昭和48年版 通信白書

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第2章 情報化社会と通信

第1節 情報化社会の基盤整備

 現代社会と情報は深いかかわりあいをもっている。現代社会における情報への依存は,単に特定個人,特定の事柄だけではなく,すべての人々の生活にみられるものである。我々の社会は情報を中心にして営まれようとしている。最近,情報化社会という言葉が多くの人々に用いられるのは,現代の我々の生活の身近なところに情報の価値や情報への依存が認められるからであり,これに伴って情報化社会の基盤をなす通信への期待も高まっている。しかも,我が国の状況は,今後,このような傾向をますます強めていくであろう。すなわち,
[1] 国民一般の所得水準が向上し,余暇が増大するのに伴い,個人の欲求や関心が多様化し,これを実現するための多種多様な情報に対する要求が強まる。また,生活利便への絶えまない要求は,通信メディアに対しても各種の要求を生むこととなる。更に,国民福祉,新しいコミュニティ対策に関しても通信への期待が大きくなっている。
[2] 我が国の産業をめぐる環境は極めて厳しく,労働力不足や企業経営の効率化,高度化の要請は,企業内部の情報化を促している。また,公害,資源の枯渇,日本商品に対する海外市場環境の悪化等が問題とされるなかで,高学歴労働者の増大,技術水準の著しい上昇を支えにして,産業構造を知識集約型に次第に転換していくことが期待されている。これに伴いデータ通信,画像通信など通信の高度な活用が重要性を帯びてきている。
[3] 資源の枯渇が国際的にさけばれており,資源の外国依存度の高い我が国においては,その対応が緊急の課題となっている。資源消費の少ない産業を重視するとともに,資源消費の節約を図るための施策が必要である。このため,人的物的流通を情報の流通により効率化するなど情報化の促進,通信の活用について検討が必要となっている。
[4] 過密過疎の解消,国土の効率的利用など国土空間の有機的利用がさけばれるのに伴い,全国的に情報の円滑な流通を図ることが必要となっている。これにより広域にわたる通信ネットワークは新たな社会的意義を帯びてきている。
 情報化への志向の強い社会的条件を背景として通信網,通信システム,通信メディアの開発,普及,活用への要請が強まってきている。しかしながら,通信への期待,情報への依存度が高くなるにつれて,情報化に伴う諸弊害の発生にも配慮を加える必要がある。情報量の増大に関連して,情報検索の困難性が生じるとともに,総体としての量の増大にもかかわらず,必要な情報が不足するといった量のアンバランス,あるいは,情報の質についても低俗情報,虚報・誤報など,これまでも多くの指摘がなされてきた。また,今後,飛躍的な増加が期待されているデータ通信についても,プライバシーの侵害,企業機密の漏えいや情報の集中に伴う管理社会化が指摘されている。これまでの経済的豊かさの追求が公害を生みだしていることにかんがみ,情報化の推進に当たっては,他人の情報の漏えい・窃用・改ざん・損壊の防止,プライバシーの保護,情報処理業者・情報提供業者による誤処理・誤情報提供の防止及びこれによる損害の救済,ソフトウェアに関する権利の保護などの諸問題に対し,慎重な配慮が加えられなければならない。
 情報化社会の基盤整備に当たっては,このような基本的立場にたってこれを進めることが必要である。

 

 

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