、「ワークショップを受けた高校生の中には、意識が高まって、今度は自分が教える側に回りたい」と考える人もおり、こうした「近いジェネレーションでのリレーが、我々が本当に実現したいことだ」と窪田さんは述べている。

Re:incの取組も、高校生たちが提言した「近い世代間での教え合い」が効果的であることを示している。当事者の状況をよく理解できる少し先輩に当たる世代が上手にリードして世代間のプラスの連鎖を広げることができれば、ネット社会の安心・安全を高める一助になるだろう。



※「コラムSOHMO(草莽)」では、情報リテラシー向上やICT利活用推進に取り組んでいる民間団体の活動を紹介しています。

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