(4)ネットワーク 「ネットワーク」では、サービス市場及びネットワークを支えるインフラ(機器)市場について整理する。 ネットワークサービス市場では、固定通信では、固定ブロードバンドサービス契約数が堅調に増加してきたが、今後は成長の鈍化が見込まれる。また、移動体通信は、2G、3G、4Gと技術の進展に伴ってサービスの高速化・大容量化が進むとともに、契約数が増加してきた。先進国での普及率は高止まり、成長は鈍化しているが、今後もアフリカやアジア等の新興国では増加が続いていくと見込まれる。 インフラ(機器)市場では、固定ブロードバンドアクセスや移動体通信サービスでは光ネットワーク技術の利用が進展しており、光伝送機器の市場規模の拡大が続いている。一方、家庭宅内・建物内にネットワークとの接続点となる家庭用ゲートウェイやFTTH機器といった機器の市場は、緩やかな減少傾向にある。 移動通信サービスを支えるインフラでは、マクロセル基地局が投資一巡からピークアウトしているものの、システム全体において超高速・大容量のサービスを提供するためのインフラとしてスモールセル基地局は成長が続いている。 ア 固定・移動体通信サービス市場 世界の固定ブロードバンドサービス(xDSL・CATV・FTTx)は、2017年には、新興国を中心に2016年のオリンピック需要の反動減があったため約8.1億契約と減少したものの、IHSによると、2020年には8.8億契約まで堅調に拡大することが予想される(図表1-1-3-9)。 図表1-1-3-9 世界の固定ブロードバンドサービス契約数の推移及び予測(出典)IHS Technology 携帯電話及びスマートフォン等の移動体通信サービスの契約数は、新興国を中心に増加してきたが、今後はアフリカやその他アジアなどの新興国で新規契約の成長は緩やかになると見込まれる(図表1-1-3-10)。 図表1-1-3-10 世界の移動体通信サービス契約数の推移及び予測(出典)UN World Population Prospects 2017 IHS Technology イ 固定ネットワーク機器市場 通信インフラは、様々なネットワーク機器・設備やそれを支える技術によって成り立っている。例えば、前述した固定ブロードバンドサービスに加え、クラウドサービスの中核インフラであるデータセンターなどの企業向けネットワークにおいてもトラヒックの増加に伴い、それを支える基盤として光ネットワークの利用が進展している。大容量化・高速化への対応により、その代表的な製品である光伝送機器の需要は堅調な増加が続いている(図表1-1-3-11)。 図表1-1-3-11 世界の光伝送機器市場規模の推移と予測(出典)IHS Technology FTTH機器市場についてみると、先進国ではブロードバンドインフラの普及が一巡し、新規で導入される市場は新興国が中心となっている。最大市場である中国では、光インフラ導入が推進されてきたが、2016年以降ピークアウトし、その後も普及一巡のため、市場は緩やかながら減少傾向が見込まれる(図表1-1-3-12)。 図表1-1-3-12 世界のFTTH機器市場9規模の推移と予測(出典)IHS Technology ウ 移動体ネットワーク機器市場 移動体通信サービスの成長が鈍化することが予想されており、マクロセル基地局10市場(2G/3G/LTE)は、2015年の中国におけるLTE投資によって大きく増加した後、2G/3G機器のライフサイクルの終焉とともに、2015年をピークに市場規模も縮小している(図表1-1-3-13)。2020年以降は5Gへの新規投資が見込まれるが、5Gインフラは既存のLTE網を活用して整備されるため、2020年までの市場全体の規模への影響は限定的であると見込まれる。 図表1-1-3-13 世界のマクロセル基地局市場規模の推移及び予測(出典)IHS Technology 他方、主としてカバレッジを確保するためのマクロ基地局を補完し、システム全体において超高速・大容量のサービスを提供するためのインフラとして、スモールセルの整備展開が進展する見込みである。価格下落の影響はみられるものの、LTE以降の指向性の高い無線インフラに対応した屋内設置の増加など、利便性改善への投資拡大により、全地域の市場で総じて成長が続いている(図表1-1-3-14)。 図表1-1-3-14 世界のスモールセル市場規模の推移及び予測(出典)IHS Technology エ LPWA IoT時代においては、多様なアプリケーションの通信ニーズに対応することが求められるが、現在開発・提供等が進んでいるのがLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる技術である。LPWAの通信速度は数kbpsから数百kbps程度と携帯電話システムと比較して低速なものの、一般的な電池で数年以上運用可能な省電力性や、数kmから数十kmもの通信が可能な広域性を有している。 これまでLPWAネットワーク市場は、欧州企業であるSIGFOXによるSigfoxとCiscoをはじめとした米国企業が推進するLoRaWANとが牽引してきた。一方、3GPPが進めるセルラー系LPWAは、SigfoxやLoRaWANに比べると高ビットレートのため、LPWAの中でも比較的ハイスペックな用途を中心とした市場開拓が進められている。LPWAは低速、長距離、低コストを特徴とする無線技術のため、IoT化を進める中国やその他アジア地域でも今後拡大が予想される。 LPWAのモジュール出荷台数及び接続数はいずれも高い成長率での増加が続いており、2020年には全方式の出荷台数は合計4億台を超えることが予測されている(図表1-1-3-15)。 図表1-1-3-15 世界のLPWAモジュール市場規模・出荷台数の推移及び予測(出典)IHS Technology 9 Broadband Gateway、ONT、PONを含むFTTH CPE(consumer premise equipment)を対象とする。 10 半径数百メートルから十数キロメートルに及ぶ通信エリアを構築するための基地局であり、移動体サービスのカバレッジを確保するために利用されてきている。