2 クラウドサービス (1)クラウドサービスの概要 クラウドとは、「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略した呼び方で、データやアプリケーション等のコンピューター資源をネットワーク経由で利用する仕組みのことである。今やスマートフォンや携帯電話を使って、メールをやり取りしたりゲームをしたりすることは当たり前になっている。しかし、これらのアプリケーションは、スマートフォンや携帯電話上だけで動作しているのではない。ネットワークでつながるデータセンターと呼ぶ大規模施設に置かれたサーバーやストレージ、各種のソフトウェアなどと連携することで、電子メールやゲームといった“サービス”が実現されている。ネットワークにつながったPCやスマートフォン、携帯電話などにサービスを提供しているコンピューター環境がクラウドである。 クラウドが提供するサービスは、その構成要素から大きく(1)IaaS(Infrastructure as a Service)、(2)PaaS(Platform as a Service)、(3)SaaS(Software as a Service)の3種類がある。 IaaSは、コンピューターやストレージ、ネットワークなどのハードウェアが提供する機能を提供するサービスである。これを可能にしているのが、物理的なコンピューター機器を疑似的に分割したり統合したりする「仮想化」の技術である。仮想化によって、利用者の要求に対し、利用するコンピューター資源を自動的に増減できるほか、サービスの提供者にとっても、運用の自動化や効率化を図ることができる。 PaaSは、アプリケーションプログラムを開発・実行するためのツールや環境(=プラットフォーム)を提供するサービスである。プログラミング環境やデータベースなどの機能をネットワーク経由で利用できるようにする。近年のPaaSには、データ分析やAI(人工知能)などの最新技術が組み込まれるようになっており、新しいビジネスの開発や、少子高齢化に伴う人手不足を解消するための自動化の仕組みの開発などに利用されている。 SaaSは、アプリケーションプログラムが持つ機能を提供するサービスである。業種/業務別アプリケーションから、SNS(Social Networking Service)やメールのようなコミュニケーションツールなどが用意されている。 クラウドはまた、その利用形態によって、(1)パブリッククラウド、(2)プライベートクラウド、(3)ハイブリッドクラウドの3つに分けられる(図表3-3-2-1)。 図表3-3-2-1 クラウドサービスの3つのサービス内容と3つの利用形態(出典)総務省「ICTの新たな潮流に関する調査の請負」(平成30年) パブリッククラウドは、クラウドの標準的なサービスを不特定多数が共同で利用する形態である。 プライベートクラウドは、利用企業に専用のクラウド環境を指す。パブリッククラウドは標準的なサービスしか提供しないため、独自のコンピューティング環境やセキュリティ基準の実現が難しいことがある。パブリッククラウドを従量課金で利用するよりも、自社専用のコンピューティング環境を構築したほうが柔軟に利用でき、かつ安価になるケースもあり、このような場合にプライベートクラウドが選択される。 パブリッククラウドとプライベートクラウドには、それぞれのメリット/デメリットがあるため実際には、両者を統合して利用するケースが増えている。これが「ハイブリッドクラウド」である。ハイブリッドクラウドとして、パブリックとプライベートそれぞれのメリットを生かすためには、両者を使い分けるための方針や、統合して管理できる仕組み、プログラムやデータをクラウド間で移動させる“可搬性”などが必要になる。