3 ICTによるインクルージョン促進の方向性 (1)ICTが創るつながりによる課題解決 人口減少時代において、多様な人々を社会、あるいは職場などに受け入れるインクルージョンを社会全体で促進することは、持続的成長を実現することにもつながる10。 多様な人々の社会や職場への参加には、従来のように個人が単一のコミュニティや職場のみに深くつながるのではなく、複数の組織に少しずつ所属する「複属」を進めていく必要があろう。ICTは、そのような動きを促進するために使うことができる。 インターネットの普及により、ソーシャルメディア11などのICTサービスを通じた個人による情報発信や他人との交流が容易になった。ソーシャルメディアを通じて出会った人々との新しいつながりを得られるようになったことは、従来型のコミュニティだけでなく、多様な人々とのつながりから生じるバーチャルなコミュニティへの参加も可能にしている。また、家族や友人などとのソーシャルメディアの利用や、地域における共助を促進するためのICT利活用の取組も広がっている。このような社会参加を促進するICT活用については、第3節で述べる。 労働人口の減少に関する対策のうち、多様な人材の労働参加については、在宅・サテライトオフィス勤務や、特定の企業に所属しない働き方などが解決策のひとつとなり得る。多様な人材の労働参加を支えるICTとして、職場内でのコミュニケーションに利用できるビジネスICTツール、場所と時間を有効に活用できる働き方であるテレワーク、企業などが発注した業務をプラットフォーム上で個人が受注するクラウドソーシングを第4節で取り上げる。 また、労働生産性向上に関するICT利活用としてAI、IoT、ロボットの職場への導入がある。これらが今後進展した場合、人間の仕事内容に変化が生じると考えられる。その変化に対応するための教育とそれへのICTの活用については、労働参加の観点からも重要であるため、第5節にて述べる。 10 ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)では、「全ての人が包摂される社会が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながる。また、多様な個人の能力の発揮による労働参加率向上やイノベーションの創出が図られることを通じて、経済成長が加速することが期待される」としている。 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/#plan 11 庄司(2015)では、「ソーシャルメディアが、数多くのグループや組織を次々と生み出す土壌となり、その多様性が私たちの「複属化」を後押ししている。」としている。