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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第2節 日本と世界のデータ関連制度

(3)オンライン・プラットフォームとデータ流通

ア EUデジタル単一市場戦略とオンライン・プラットフォーム

オンラインプラットフォーム(以下、OP)は、ネット広告、ネット市場、検索エンジン、SNS、アプリ市場、決済システムなど、広範なネット上の活動の基盤を指す。個人情報を含む様々なデータの流通や活用においては、国際的に高いシェアを持つプラットフォーム企業が大きな影響力を有する。GoogleやFacebookに代表される国際的なプラットフォーム企業は、データ関連サービスを生み出すための重要な基盤としての役割を果たしているが、その影響力の巨大さがゆえに、データ活用サービスの競争環境への影響に対する懸念を生み、前項で紹介したとおり、我が国においても公正取引委員会などにおいて、適正なデータ流通を実現する競争環境の整備に向けた検討が進められてきている。

EUでは、2015年5月に開始されたEU全体のデジタルサービス市場の統合を目指したデジタル単一市場戦略枠組21の中で、2016年5月に「オンライン・プラットフォームとデジタル単一市場:欧州にとっての機会と挑戦22」と題するコミュニケーション(以下、OP政策文書)を公表し、EUにおけるOPの健全な発展を促すための総合的な政策枠組を提示している。

図表1-2-2-8 OP政策文書の主要指針
(出典)総務省「我が国のICTの現状に関する調査研究」(2018年)

OP政策文書では、「同等なデジタルサービスの公平な競争条件」「オンライン・プラットフォームによる責任ある行動」「信頼や透明性の増大と公正性の確保」「データ駆動型経済成長のためのオープンで非差別な市場」4つの原則に基づき、OPに関わる各種の規制枠組を現代の情報環境に適合した形で改革していくことを示しており、対象となる法規制はEUの情報通信関連法制全体に渡る。OP政策文書に沿う形でここ2年間の間に公表された新規・改正法や制度の案は、以下のとおりである(図表1-2-2-9)。

図表1-2-2-9 OP政策文書における4原則と関連する制度改革方針
(出典)総務省「我が国のICTの現状に関する調査研究」(2018年)
イ データ流通に関連の深い制度改革分野

OP政策文書に基づき進められる制度改革の中でも、特にデータ流通に関わりが深いのが、上記「原則IV:データ駆動型経済成長のためのオープンで非差別な市場」に関して公表された「非個人データのEU域内自由流通枠組規則」案に含まれる、非個人データの自由流通に関わる規律である。同規則案は、GDPRの対象にならない産業データ等の「非個人データ」に関して、先に触れたEU域内のデータ自由流通を阻害する加盟国によるデータローカライゼーション規制の抑止を行うと共に、クラウドサービスに関わるデータのポータビリティ促進を規定している。ここではクラウドサービスに提供したデータを、ユーザー企業が機械可読な形式で自らの手元に取り戻したり、他のクラウドサービスに移植することで、サービス間のスイッチングを容易にするための行動規範の策定を産業界に求めている。当該行動規範自体に法的な拘束力は無いが、2017年末からは欧州委員会の主催により行動規範の策定に向けたステイクホルダー・ミーティングが開催されており、規則の発効後1年間の状況を精査した上で、必要な場合にはより強制力の強い立法手段での対応を行うことも視野に入れられている。



21 欧州委員会「デジタル単一市場」 https://ec.europa.eu/commission/priorities/digital-single-market_en別ウィンドウで開きます

22 欧州委員会 “Communication on Online Platforms and the Digital Single Market Opportunities and Challenges for Europe”(2016年5月)
https://ec.europa.eu/digital-single-market/en/news/communication-online-platforms-and-digital-single-market-opportunities-and-challenges-europe別ウィンドウで開きます

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