(2)供給と需要とのマッチング促進 先述のスマートフォンの特徴、また、デジタルのデータの特徴――複製費用や伝達時間がほぼゼロ――とあいまって、スマートフォンや関連のサービスは財・サービスの提供者と利用者とをつなぐ役割を果たし、両者のマッチングを促進する役割もあると考えられる。 スマートフォンを介した取引形態を、財・サービスの提供者か利用者か、企業か消費者か、さらに財・サービスの流れ、金銭の流れや情報の流れも踏まえて分類すると、企業対企業(B to B)、企業対企業対消費者(B to B to C)、企業対消費者(B to C)、消費者対消費者(C to C)の4類型に分けられる(図表1-2-1-2)。 図表1-2-1-2 取引形態の4類型 (出典)総務省「スマートフォン経済の現在と将来に関する調査研究」(平成29年) 供給と需要とを個別又はリアルタイムにマッチングさせることで、生産性が向上したり新たなサービスが登場したりし、経済への成長に寄与すると考えられる。特に先進国では広義のサービス産業のシェアが高まっており、我が国でもGDPの約7割は第三次産業であることからも、経済成長のためにはサービス産業の生産性上昇が必要である。生産性上昇のための例としては稼働率向上や平準化があり、この点でもスマートフォンの貢献が期待される。 留意点として、利用者数や連携するサービスが増えることで利用可能なデータが増え、マッチングの精度が増すこと、また、スマートフォンが既存のビジネスの単なる効率化や代替にとどまらず、マッチングの精度が向上することにより従来であれば機会損失となっていたものが取引として成立する可能性や、新たなサービスの創出基盤となる可能性もあることが挙げられる 2 。 こうした変化は、一時的な小変化にとどまらず、第4次産業革命の一端を担い、過去の産業革命に匹敵する変化をもたらす可能性がある。歴史を振り返ると、電力や自動車といった汎用技術(General Purpose Technology)といわれる技術では、技術の普及から遅れて社会の大きな変化が現れた。見方を変えると、新技術が普及しても、他の設備、人材、業務フロー、組織など社会の様々なしくみには旧技術の影響が一定期間残るため、新技術のメリットを全面的に享受し大幅な生産性向上や経済成長を実現するまでに、十数年〜数世代の時間を要してきた。また、旧技術の衰退に伴い、一時的な経済の落ち込みや失業はあったが、その後中長期的には新技術から新たな産業や雇用が生まれてきている 3 。 スマホ、その関連サービスやデータ流通についてもその真の便益を社会が享受するには、設備、人材、業務フロー、組織など社会の様々なしくみを見直す必要があると考えられ、数年スパンの短期の視点とともに、中長期的な視点も必要と考えられる。 2 これらを端的に表している事例と考えられるのが、LINEのビジネスへの活用や個人間取引の進展である。詳細は本節の3.(3)参照。 3 具体例としては、蒸気機関から電力への転換、馬車から自動車への転換、1990年代〜2000年代前半の米国におけるICT革命が挙げられる。