昭和48年版 通信白書

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1 教育と通信

 放送は多くの人びとに対し同時に情報を提供し,だれもが,どこにいても手軽にこれを視聴し利用できる点に特色がある。
 このため,放送を教育に利用すれば広く国民が教育の機会に恵まれ,しかも豊かな教材を活用し専門の教師による教育,指導をそのままのかたちで受けることが可能である。放送のもつこのような教育機能に着目し,我が国においてはラジオ放送開始後間もないころから,放送の教育への利用が重視され,学校教育や社会教育におけるその利用のための努力が重ねられてきた。
昭和8年NHKの大阪放送局のラジオ放送によって学校放送が開始され,10年には全国中継による学校放送が行われるに至った。NHKの学校放送の利用状況は,第2-2-2表に示すとおりであって,放送が学校教育に大きな役割を果たしていることがうかがわれる。
 通信の教育への利用は,単に教室向けの学校放送にとどまらない。教育の機会均等を確保するための通信教育における放送の活用,社会教育,生涯教育等を充実させるための利用など,通信が教育を通じて国民福祉に寄与するところは極めて大きい。
(1)教育の機会均等への寄与
 教育の機会を広く国民に提供するため,通信教育が利用されている。通信教育は郵便を活用して,国民に教育の場を提供しようとするものであって,郵政省においては,郵便料金を低料にし、その充実に配慮してきた。近時,この通信教育に放送を活用することが行われており,大学通信教育においても,放送の利用がとり入れられている。
 NHKが47年5月日本放送協会学園高等学校の生徒を対象に実施した調査によると,同校への入学の動機として,高校ぐらいは出ないと困る(肩書き志向)37.4%,社会人としての教養を高めたい(教養志向)27.4%,大学までいって勉強したいため(大学志向)10.4%となっている。放送の教育への利用は,このような多様な動機をもって,教育を受けることを希望する国民に対し,広く教育の場を提供している。
 大学教育を受ける機会を広く国民に提供するため,放送大学(仮称)の設立が郵政省及び文部省において検討されているが,放送大学誕生の暁には,放送の教育への利用について,更に新しい分野を加えることとなる。
(2)生涯教育への寄与
 現代社会においては,急速な技術革新,社会の発展に伴い,職業上の新しい技術や知識の不断の修得が必要になっている。また,余暇の増大は生きがい意識を満足させるための多分野にわたる教育,教養への要求をもたらしている。NHKが47年1月千葉県市川市の成人を対象に行った調査によると,英会話,毛筆,料理,物価問題,住宅問題など151の学習対象項目のうち,少なくとも1項目でも学習したいとする者が89%に及び,多くの成人が何らかのテーマについて学習意欲をもっていることがうかがえる。NHKが48年6月に行った調査によると,7歳以上の国民のNHKテレビの視聴率は,教養番組では最高14.3%,教育番組では最高9.9%となっており,視聴率1%はほぼ94万人に相当することを考えると,国民の知的欲求の充足に果たしている放送の役割の大きいことがうかがわれる。
 しかしながら,市川市における上記調査において10%以上の人が希望している学習項目は93項目にわたっており,成人の学習欲求は極めて多彩なものがある。今後これらの成人の多彩な学習欲求にどのように対処していくか工夫を要するところであろう。
(3)地域における学校教育等への寄与
 放送は教育の向上に大きな成果をあげてきているが,一面,放送はそのサービス区域が広範にわたるため地域的な教育への利用には不便な点のあることは否めない。これを救済する方法として館山市その他においてCCISの利用が試みられている。CCISは同軸ケーブルの多容量のチャンネルを活用して,同時に多種類の情報を伝送し得ること,双方向通信によって学習者が対話の形で学習に参加し得ること,これまでの優れたテレビジョン放送番組を再送信して利用できること,地域的な番組の伝送に適していること等の利点があり,これら利点を活用した地域的な学校教育及び社会教育への利用について今後の推移が注目される。
 通信の教育への利用は,郵便,放送にとどまらず,CCIS及びデータ通信(CAI-Computer Assisted Instruction)による多彩な試みがあり,今後通信の教育への利用は,ますます拡大されていくことになろう。

第2-2-2表 ラジオ及びテレビによる学校放送の利用校割合

 

 

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