(3)IoT/データ利活用の推進 ア IoT利活用の推進 (ア)IoTサービス創出支援事業(身近なIoTプロジェクト) 総務省は、前述の情報通信審議会の「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方について」中間答申(第一次〜第三次)に基づき、IoTサービスの地域実証に基づくルール整備等を通じたデータ利活用の促進に取り組んでいる。 具体的には、地方公共団体、大学、ユーザー企業等から成る地域の主体が、家庭、食など生活に身近な分野における先導的なIoTサービスの実証事業に取り組み、克服すべき課題を特定し、その解決に資するリファレンス(参照)モデルを構築するとともに、データ利活用の促進等に必要なルールの明確化等を行っている。平成28年度は、平成27年度補正予算を活用し、全国各地で8件の実証事業を実施した。平成29年度には、平成28年度第2次補正予算を活用した17件の実証事業行うほか、平成29年度当初予算を活用した実証事業を実施する予定である 4 。 (イ)IoTテストベッド事業等への支援 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、IoTの実現に資する新たな電気通信技術の開発・実証のための設備(テストベッド)の整備及び膨大なデータの流通に対して重要となる施設(データセンター)の地域分散化を促進することを目的として、IoTテストベッド及び地域データセンターの整備に必要な資金の一部を助成する取組を行っている。 (ウ)地域IoT実装推進タスクフォース 総務省では、IoT等の本格的な実用化の時代を迎え、これまでの実証等の成果を日本全国の地域の隅々に波及させるため、平成28年9月から「地域IoT実装推進タスクフォース」を開催しており、同年12月に、「地域IoT実装推進ロードマップ」及び「ロードマップの実現に向けた第一次提言」 5 が、さらに、平成29年5月に、「地域IoT実装推進ロードマップ(改定)」及び「ロードマップの実現に向けた第二次提言」 6 が取りまとめられた。ロードマップの実現に向けて、地域IoT実装推進事業をはじめとするロードマップに記載された取組の着実な実施と併せて、自治体、民間企業等が様々な形で連携する「総合的推進体制」の確立、地域の状況や取組の発展段階に応じて選択可能な「地域IoT実装総合支援パッケージ(仮称)」の創設の検討などの取組を進めている。 (エ)IoTネットワーク運用人材育成事業 IoT/ビッグデータ時代のネットワークは、センサー等のネットワークに接続される機器の爆発的な増加や流通するデータの多様化により、トラフィックの急激な変動等が生じることが予想される。このため、SDN/NFV等のソフトウェア技術を用いて、通信経路の迂回や容量拡大等の制御を行う必要があり、この技術を活用してネットワークを運用・管理する人材が必要とされている。総務省は、そのような人材を育成する環境基盤を整備し、基盤の構築・運用を通して人材育成を図り、求められるスキルの明確化やその認定の在り方を検討するため、平成29年度から「IoTネットワーク運用人材育成事業」を実施している(図表7-1-2-4)。 図表7-1-2-4 IoTネットワーク運用人材育成事業 イ オープンデータ流通環境の整備 政府、独立行政法人、地方自治体等が保有する公共データについては、国民共有の財産であることから、新たな価値を生み出す上で、国民や企業等が利活用しやすいように機械判読に適した形式で、二次利用可能なルールの下で公開されていくこと(オープンデータ)が求められており、新事業の創出、公共サービスの向上や行政の透明性の確保等が期待されている 。 総務省では、平成24年度より、公共交通、地盤、公共施設等の様々な分野におけるオープンデータ利活用の実証実験を通じ、情報流通連携基盤共通API の確立、オープンデータの公開側・利活用側のためのガイド等の策定・改定(オープンデータのための標準化の推進)といった取組を進めてきた。 平成28年度には、各地方自治体における道路通行規制データや営業許可関連データ等のフォーマット・APIの共通化・デファクト化を促進するための取組、地方自治体が保有する街の魅力向上につながるデータを主要な不動産情報サイトに掲載することで民間サービスの付加価値向上と自治体のシティープロモーションを同時に実現することを目指す「官民双方にメリットのあるオープンデータ利活用モデル」の構築、訪日を検討している外国人旅行者を対象に、各地方自治体等のオープンデータを活用したきめ細かな観光情報の提供や個人の趣向に応じた周遊計画の作成支援等を行う実証等に取り組んできた。