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第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
第3節 ICTの新たな潮流

2 AIに関する動向

人工知能(AI: Artificial Intelligence)は、第2章第2節で述べる汎用技術(GPT)となる可能性が指摘されている。

「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉は、1956年のいわゆるダートマス会議とよばれる研究発表会において、米国の計算機科学研究者のジョン・マッカーシーによって初めて使用された言葉であるとされている。その後、いわゆるAIは期待と失望を繰り返しつつも関連の研究が進んでいた中で、近時目覚ましい研究成果を出すようになってきたことから、再び注目を集めるようになった。

具体的には、2012年10月、カナダのトロント大学教授のジェフリー・ヒントンを中心とするチームが、画像認識ソフトウェアの大会で2位に大差をつける高い精度を示して優勝したことが、AIに対する注目を集めるきっかけの一つとなったとされている28。ヒントンのチームが使用したのは、ニューラルネットワークという仕組みである。これは、神経細胞(ニューロン)のネットワークで構成される人間の脳のように、神経細胞に相当する各ノードが層を成して接続されている情報処理のネットワークである。このネットワークに入力した情報が、中間層(あるいは隠れ層)と呼ばれるネットワーク内での処理を経て望む情報として出力されるよう、何度も処理方法の調整を行うことで学習していく。

また、2012年6月に、Googleの研究者グループ29が後に「キャットペーパー」と呼ばれる論文30を発表したことも、同じくきっかけの一つとされている。YouTubeの動画から取り出した1000万枚のネコの画像を用い、「ネコとはどのようなものか」を教えなかったにもかかわらず、ネコの画像に共通する特徴を抽出し、ネコの画像を判別できるようになったというものである。このケースにおいても、ニューラルネットワークの技術が用いられている。

更に、囲碁において、Google子会社のDeepMind社が開発したAlphaGoが2015年に初めてプロ棋士を破り、2016年には世界トップレベルのプロ棋士である韓国のイ・セドルとの五番勝負に4勝1敗で勝ち越したことは、広く衝撃を与えた。囲碁は、チェスや将棋に比べて盤面が広く、打つ手の選択肢が膨大であるため31、コンピューターが人間を超えるのは相当先の未来になると思われていたためである。AlphaGoも、やはりニューラルネットワークの技術を用いていることにより、従来のアマチュア高段者レベルであったコンピューター囲碁の水準を一気に高めることとなった。



28 これまでの大会では、誤認識率25%程度という成績で優勝していたが、ヒントン教授のチームの誤認識率は16.4%であった。

29 研究の中心となったとされるQuoc V. Leは、当時Googleのソフトウェアエンジニアであるとともに、スタンフォード大学博士課程の学生でもあった。

30 Le, Q. et al.(2012)“Building High-level Features Using Large Scale Unsupervised Learning”
https://storage.googleapis.com/pub-tools-public-publication-data/pdf/38115.pdfPDF

31 コンピューターが必要な探索量は、チェスが10の120乗、将棋が10の220乗であるのに対し、囲碁は10の360乗であるとされる。

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