(1)我が国輸出の状況 まず、我が国の貿易・サービス収支についてみてみる。貿易収支については、東日本大震災以降貿易赤字が続いていたが、2016年度では黒字に転じている。これは、中国市場向けの液晶デバイスが牽引するなど、アジア向けの輸出額が過去最高を記録した上、原油相場の低迷や円高の影響で輸入額が減った等の要因によるものである。主に海外資産が生み出す利子や配当などの収益からなる第一次所得収支については、世界経済危機の影響から 2007年をピークに3年連続で減少したものの、2011年以降は投資収益の受取増加により拡大傾向が続いており、2015年には20兆円を超えた。このように、近年は貿易・サービス収支から所得収支へと構造が変化している状況であることから、引き続き海外投資を進めていくことが大きな意味を持つ。 図表2-6-2-1 我が国の国際収支の推移 (出典)財務省「国際収支統計」 次に、製品輸出全体においてICT製品2が占める割合についてみてみる。世界平均をみると、15%から10%水準へ緩やかに低下している傾向がみられる中、我が国の輸出財においてICTが占める割合は、2000年から下降傾向が見られ、2000年の25%弱から15年間低下を続け、2015年時点では10%を下回っており、主要4カ国及び世界平均で最も低い水準である。また、米国も我が国と同様の傾向がみられる。他方、中国や韓国は、一時期を除き20%以上で推移しているおり、輸出のICT財への依存度が比較的高いといえる(図表2-6-2-2)。 図表2-6-2-2 製品輸出財にICT財が占める割合 (出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年) (国連貿易開発会議「UNCTAD STAT」より作成) また、同様に、サービス輸出に占めるICTサービス3の割合は、世界平均は緩やかに増加している傾向がみられる。我が国は20%〜30%で横ばいしており、米国や韓国も2016年時点では同水準である。中国は上昇傾向が見られ、製品輸出・サービス輸出ともに、他3カ国と比べても高い割合を占めている。 図表2-6-2-3 サービス輸出にICTサービスが占める割合 (出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年) (国連貿易開発会議「UNCTAD STAT」より作成) 2 コンピューター及び周辺機器、通信機器、消費者向け電子機器、電子部品・コンポーネントなどが含まれる。 3 通信サービス(ケーブル・衛星などによる映像・音声・画像等の情報通信サービス、移動通信・インターネットサービス)、コンピューターサービス(コンピューターのハードウェア・ソフトウェアに関連するサービス、データ加工サービスなど)、情報サービス(ニュース、データベース、アーカイブ、ライブラリサービスなど)が含まれる。