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第2部 基本データと政策動向
第1節 総合戦略の推進

(5)マイナンバーカード利活用推進

マイナンバーカードは券面情報(氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー、本人の顔写真)による対面等での本人確認だけでなく、マイナンバーカードに搭載されている公的個人認証サービスを活用することにより、オンラインでの本人確認・本人認証を安全かつ確実に行うことができる。総務省では日常生活の様々な場面における官民のサービスの利便性向上のため、国、地方公共団体、民間においてマイナンバーカードの利活用を推進していく取組を進めている。

ア マイナンバーカード・公的個人認証サービスの利活用推進

総務大臣主宰の「個人番号カード・公的個人認証サービス等の利活用促進の在り方に関する懇談会」 においては、有識者、地方公共団体、経済界を構成員として、マイナンバーカードの利活用方策、利用範囲の拡大や公的個人認証サービスへのアクセス手段の多様化のための検討を行っている。

マイナンバーカードについては、券面を利用した顔写真入り職員証としての活用のほか、ICチップの空き領域を利用し、入退室管理や端末操作の権限確認手段等としての活用が進んでいる。

公的個人認証サービスについては、携帯電話の契約時、オンラインでの証券口座の開設時や母子健康情報サービス(マイナンバーカードを活用して、パソコンやスマートフォンから母子健康情報を閲覧できるサービス)登録時の本人確認に活用されるなど民間サービスにおいても利用が拡大している。更なる利用範囲の拡大に向け、平成29年度にはインターネットバンキングへの認証手段、イベント会場等へのチケットレス入場・不正転売防止やボランティア管理、防災や医療分野、敬老パスといった公共交通分野における活用の実現に向けた実証事業を実施した。今後、地域や関係事業者等と連携しつつ、実用化を図っていく。また、公的個人認証サービスへのアクセス手段の多様化に向け、今や国民の生活インフラともいえるスマートフォンに利用者証明機能を搭載するため、電子証明書のスマートフォンへの搭載方法等について技術実証等を行い、技術・運用面での課題解決に向けた取組を進めるとともに、その具体化を図る制度面の検討も進めていく。

公的分野においては、平成29年11月から本格運用が開始されたマイナポータルの子育てワンストップサービスを通じた行政機関への各種申請や行政機関からのお知らせ(プッシュ型)サービス、e-Tax、コンビニ等で住民票の写し等が取得可能なコンビニ交付サービス 等における本人確認手段として活用されている。

公的個人認証サービスは、誰もが取得できるインターネット社会の基礎的な情報インフラであり、国、地方公共団体、民間におけるマイナンバーカード・公的個人認証サービスの利活用を一層推進していく。

イ 電子委任状の普及促進

電子委任状は、企業の社員が、契約や行政手続を電子的に行う際に、企業の代表者から代理権の授与を受けたことを簡易かつ確実に証明することを可能とするものである。電子委任状による代理権の証明とあわせて、マイナンバーカード等に搭載された電子証明書がその社員の氏名等の情報を証明することで、企業の社員が契約や行政手続を行う際に必要な情報を全て電子的に証明することが可能となるものであり、電子委任状の普及とマイナンバーカードの普及は双方相乗的に寄与することが期待されている。

その実現に向け、電子委任状を円滑に利用できる環境を整備するための「電子委任状の普及の促進に関する法律」が平成30年1月1日に施行されるとともに、関係政省令・基本指針が策定され(平成29年12月27日公布、平成30年1月1日施行)、今後の「デジタルファースト」の早期実現に向けた取組が活発化しているところである。

政策フォーカス 未来をつかむTECH戦略

1.検討の背景

我が国は2020年以降、人口減少や少子化・高齢化が一段と本格化し、これに伴い、経済や産業・地域などあらゆる面で厳しい環境に直面する「静かなる有事」とも言うべき事態が予想されている。

例えば、日本の人口は2017年時点で1億2,671万人であるが、2040年には1億1,092万人まで減少し、その頃には年間100万人程度の減少トレンドが続くと予測されている。この間、生産年齢人口は約7,600万人から約6,000万人まで減少する一方、高齢者人口は約3,515万人から約3,920万人まで増加すると見込まれている。

