総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > 第4次産業革命に対する期待
第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 第4次産業革命に向けた取組及び課題

(1)第4次産業革命に対する期待

第4次産業革命では様々な社会的な変革や産業構造の変化がもたらされると言及されており、そのような社会・産業の姿に対する期待感について、各国の個人と企業の認識をみるとギャップがある。

我が国は、個人及び企業ともに他国と比べるとポジティブな認識は低く、特に企業が個人に比して低い。欧米(特にイギリス・ドイツ)では、企業における認識が高く、企業が主導・先導している状況が窺える(図表3-2-1-1)。1

図表3-2-1-1 個人及び企業における第4次産業革命に対する期待1
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
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日本の一般企業及びITAC企業について、企業の業種別に第4次産業革命に対する期待をみてみると、一般企業では、情報通信産業の企業の期待が他の業種と比べて高く、他方、商業・流通やサービス業においてはやや低い傾向がみられる。また、一般企業とITAC企業を比べると、ITAC企業は、業種を問わず7割以上がポジティブと捉えており、大きな差がみられる(図表3-2-1-2)。

図表3-2-1-2 第4次産業革命に対する期待(業種別/企業区分別比較)
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
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次に、第4次産業革命が顕在化するタイミングに対する各国の企業の見方について比較してみる。顕在化の時期は、概ね現在から2025年までの間におさまっているが、その内訳が国によって異なっている。米国は半数が既に顕在化していると回答しており、早期の対応を意識していることが分かる。イギリス・日本(ITAC企業含む)は「2020年頃」が最も多く、ドイツは2025年の回答が最も多い(図表3-2-1-3)。

図表3-2-1-3 第4次産業革命が顕在化するタイミングの予想
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
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各国企業が2020年頃までに顕在化すると予想するアウトカムのうち、各国とも総じて高いのは「デジタル化やデータ共有」である。市場や付加価値の創出などについては、米・英企業と、日・独企業で二極化が見られる。ドイツ企業は同項目に対して最もポジティブに捉えているが、米・英企業の方がより早く顕在化すると認識している。

なお、同じ日本の企業の中でも、ITAC企業は一般企業をいずれの項目でも上回っており、第4次産業革命について米英企業に近い捉え方をしていることがわかる(図表3-2-1-4)。

図表3-2-1-4 2020年頃までに顕在化すると予想するアウトカム
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
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自己以外の国の中で、第4次産業革命で特に変革がもたらされると思われる国について国内外企業に聞いたところ、米国は、米国以外の3ヶ国企業が共通して回答率が高く、2位以下を大きく離しており、第4次産業革命をリードしかつ享受する国として広く認識されている状況が窺える。

そして、米国に次ぐ国として日本が評価されている点が注目される。日本以外の3か国の企業の回答率がほぼ同水準であった。続いて、第3位の中国も、平均化すると日本と同様の水準であるが、国によって回答率が分散しており、やや評価が分かれている状況である。このように、我が国は自国の企業や国民の期待感等とは異なり、他国から、すなわち客観的には、第4次産業革命の成果をもっとも享受する国の一つであることを強く認識すべきと考えられる(図表3-2-1-5)。

図表3-2-1-5 第4次産業革命によって変革がもたらされると思われる国
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
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次に、第4次産業革命で特に変革がもたらされると思われる業種・産業分類について、同様に各国企業の見方を確認したところ、特に「情報通信業」が高く、次いで「製造業(自動車以外)」、「エネルギー・インフラ」の順に高い。日本企業の回答に注目すると「情報通信業」に集中しており、他の業種へのインパクトについては他国企業程強くは認識されていない状況である。すなわち、日本では第4次産業革命は「情報通信業」に比較的閉じた革命と捉えられている可能性がある。

他方、米国では、情報通信以外の「製造業(自動車以外)」、イギリスでは「エネルギー・インフラ」、ドイツでは「製造業(自動車)」がそれぞれ最も高く、日本の認識と比べると、情報通信を起点としつつも、他の業種や産業分類へのインパクトあるいは期待感が見られる。このように、第4次産業革命が何を意味するのかといった定義論が各国によって異なることが分かる(図表3-2-1-6)。

図表3-2-1-6 第4次産業革命によって変革がもたらされると思われる業種
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
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1 第4次産業革命がもたらす将来像に対して、「非常にポジティブ」「ややポジティブ」「どちらでもない」「ややネガティブ」「非常にネガティブ」「よく分からない」に対する回答割合より、各国の個人及び企業の回答結果より偏差値化。ただし「分からない」は除く。

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