昭和48年版 通信白書

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2 通信事業の動向

 通信事業は公益事業であり,公共的機関によって営まれている部門が多いが,良好なサービスの提供,適正な業務の運営のためには財務的な安定性が前提となることはいうまでもない。
(1)通信事業の収支状況
 経済活動の停滞が通信事業にも現れた46年度に比較して,47年度はほぼすべての業種において収支状況はおおむね良好であった。
 郵便事業は,47年2月の料金改定により,46年度の赤字から47年度は黒字へと転じたが,支出増も大きく黒字幅はわずかであった。
 電電公社においては,46年度は公社発足以来初めて赤字を生じたが,47年度は95億円の黒字となった。しかし,電話1台当たりの収入は低下しており,総収入では当初見込みを113億円下回った。
 国際電電においては,利益は対前年度32%増となり,46年度の伸び率7%を大幅に上回った。
 放送事業においては,NHKは収入を視聴者からの放送受信料によっているため収入面では経済動向からの影響は少ないが,47年度は支出が収入を上回った。民間放送は主として広告収入によっているが,46年は新聞,雑誌などの広告を含めた総広告費の伸び率が対前年比4.1%増にすぎなかったのに対し,47年は11.6%の増加(以上(株)電通調べ)となっており,これに伴い47年度の民間放送事業の収入増加率はラジオで14.9%,テレビで15.7%と前年度を上回り,営業利益も民間放送全体で41%増となった。
(2) 通信事業の財務状況
 通信事業の特徴として総資産に占める固定資産の比率が高いことがあげられるが,これは全国的な規模の設備を有している電電公社の場合に特に顕著であり,固定資産の構成比率が87.8%となっている。従業員1人当たりの固定資産額を示す労働装備率も1,152万円と高くなっている。固定比率も271.8と高くなっているが,一方固定負債が大きいため,固定資産対長期資本比率は91.5におさまっている。流動比率も195.0と比較的高い。また,設備投資の増大に伴って他人資本に対する依存も高くなりつつあり,資本費用支出が増加している。
 しかし,放送事業では番組制作面の比重が高く,固定資産の構成比は他産業よりやや高い程度であり,労働装備率も同様である。設備投資の伸び率は他産業に比べ低い水準にあり,そのため固定比率は低くなっている。流動比率,負債比率などもほぼ適正な水準にある。
 また,郵便事業において,労働装備率が低いことが注目されるが,これは人力依存度の高い事業の性格によるほか,局舎借入れ,輸送の外部委託等の運営形態をとっていることによるものである。
(3) 通信事業の設備投資状況
 47年度の通信事業の設備投資額は,第1-2-7表のとおり1兆1,800億円で対前年度増加率20.0%であった。
 郵便事業では,都市近郊の人口増加などに対処するための局舎の建築,局内作業の機械化が進みつつあり,郵便事業を経理する郵政事業特別会計の建設投資額は対前年度比28.3%増の408億円に達した。
 電電公社の建設投資額は対前年度比19.9%増の1兆705億円であり,これは通信事業全体の91%を占めている。電電公社では,積滞電話の全国的な解消のための投資とともに,プッシュホン,データ通信などの新しい通信サービスのための投資も行っている。
 国際電電では,新局舎の建設のため,対前年度比98.8%の大幅増となった。
 NHKでは,放送施設の建設などのため,投資額は対前年度比4.1%増の277億円,また民間放送でも5.5%増の251億円となった。
 これらの設備投資等のための資金調達状況をみると,47年度は次のとおりである。
 郵便事業においては,前述の郵政事業特別会計の建設投資額408億円のうち,195億円が財政投融資(簡保資金)からの借入金である。
 電電公社においては,資本勘定の規模は1兆2,997億円であり,このうち7,383億円が加入者債券,政府保証債券等の外部資金である。内部資金の比率は43.2%であり,前年度の比率47.2%をかなり下回ることとなった。資金調達上債券の比重は高く,発行残高は47年度末で2兆8,239億円に達しており,我が国の公社債全体の発行残高の8.0%(外貨債を除く。)を占めている。
 国際電電では増資が行われ,設備投資は内部資金で賄われた。
 NHKにおいては,資本収入の規模は351億円である。内部資金は48.7%であり,その大部分は減価償却引当金である。外部資金としては借入金が180億円ある。


第1-2-4表 通信サーピスの生産額


第1-2-5表 通信事業の収支状況


第1-2-6表 通信事業の財務比率


第1-2-7表 通信事業の設備投資額

 

 

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