(2)ソーシャルメディア利用のメリット ソーシャルメディアによって、利用者は様々なメリットを感じている。調査結果によると、我が国のソーシャルメディア利用者のうち、ソーシャルメディアを利用して良かったと思えたことが1つでもあるとしたのは73.1%である(図表4-2-2-3)。 図表4-2-2-3 ソーシャルメディアを利用して良かったこと(日本、複数回答) (出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018) ソーシャルメディアは必ずしも個人間のつながりの創出や維持のためだけに利用されているわけではない。ソーシャルメディアを利用して良かったと思えたことについては、「新しい友人ができた」「相談相手ができた」のように『@新しいつながりの創出』に関わる項目を回答した人はそれぞれ20%以下である。また、「家族や友人との結びつきが深まった」、「しばらく連絡を取っていなかった人と再び連絡を取ることができるようになった」のような『A既存のつながり強化』に関する項目の回答率もそれぞれ20%以下である。 一方、「社会や経済等に関する最新のニュースや情報を得ることができた」、「趣味や身近な地域の話題など、自分が興味のある情報を得ることができた」のような『B情報の収集』に関わる項目、あるいは「暇つぶしができた」(C暇つぶし)に対する回答の割合はそれぞれ約30%であった。これらは、ソーシャルメディアを相互交流というよりも、情報を入手して、それを消費する場として活用することにメリットを見出しているといえる。 以上から、我が国では他人とのつながりを得るためにソーシャルメディアを利用するというよりも、情報の収集や、暇つぶしの手段という受け身の利用をすることにメリットを感じる傾向にあるといえる。 この傾向は、アメリカ、イギリス、ドイツでの調査結果と比較するとより明らかになる。ソーシャルメディアを利用して良かったことを4か国で比較すると、@新しいつながり創出及びA既存のつながり強化に関する項目についてはいずれも最下位で、他国とは20%程度差があり、割合が大幅に低くなっている。一方、B情報の収集、C暇つぶしに関する項目についての回答割合は、Bについては日本は最下位であるものの3位との差は5ポイントほどであり、Cについては、ドイツに次いで2番目に高くなっている。(図表4-2-2-4)。 図表4-2-2-4 ソーシャルメディアを利用して良かったこと(国際比較) (出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018) 我が国で、ソーシャルメディア利用のメリットとして、他者とのつながりよりも、興味のある情報の収集がより認識されていることは、自分の興味のある情報のみにアクセスする利用者が多いことを示唆している。ただし、ソーシャルメディアで自分の興味のある情報のみにアクセスする場合、興味・関心を狭めることにもなりかねず、それは逆にコミュニケーションを狭めることにもなりかねないことは留意しなければならない。 自分と異なる他者とのコミュニケーションは、良いアイディアやイノベーションが生まれるきっかけとなるため、ソーシャルメディアを通じて自分と異なる他者とのつながりを得ることの重要性は今後ますます高まっていくと考えられる。