しかし、こうした「静かなる有事」を落ち着いて受け止めた上で、こうした課題を乗り越えていくための日本の歩むべき道を見定めることが求められている。一方、IoT、AI、ロボットなどのICTは、新たな付加価値を生み出したり業務を効率化したりすることで生産性を向上させるとともに、子ども・お年寄り・障害者などあらゆる国民の生活に変革をもたらす「切り札」として期待が寄せられている。

こうした認識の下、2030年〜2040年頃の未来社会を展望しつつ、そこから逆算する形で、IoT・AI・ロボット等のイノベーションの社会実装や、年齢・性別・障害の程度等を超えて誰もがその能力を発揮し豊かな生活を享受できる社会の実現に向けて取り組むべき情報通信政策の在り方を検討することとした。

2.検討状況

(1)IoT新時代の未来づくり検討委員会

平成29年11月、情報通信審議会 情報通信政策部会の下に「IoT新時代の未来づくり検討委員会」(以下「委員会」という。)が設置され、平成30年6月にかけて有識者18名による検討が行われた(図表1)。

図表1 IoT未来づくり検討委員会の検討体制

委員会では、我が国の経済・社会の現状や今後の見通しについて認識共有を図りつつ、2030年代に訪れるテクノロジーの進展を見据え、2030年代の未来社会のコンセプトやビジョンを整理することとされた。

また、委員会の下に「産業・地域づくりワーキンググループ(以下「産業・地域づくりWG」という。)」、「人づくりワーキンググループ(以下「人づくりWG」という。)」の2つのワーキンググループが設置され、それぞれの観点から具体的な情報通信政策のあり方について検討が行われた。

産業・地域づくりWGでは、産業が担う「グローバル成長力」と地域が担う「地域成長力」の双方を確保することが必要であり、「グローバル成長力」を高めるためには、急速に進行するデジタル・トランスフォーメーションに対応するための「柔軟・即応のアプローチ」が、「地域成長力」を高めるためには、中心市と近隣市町村が役割分担する「集約とネットワーク化」がそれぞれ目指すべき姿とされた。

その上で、目指すべき姿から逆算する形で具体的な政策検討を行い、①あらゆる分野で最先端技術を導入し産業構造のトランスフォームを促すサービス開発支援や、②データ流通時代の競争力を強化する方策の検討、③モビリティ(人・モノの移動の変革)を取り込んだ先進的なスマートシティの推進、④ネットワーク・サービス提供環境の整備による地域のサステナビリティの確保などが提言された。

人づくりWGでは、人生100年時代における主要な社会的課題を、生産年齢人口の減少、高齢者の割合の増加、障害者の社会参画と捉えた上で、今後到来する本格的なIoT・AI時代には、人間の仕事が価値創造的な業務や人と人とのつながりが必要なものに転換するとともに、日常生活の自動化が大きく進展するとの認識を共有し、①革新的サービスを創出できるデジタル人材の育成、成長産業へ人材をシフトさせていくような就業構造の転換、②高齢者・障害者もIoT、AI時代に取り残されることなく、みんなが豊かな人生を享受できるインクルーシブ社会の実現を目指すべきとされた。

その上で、目指すべき姿から逆算する形で具体的な政策検討を行い、①地域で多様な年齢層がプログラミング等のICTを学ぶ仕組み、②高齢者がICT機器の操作等について気軽に相談できる仕組み、③障害者向け技術開発への企画開発段階からの当事者参加の仕組み等を内容とする基本的な施策パッケージに加え、④こうした施策を実行に移すための新たな地域コミュニティの創造、が「スマートインクルージョン構想14」として提言された。

(2)未来デザインチーム

2030〜2040年頃の未来イメージについて、委員会へのインプットを目的として、将来の行政の中枢を担う若手職員の斬新のアイデアと知恵を結集するため、総務省内の若手職員26名(平均年齢29歳)による「未来デザインチーム」を平成29年12月に立ち上げた。

