昭和48年版 通信白書

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3 事業経営状況

(1) 郵便料金
 郵便料金はどのような原則で決められるべきであろうか。
 46年7月の郵便法改正により「郵便事業の能率的な経営の下における適正な費用を償い,その健全な運営を図ることができるに足りる収入を確保するものでなければならない。」(法第3条)という規定が新設され,郵便に関する料金決定の原則が明確にされた。
 また,個々の郵便料金については,第一種郵便物及び第二種郵便物の料金は,国がその送達を独占している信書が含まれているので郵便法で定めているが,その送達を独占としない第三種郵便物,第四種郵便物及び小包郵便物の料金は,郵政大臣が郵政審議会に諮問した上で省令で定めることになっている。
 なお,現在の郵便料金をみると,第三種郵便物及び第四種郵便物は第一種郵便物及び第二種郵便物に比較して大幅に割安になっている。これらは郵便制度が創設された明治時代に,文化の普及,福祉の向上,農業の振興などのために政策的に設けられ現在に至っているものであるが,このような種類と割安料金については種々議論のあるところであって,45年12月の郵政審議会の答申においても,「第三種郵便物の料金については,その必要とする適正な原価を償うべきだという議論もある。しかしながら,従来の経緯,社会的影響等を考慮すれば,急激にこれを実現することは困難である。」と述べており,更に,将来検討すべき課題として,「割安の料金を設定しなければならない場合においても一定の限度にとどめるべきであって,例えばそれぞれの役務の提供に直接要する費用はこれを償うものとすることが考えられる。」という指摘がなされている。
(2) 郵便事業の財政
 最近における郵便事業の収支状況は,第3-1-17表のとおりである。
 郵便事業は人力依存の度合が極めて高く,業務運営に必要な経費のなかで人件費関係の経費がほとんどを占めている。
 近年人件費は,毎年十数パーセント上昇を続けており,このことが事業財政を圧迫する最大の要因となっている。第3-1-18図をみると30〜47年度の郵便費の年平均増加率は13.7%と高率で,郵便物数の増加に基づく収入の増加を上回っている。
 もちろん,こうした実情にかんがみ事務を機械化,合理化するなど省カ化のための各種の施策を講じて,郵便物数の増加に伴う人員の増加を極力抑制してきているが,郵便作業の性質上その効果にも限界があり,人件費の増加を企業努力のみで吸収することは困難な状況にある。
 そのため36年度,41年度及び46年度に郵便料金の値上げを行わざるを得ない事態に至った。46年度の料金改正は,46年4月に小包郵便物,7月に第三種郵便物及び第四種郵便物の料金並びに特殊取扱いの料金,47年2月に第一種郵便物及び第二種郵便物の料金をそれぞれ引き上げた。この一連の料金改定は46〜48年度の3か年間の収支を賄うことを前提にその改正幅が定められた。
 この措置により,事業収支も46,47年度はほぼ計画どおりに推移したものの人件費の大幅な上昇などにより,48年度は133億円の赤字予算を編成せざるを得ない事態に立ち至り,これについては持越現金を充当することとして
いるが,49年度以降の財政の見通しは極めて憂慮すべき状態となっている。
(3) 郵便料金と物価,家計
 総理府統計局が実施している「家計調査報告」によれば,家計に占める郵便支出の割合は,47年度における年間消費支出額118万6,518円中1,645円で0.14%にすぎない。この割合は過去10年間についてみても0.12%〜0.15%で大きな変化はない。
 消費者物価に及ぼす影響についても,この家計調査に基づいて定められている消費者物価指数算定に当たっての郵便料のウェイトは総合で10,000のうちの21になっている。

第3-1-17表 郵便事業の収支状況

第3-1-18図 年度別郵便物数,郵便業務収入及び郵便業務費の推移

第3-1-19表 郵政事業の人件費上昇率及び給与ベースの推移

 

 

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