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第2部 基本データと政策動向
第3節 電波政策の展開

第3節 電波政策の展開

1 電波の有効利用の推進

(1)電波制度改革に向けた取組

我が国においては、これまで、周波数をより有効に利用するための情報公開や周波数移行・再編等に資する取組の推進を図ってきたが、昨今、公共用周波数を含め、電波の更なる有効利用に資する取組の必要性が提起されている。

総務省は、こうした状況を踏まえ、また、今後の人口減少や高齢化等の社会構造の変化に対応するための電波利用の将来像やそれらを実現するための方策を明らかにすることを目的として、2017年(平成29年)11月から「電波有効利用成長戦略懇談会1」を開催した。懇談会では、公共用周波数の有効利用促進、周波数の割当て・移行制度や電波利用料制度の見直し等の電波の有効利用方策、2030年代に向けた電波利用の将来像とその実現方策等について検討し、2018年(平成30年)8月に報告書が取りまとめられた。

報告書では、ワイヤレスがインフラとなる2030年代の電波利用社会において、「Sustainability 持続可能性を向上する」、「Open Innovation 未来への成長エンジン」、「Knowledge 知識を結集する」、「Inclusion 多様な人材が社会に参画する」、「Empowerment 全ての人を力づける」の5つの基本コンセプトの実現を目標とした上で、2030年代に実現すべき7つの次世代ワイヤレスシステムと6つの利用シーンについて提言した。その上で、2020年(令和2年)の5G実現に向けて、当面の目標として、合計約2.5GHz幅程度の周波数を5G向けに確保し、既存の携帯電話用周波数やIoTで利用可能な無線LAN用周波数を含めて、2020年度(令和2年度)末までに約4GHz幅の周波数確保を目指すという短期的な帯域確保の目標が示された。また将来の周波数の帯域確保目標の見通しについて、7つの次世代ワイヤレスシステムを実現していくためには、現在の約3倍程度の周波数が必要であるとし、2040年頃までに実現が想定されるそれぞれのシステムの電波利用イメージをもとに必要周波数帯域幅及び利用周波数帯を予想すると、必要幅は約110GHz程度となるとの見通しを示した。同時に、約29GHzについて再編(共用)が必要となるとの見通しも示している。

加えて、2020年代に向けた電波有効利用方策として、「周波数割当制度の見直し」、「公共用周波数の有効利用方策」、「電波利用料制度の見直し」、「技術の進展を踏まえた電波有効利用方策」の4項目について提言を行った。これら各項目への対応等は次のとおりである。

ア 周波数割当制度の見直し

2019年(平成31年)2月に国会に提出し、2019年(令和元年)5月に成立した電波法の一部を改正する法律(以下「2019年電波法改正法」という。)では、既存周波数の利用を促進するための規定及び経済的価値を踏まえた周波数の割当手続に関する規定の整備を行うこととしている。

既存周波数の利用を促進するための規定の整備については、5G等の電気通信業務用の周波数の割当て(特定基地局の開設計画の認定)に当たり、4G基地局の整備計画等既存周波数の活用計画も含めて審査することを可能とするものである。また、既存周波数が有効活用されていない場合、5G等の開設計画の認定を取り消すことが可能となる。

経済的価値を踏まえた周波数の割当手続に関する規定の整備については、5G等の電気通信業務用の周波数の割当て(特定基地局の開設計画の認定)に当たり、従来の比較審査項目(カバー率、MVNO促進等)に、周波数の経済的価値を踏まえて申請者が申し出る周波数の評価額を追加して、総合的に審査することを可能とするものである。認定を受けた事業者は申し出た金額(特定基地局開設料)を国庫に納付することとし、特定基地局開設料の収入は、Society 5.0の実現に資する施策に充当される。

このほか、既存無線システムとの高度な周波数共用を実現するための自律的(ダイナミック)な周波数共用・干渉回避技術の開発等を実施するほか、5Gの特定基地局の開設指針(周波数の割当方針)において、MVNOに関する評価項目の配点を重くする等の措置を実施し、携帯電話事業者(MNO)によるMVNOへのネットワーク提供を促進すること等としている。

イ 公共用周波数の有効利用方策

2-2で詳述する「公共安全LTE」(PS-LTE)の導入を推進する。また、公共業務用無線局の公表項目について、業務の特殊性、個別システムの事情等にも配慮しつつ見直しを行い、2019年度(令和元年度)中に省令等の改正及びシステムの改修を行い、2020年度(令和2年度)から実施する予定である。このほか、電波の利用状況調査について、新たな評価指標等の策定、重点調査や発射状況調査を拡充する調査方法等の具体的な内容を検討中であり、2019年度(令和元年度)中に省令等を改正するとともに、集計・分析システムの改修を行い、2020年度(令和2年度)から見直し事項を反映した調査を実施する予定である。

ウ 電波利用料制度の見直し

2019年電波法改正法においては、電波利用料制度の見直しについても内容としている。

まず、電波利用料の使途として、太陽フレア等の電波伝搬の観測・分析等及び地上基幹放送等に関する耐災害性強化の支援を新規に追加している。

また、電波利用料負担の適正化を図るため、無線技術の進展に対応して電波利用料額の算定に係る周波数帯の区分を見直すとともに、広域専用電波として指定が可能な周波数帯を拡大している(これに伴い、「広域使用電波」に改称)。加えて、電波利用料算定においては、電波の普及や国民の生命の保護等の観点から、特定の無線システムに一定の軽減を行うために「特性係数」が設けられているが、携帯電話について、実態として国民に広く普及していること及び既存周波数の有効利用を促進するための新たな仕組みを設けること等を踏まえ、新たに1/2の特性係数を適用することとしている。

このほか、電波利用料が減免されている公共用無線局のうち、非効率な技術を使用していると認められるものについては、電波利用料を徴収することを可能とする。

エ 技術の進展を踏まえた電波有効利用方策

2019年電波法改正法では、我が国の技術基準に相当する技術基準(国際的な標準規格)を満たす等の一定の条件の下、技術基準適合証明等(技適)を取得しなくても、届出により、最長180日間、Wi-Fi等を用いて新サービスの実験等を行うことを可能とすることとしている。

また、IoT時代の技術基準適合性確保に向けた取組として、直径3ミリメートル以上とされている技適マークの大きさ要件を「表示を容易に識別することができるもの」に緩和するとともに、ディスプレイを持たない特定無線設備の技適マークを外部ディスプレイを用いて電磁的方法により表示することを可能とする省令改正を行い、2019年(平成31年)2月より施行されている。

このほか、2-4で詳述する空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムに係る制度整備の検討を進めているとともに、地域BWAが利用されていない地域においてBWAの自営利用を可能とする制度(自営BWA)の導入について、2018年(平成30年)12月より、情報通信審議会情報通信技術分科会陸上無線通信委員会において検討を行っており、2019年(令和元年)末を目途に答申を受け、その後制度整備を進めることとしている。



1 電波有効利用成長戦略懇談会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/dempayukoriyo/index.html別ウィンドウで開きます

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