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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第6節 グローバル需要の取り込み

(2)受け入れ環境の整備

訪日外国人旅行者の増加に伴い、旅行者の国内における受入環境の整備が急務となっている。政府は、観光ビジョンに基づき、すべての旅行者がストレスなく、快適に観光を満喫できる環境整備に向け、受入体制に関する施策を推進している。とりわけ、「ソフトインフラ」の飛躍的な改善の方向性として、例えば、無料公衆無線LAN環境(以下、無料Wi-Fi環境)の整備促進や利用手続の簡素化、SIMカード・モバイルWi-Fiルーターとの相互補完利用、多言語翻訳システム、個人のニーズに合わせた観光情報の配信など最適なサービス提供基盤の社会実装化などが挙げられる。

観光庁の調査10によれば、訪日外国人旅行者が旅行中困ったこととしては「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」(26.1%)が最も高く、次いで「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」(21.8%)、「無料公衆無線LAN環境」(21.2%)となっている(2017年度調査)。無料Wi-Fi環境整備については、過去のアンケート調査結果からも、整備促進が求められており、総務省では、観光庁と連携し、地方自治体、通信・交通等の民間事業者で構成する「無料公衆無線LAN整備促進協議会」を平成26年に立ち上げ、無料Wi-Fi整備の促進、周知・広報等に取り組んでいる。他方、訪日外国人による日本滞在中のコミュニケーションやそのための多言語対応においては引き続き課題となっている。今後、訪日外国人旅行者の個人旅行化が一層進むことを考慮すると、複雑なコミュニケーションが必要となるような場面も増えることが考えられることから、VoiceTra技術を活用した多言語音声翻訳システム、多言語に対応した屋内外のデジタルサイネージや多様なアプリケーション等のICTを活用することが期待される。

図表2-6-3-2 訪日外国人旅行者が旅行中に困ったこと
(出典)下記出典を元に総務省作成
平成26年度「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」
平成28年度「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」
平成29年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」

こうした、受入環境は「攻め」のツールともなりうる。例えば、無線LANによる通信環境の整備は、観光客にとっての利便性の向上のみならず、Wi-Fiを活用した情報配信(商店街のクーポン、イベント情報など)による回遊や消費喚起など、効果的な活用方法が考えられる。

また、支払等の決済面での受入環境の整備も重要といえる。電子決済サービスの充実により、自国で普及し使い慣れているキャッシュレス環境と同様に渡航先で使えるようになると、利便性が飛躍的に高まり、消費が一層喚起されることが想定される。例えば、訪日外国人旅行者の多くを占める中国人観光客は、支払い手段としてWeChat PayやAlipayといったスマホでの決済を利用する傾向が強い。

こうした点も背景に、前述の観光ビジョンにおいては、主要な商業施設や宿泊施設、観光スポットにおける「100%のクレジットカード決済対応」及び「100%の決済端末のIC対応」、3メガバンクにおける海外発行カード対応ATM の設置計画の大半の大幅な前倒し要請(2018年中にその大半を設置)などによる、キャッシュレス環境の飛躍的改善も目標として掲げられている。直近の傾向をみてみると、クレジットカード利用は56.6%、次いでデビッドカードが13.0%、ATMが8.4%となっている(図表2-6-3-3)。

図表2-6-3-3 訪日外国人旅行者が利用した金融機関や決済方法(複数回答)
(出典)観光庁「訪日外国人消費動向調査」(平成29年)を元に総務省作成

このように、情報と決済の両面において、ICTを活用した受入環境の整備を進めることで、総体的にサービスや満足度の向上へつなげ、新規のみならずリピーターを増やしていくことが、継続的なインバウンド需要の取り込みにおいて重要といえるであろう。



10 観光庁「訪日外国人旅行者の国内における 受入環境整備に関するアンケート」

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