(4)固定電話網の円滑な移行の在り方 NTTは、加入電話の契約数等が減少し 6 、2025年頃に中継交換機・信号交換機が維持限界を迎えること等を踏まえ、平成27年11月、NTT東日本・西日本の公衆交換電話網(PSTN)をIP網へ移行する構想を発表した(図表7-2-1-3)。 図表7-2-1-3 固定電話網のIP網への移行に伴う設備構成のイメージ NTT東日本・西日本のPSTNは、我が国の基幹的な通信インフラであり、また、IP電話や携帯電話を含む事業者間の通話を媒介する機能や多くの事業者が事業展開するための競争基盤を提供していることから、移行後のIP網の姿や移行の在り方は、利用者や事業者に大きな影響を与えるものと想定される。 こうした認識の下、総務省は、移行後のIP網の姿や移行の在り方について検討するため、平成28年2月、「固定電話網の円滑な移行の在り方」について情報通信審議会に諮問した。これを受け、同審議会の電気通信事業政策部会及び電話網移行円滑化委員会(部会長及び委員会主査:山内 弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授)において、一年にわたり精力的に調査・審議が行われ、平成29年3月、「移行後のIP網のあるべき姿」についての一次答申 7 がとりまとめられた。 一次答申では、現在全国あまねく提供され、固定通信市場において利用が拡大傾向にある0AB〜J IP電話(光IP電話を含む)を含め約5,600万件 8 の契約を有する固定電話は、地域の拠点との基本的な通信のための手段であり、社会経済活動に不可欠な基盤として、IP網への移行後も必要とされるものであることを確認した上で、IP網への円滑な移行の実現に向けて、0AB〜J IP電話(光IP電話を含む)や光ブロードバンドの移行を見据えた競争環境整備を促進し、移行元であるメタル電話の利用者の移行を促すとともに、過度な負担発生を回避しながら、移行に直ちに対応できない利用者に対して適切な補完的措置(メタルIP電話 9 等)を講ずべきとする基本的考え方や、電気通信サービスを利用する「利用者」と提供する「事業者」の視点からの個別課題に関する具体的方向性等が示されている(図表7-2-1-4)。 図表7-2-1-4 一次答申の基本的な考え方(主なポイント) なお、一次答申に基づく取組が適切かつ確実に実施されているかについては、同審議会において、NTTからの定期的な報告を求め、また、必要に応じて事業者等からの意見聴取を行いつつ、フォローアップを実施し、必要な検討・見直し等を行うこととされている。 さらに、平成29年4月からは、固定電話網のIP網への移行に関する移行工程・スケジュールや一次答申でフォローアップが必要とされた主な個別課題に関する議論が、同審議会において進められている。その中で、NTTからは、PSTNの中継・信号交換機等のうち2025年初頭から維持限界を迎えるものが発生することから、それまでにIP網への切替を完了させるため、2024年初頭に「固定電話」発信の通話についてIP網経由への移行を開始するとともに、「固定電話」の契約をメタルIP電話へ一斉に契約移行するなどの考えが示されている(図表7-2-1-5)。 図表7-2-1-5 NTTが示した移行方法・スケジュールの考え IP網への円滑な移行の実現に向けて整理・具体化すべき移行工程・スケジュールには「サービス移行」に係るものと「設備移行」に係るものとがあり、同審議会においては、利用者のサービス利用に直結し、利用者への直接の影響が及ぶ「サービス移行」を中心に検討し、「設備移行」については、「サービス移行」との関連や事業者間協議の状況を随時確認しながら、必要な事項について検討が進められている。今後、個別課題のフォローアップ・検討とあわせて、移行工程・スケジュールの整理・具体化を進め、本年夏〜秋頃を目処に、「移行後のIP網のあるべき姿に向けた円滑な移行の在り方」についての二次答申が取りまとめられる予定となっている。 6 NTT東日本・西日本の加入電話・ISDN電話の契約数は、減少傾向にあり、現在2,250万件(2016年3月末)となっている 7 「固定電話網の円滑な移行の在り方」一次答申:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban02_02000216.html 8 2016年3月末現在 9 PSTNからIP網への移行に際し、NTT東日本・西日本が従来のメタル電話(加入電話)に代えて提供すると表明している固定電話サービス。アクセス回線は引き続きメタル回線を維持・利用した上で、メタル収容装置(旧加入者交換機)で当該メタル回線を収容し、アナログ信号からIP信号への変換装置を通じてIP網(NGN)に入るという設備構成により、音声通信を疎通させる。