(図表7-1-2-5) 図表7-1-2-5 具体的なオープンデータ利活用モデルの構築 総務省では、こうした取組を、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構(VLED) 7 、公共交通オープンデータ協議会 8 等の関係団体や関係府省等と緊密に連携しながら行ってきている。 ウ AIネットワーク化の推進 人工知能(AI)は、インターネット等を介して他のAI、情報システム等と連携し、ネットワーク化されること(AIネットワーク化)により、その便益及びリスクの双方が飛躍的に増大するとともに、空間を越えて広く波及することが見込まれている。 総務省は、平成28年10月に「AIネットワーク社会推進会議 9 」を立ち上げ、国際的な議論のためのAI開発ガイドライン案の策定に向けた検討を進めるとともに、様々な分野におけるAIの利活用の場面を想定して、AIネットワーク化が社会・経済にもたらすインパクト(主に良い影響や便益)やリスクの評価に関する検討を進めている。 また、今後のG7やOECD等におけるAI開発ガイドラインの策定に向けた国際的な議論に資することを目的として、国内外のトップレベルの有識者の参加を得て、平成29年3月に「AIネットワーク社会推進フォーラム 10 」(国際シンポジウム)を開催した。推進会議は、フォーラムでの議論等を踏まえ、同年6月に「報告書2017(案)」を取りまとめ、広く意見募集を行った。 報告書(案)においては、国際的な議論のためのAI開発ガイドライン案のほか、AIシステムの具体的な利活用の場面(ユースケース)を想定したインパクト及びリスクに関する評価(シナリオ分析)が記載されている 11 。(図表7-1-2-6) 図表7-1-2-6 災害対応に関するユースケース シナリオ分析からは、様々なAIシステム相互間の連携が可能となることによりAIシステム相互間の連携前におけるインパクトに加えて特に連携に係るAIシステムを利活用する業務全体を通じたリアルタイムでの最適化など更に大きなインパクトがもたらされること、雇用が減少することが見込まれる業務もあるものの、付加価値の高い業務への配置転換や新たな雇用の創出の可能性も見込まれること、各ユースケースにおいて共通して想定されるリスクが見受けられることからそれらのリスクへの対処が重要であること等の示唆を得ることができたとされている。 今後シナリオ分析を継続して行い、その成果を国際的に共有するとともに、AI開発ガイドラインの策定その他AIネットワーク化をめぐる諸課題の検討に役立てていく予定である。 政策フォーカス マイナンバーカードの利活用推進 1 マイナンバーカードの意義 2016年1月から、マイナンバーカードの交付が開始された。同カードの券面には、氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー(個人番号)と本人の顔写真等が表示されることから、マイナンバーカードは、公的な本人確認書類として幅広く利用できる。また、マイナンバーの提示と本人確認が同時に必要な場面では、これ1枚で済む唯一のカードである。 また、対面での本人確認だけではなく、マイナンバーカードに搭載されている公的個人認証サービスを活用することにより、オンラインでの本人確認・本人認証を安全かつ確実に行うことができる。これにより、マイナポータルへのログインのほか、e-Tax等の各種行政手続のオンライン申請、コンビニ等での住民票の写し・印鑑登録証明書等の取得などの行政サービス、さらには、インターネットバンキングなどの民間サービスにも利用場面が広がる可能性があるものである。 さらに、市区町村が提供する様々な行政サービス毎に発行しているそれぞれのカードの機能をマイナンバーカードに集約し、一体化させた多機能なカードとしても利用することができる。 2 これまでの利活用推進に向けた検討状況 総務省では日常生活の様々な場面における官民のサービスの利便性向上のため、国、地方公共団体、民間においてマイナンバーカードの利活用を推進していく取組を進めている。 (1)個人番号カード・公的個人認証サービス等の利活用推進の在り方に関する懇談会 マイナンバーカードに搭載されている公的個人認証サービスの利活用拡大に向け、有識者、地方公共団体、経済界を構成員とする総務大臣主宰の「個人番号カード・公的個人認証サービス等の利活用促進の在り方に関する懇談会 12 」を2015年から開催し検討を進めてきている(図表1)。 図表1 マイナンバーカードの利活用推進に関する検討体制 2016年6月の第4回会合においては、国民が具体的なメリットを実感できるマイナンバーカードの様々な使い方の可能性を示すとともに、その実現に向け「いつまでに」「何をするのか」といった具体策を盛り込んだ「先行導入の実現に向けた当面の目標」を取りまとめ(図表2)、同年11月の第5回会合に進捗状況を報告している。 