総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和元年版 > データが価値を創出する例
第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
第1節 デジタル経済の特質は何か

(2)データが価値を創出する例

データによる価値の創出を行っているのは、ICT企業だけではない

データによる価値創出の例としては、GoogleやFacebookが収集したデータをターゲティング広告に活用している例や、Amazonが利用者の興味に即した商品のおすすめに活用しているといった事例が有名である。他方、当然ながらデータによる価値の創出は、これら海外の巨大プレイヤーをはじめとするデジタル・プラットフォーマーと呼ばれるICT企業のみが行っているものではない。我が国において、ICT企業以外がデータによる価値創出を行っている例をいくつか挙げておきたい。

例えば、株式会社小松製作所は、建設現場のあらゆるデータを活用して建設生産プロセス全体を最適化する「スマートコンストラクション」を推進している16。この「スマートコンストラクション」では、同社の製造・販売する建設機械に取り付けたセンサーから収集する様々な施工現場のデータのほか、ドローンにより収集した測量データ、設計図面のデータ、地質・地下埋設物のデータ等を3次元データとして構成する。これにより、正確な施工計画や、施工中のリアルタイムでの進ちょく管理が可能となるとしている。また、施工現場で事前に予測が困難な事態が起こった場合であっても、現場監督や現場作業者の会話・日報等から学習したAIが、最適な対処方法を提案するとしている。更に、施工のプロセスのみならず、調査測量や設計、維持保守といった全てのプロセスの見える化を可能とし、全体最適化を図っている点に特徴がある(図表2-1-2-3)。

図表2-1-2-3 小松製作所のスマートコンストラクション
(出典)未来投資会議資料

地方の商店においても、来客予測等の事業予測ソリューションを導入したことにより、大幅な売上高や利益の増加につなげている例がある。三重県伊勢市において土産物店や和食堂等を営む有限会社ゑびやは1912年創業の老舗商店であるが、曜日・天気予報等のデータや、画像解析AIによる来店客の性別や年齢層といったデータ、「観光予報プラットフォーム」17のオープンデータによる近隣の宿泊者数等、400項目近いデータを分析することにより、翌日の来客数を平均9割の的中率で予測するとされるシステムを開発した18。これにより、無駄な仕入れの回避や料理提供時間の大幅な短縮等を実現し、2012年からの4年間で売上げを4倍、利益率を10倍に増加させたという。また、従業員に対しても、週休2日制と通常の有給休暇とは別に、9〜15日の特別休暇を可能としたとしている。

このように、ICT企業ではない企業においても、また、地方の企業においてもデータを活用して価値の創出が行われていることは、後述するデジタル・トランスフォーメーションの進展を示すものであるといえる。



16 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai1/siryou6.pdfPDF

17 2015年度の経済産業省委託事業により構築され、2016年より観光予報プラットフォーム推進協議会が管理・運営している。

18   https://japan.cnet.com/extra/ms_ebiya_201710/35112861/ 別ウィンドウで開きます   https://www.inshokuten.com/foodist/article/4933/ 別ウィンドウで開きます   https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/03535/ 別ウィンドウで開きます

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る