未来デザインチームでは、職員たちの考える未来への「兆し」を基に、テクノロジーの進化から世の中の価値観の変化まで幅広く検討材料を集め、2030〜2040年頃の「ありたい未来像」を小説の形でとりまとめ、そこから象徴的な生活シーンを切り取った「未来イメージ」を委員会の議論にインプットした。

平成30年4月には、未来をつかむTECH戦略(委員会の中間取りまとめ)の公表に合わせ、小説「新時代家族〜分断のはざまをつなぐ新たなキズナ〜」を公表した。

(3)先駆的ICTに関する懇談会

最前線で活躍中の新進気鋭のベンチャー経営者等との意見交換を行うことを目的とする「先駆的ICTに関する懇談会」を平成30年1月に立ち上げ、①日本、アジアや世界が抱える課題、②課題解決に向けたICTの可能性、③先駆的な技術の社会的受容性のための方策、④日本の次世代社会の姿等について大局的な議論を行っており、その内容について、例えば、「今後20年間程度で生産性を1.5倍にするべき」との高めの目標を委員会のとりまとめにインプットするなど、積極的な連携を図っている。

3.「未来をつかむTECH戦略」

委員会や各ワーキンググループでの検討結果は「未来をつかむTECH戦略」としてとりまとめられ、平成30年4月に中間とりまとめが、同年6月に最終とりまとめが行われた。

本戦略は、我が国の構造変化がもたらす「静かなる有事」をむしろチャンスと捉え、アグレッシブなICT導入により「変革の実行」に繋ぐための改革プランとして、2030年代の実現したい未来から逆算するアプローチによって策定された。

まず、「変革の実行」に移すためには、我が国社会全体のマインドチェンジを促していく必要がある。委員会では、変革を促すための8か条を「MOVE FAST」と銘打って打ち出している(図表2)。

図表2 変革実行の8カ条「MOVE FAST」
  • Moonshot(実現したい未来の姿(ムーンショット)を設定し、そこから逆算して対策を立案する)
  • Opportunity(芽生えた機会を逃さず、柔軟・即応のアプローチで挑戦する社会風土にする)
  • Value(評価基準を量(ボリューム)から質(QoL)に転換し、成熟国家の価値観へ脱皮する)
  • Economics(生産性を高め所得を増やすとともに、国内外の需要を徹底的に掘り起こす)
  • Focus(持続可能性を重視し、選択と集中を通じて、ムダなものは止める決断をする)
  • Aggressive(人口減・高齢化を迎える中で、あらゆる分野にアグレッシブにICTを導入する)
  • Superdiversity(年齢区分等による画一化を改め、誰でも希望に応じて活躍できる制度にする)
  • Trust(進展する技術の制御可能性、社会倫理、濫用回避等を確立し、信頼を高める)

その上で、「人づくり」、「地域づくり」、「産業づくり」の観点から、それぞれ2030年代に実現したい未来の姿について、以下のとおり具体的な生活シーンも描写する形で展望し(図表3)、そこからバックキャスティングして政策パッケージを提言している。

図表3 2030年代に実現したい未来の姿“ICT”
  • Inclusive(年齢・性別・障害の有無・国籍・所得等に関わりなく、誰もが多様な価値観やライフスタイルを持ちつつ、豊かな人生を享受できる「インクルーシブ(包容)」の社会)
  • Connected(地域資源を集約・活用したコンパクト化と遠隔利用が可能なネットワーク化により、人口減でも繋がったコミュニティを維持し、新たな絆を創る「コネクティッド(連結)」の社会)
  • Transform(設計の変更を前提とした柔軟・即応のアプローチにより、技術革新や市場環境の変化に順応して発展する「トランスフォーム(変容)」の社会)〈産業〉

総務省としては、今後、夏頃に出される予定の情報通信審議会としての答申の内容も踏まえて、2030〜2040年代の未来の姿の実現に向けて、必要な施策を着実に講じていくこととしている。



14 IoT・AIなどの新たなICTを指す「スマート」という言葉と、社会の方向性として、高齢者・障害者も含めみんなが豊かな人生を享受できることを目指す「インクルージョン」という言葉を合わせ、本構想の主題としたもの。

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