図表2 先行導入の実現に向けた当面の目標 (2)ワンストップ・カードプロジェクトアクションプログラム また、主として行政分野におけるマイナンバーカード利活用に向けた取組を一層推進し、全国の市区町村の参加を促すため、2016年9月に関係省庁とも連携し、「ワンストップ・カードプロジェクト」を立ち上げて推進方策の検討を進め、同年12月にアクションプログラムを取りまとめた。このアクションプログラムには、マイナポータルにおける子育てワンストップサービス、土日や時間外でも住民票の写し等が取得可能なコンビニ交付、マイキープラットフォームの全国展開に向けた方策が盛り込まれている。 図表3 「コンビニ交付サービス」の普及拡大 3 マイナンバーカード利活用推進ロードマップ 2017年3月、上記を含めたマイナンバーカードの利便性を高める様々な取組をわかりやすく発信するため、「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ 13 」を策定・公表した。このロードマップは、マイナンバーカード利活用の内容を具体化し、検討スケジュールや実現時期が明確となるよう、各府省が連携して作成したものであり、以下の方向性が示されている。 (1)マイナンバーカード・公的個人認証サービス等の利用範囲の拡大 ア 身分証等としての利用 民間企業における本人確認書類としての活用を促進するとともに、官民における職員証・社員証・入退館証としての導入を推進。マイナンバーカード等への旧姓併記など券面記載事項の充実。 イ 行政サービスにおける利用 コンビニ交付や図書館利用など行政サービスでの利用とともに、マイキープラットフォームを活用した地域経済応援ポイントの導入を推進。さらに、政府調達での利用や海外における公的個人認証機能の継続利用に向け検討。 ウ 民間サービスにおける利用 インターネットバンキングへの認証手段、イベント会場等の入場チケット、医療分野(医療・健康情報へのアクセス認証手段、診察券としての利用、医療保険のオンライン資格確認等)など民間企業の提供するサービスもマイナンバーカードで利用可能となるよう取組を推進。 (2)マイナポータルの利便性向上 マイナポータルで、マイナンバーカードを使って、情報提供等記録や自己情報の確認、ワンストップでの子育て関連手続の申請・届出のほか、行政や民間企業からのお知らせの受け取りなど、官民のオンラインサービスをワンストップで利用可能にする取組を推進。 (3)アクセス手段の多様化 各種の官民サービスに対し、パソコンのカードリーダーに接続して利用する方法だけでなく、スマートフォンやテレビからもアクセス可能となるよう検討。 4 身近なIoTプロジェクト:http://www.midika-iot.jp/ 5 「地域IoT実装推進ロードマップ」及び「ロードマップの実現に向けた第一次提言」:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000129.html 6 「地域IoT実装推進ロードマップ(改定)」及び「ロードマップの実現に向けた第二次提言」:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000142.html 7 一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構:http://www.vled.or.jp/ 8 公共交通オープンデータ協議会:http://www.odpt.org/ 9 AIネットワーク社会推進会議:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/index.html 10 AIネットワーク社会推進フォーラム:http://channel.nikkei.co.jp/businessn/17031314ai/#top 11 国際的な議論のためのAI開発ガイドライン案の検討に向けた先行的評価として、10のユースケース(災害対応、移動(車両)、健康、教育・人材育成、小売・物流、製造・保守、農業、金融(融資)、公共・インフラ、生活)について評価を行ったほか、AIシステムを利活用する分野ごとの分野別評価として、評価を行う予定である12分野のうち3分野のユースケース(公共:まちづくり、個人:健康、産業:モノ)について評価を行った(図表7-1-2-6は災害対応の例)。 12 個人番号カード・公的個人認証サービス等の利活用推進の在り方に関する懇談会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/mynumber-card/index.html 13 http://www.soumu.go.jp/main_content/000477828.pdf