昭和48年版 通信白書

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2 国際公衆電気通信サービス

(1) 国際電報
ア.利用状況
 我が国に発着する国際電報は,47年度の取扱数が562万通で,前年度の554万通に対して1.3%の増加を示している。国際電報の取扱数は,44年度までは逐年順調に伸びてきたが,45年度以降は国際加入電信の自動化実施(44年8月)などの影響を受け減少又は停滞ぎみの傾向にある(第3-2-26図参照)。47年度における国際電報の利用構成は,第3-2-29図に示すとおりであり,ほとんどが企業活動のために利用され,一般の私用通信はごくわずかである。
イ.取扱地域,利用制度,料金
 世界中至るところの国又は地域との間に国際電報が取り扱われており,我が国としては,公衆通信が取り扱われているところであればどのような極地との間にも国際電報が利用できるようにしている。取扱地域のうち,特に取扱量の多い対地とは直通回線を設定して国際電報を取り扱っているが,その他のところとは第三国中継によっている(第3-2-27表及び第3-2-28表参照)。
 国際電報の利用制度は,国際的には国際電気通信条約,同条約附属電信規則等により規律されており,国内的には公衆電気通信法等を根拠として定められている。国際電報の種類は,上記電信規則により通常電報と書信電報に大別され,ほかに付加サービスとして至急,返信料前払等の特別取扱いがある。
 国際電報料金は,相手国と個別に協定した金フラン単位の料率に基づき対地別に定められるところから料金表が複雑になっているが,47年8月に実施された米本土との間の国際電報料金改定は,それまで米本土内であっても地域によって料金が異なっていたのを単一化し,均一料金としたものである。
(2) 国際加入電信
ア.利用状況
 47年度中に我が国に発着した国際加入電信の合計は802万度で,前年度の589万度に対して36.1%の増加を示している。このサービスは,国際電電の国際加入電信加入者だけでなく,電電公社加入電信加入者で国際利用登録をした者も利用することができる。そのほか,国際電電の各営業所に公衆用国際加入電信設備(テレックスブース)があって,一般の利用に供されている。47年度末における国際電電の国際加入電信加入者数は3,542,電電公社加入電信加入者が国際利用登録を行っている者の数は6,749である。
イ.取扱地域,利用制度,料金
 我が国の国際加入電信サービスは,31年9月,米国との間に開始されて以来取扱地域が急速に拡張され,現在では世界中のほとんどの地域との間にこのサービスが取り扱われている。47年度中に新たに国際加入電信の取扱いを開始した対地としては,中国,モンゴル,イラク,ラオス,モザンビク等がある。また,44年8月以降,国際加入電信の自動化が進められた結果,47年度末における自動化率は92.9%に達している。47年度中に自動化を導入した対地としては,台湾,シンガポール,ブラジル,アルゼンティン等がある。
 国際加入電信の利用制度は,国際電報と同様に,国際電気通信条約附属電信規則,公衆電気通信法等を根拠として定められている。料金については,我が国としては距離に関係なく,また,直通,中継を区別せずに,自動接続のものについては1分までごとに1,080円,手動接続のものについては最初の3分まで3,240円,超過1分までごとに1,080円としている。
(3) 国際電話
ア.利用状況
 国際化が進展するなかにあって国際通信施設の近代化,サービスの向上等を反映して,我が国の国際電話の需要は急速に伸長している。47年度中に我が国に発着した国際電話の合計は415万度で,前年度の286万度に対して45.1%の増加を示している。最近の国際電話の利用構成をみると,第3-2-32図に示すとおりであり,個人の利用が34%を占め,他の国際通信がほとんど企業により利用されているなかで大きな特色を示している。
イ.取扱地域,利用制度,料金
 日本全国どこでも電電公社の一般加入電話を介して国際電話を利用することができる。取扱地域は,世界中ほとんどの地域に及んでおり,我が国との間に国際電話を取り扱っていない地域として残っているのは,47年度末においてわずかに北ヴィエトナムとアフリカのごく一部の地域にすぎない。
 国際電話の利用制度は,国際電気通信条約附属電話規則,公衆電気通信法等を根拠として定められている。我が国で取り扱う国際電話には次のような種類がある。
(ア) 指名通話(パーソナル・コール)
 対話者を指定して申し込む通話で,対話者が電話に出るまでは料金がかからない。
(イ) 番号通話(ステーション・コール)
 国内の市外通話と同様に双方の電話番号だけを指定して申し込む通話で,料金は指名通話と比べ割安となっている。
(ウ) 料金対話者払通話(コレクト・コール)対話者が通話料金を支払うことを希望する旨を告げて申し込む通話で,対話者が承諾したときは通話を接続する。
(エ) 多数通話者通話(会議通話)
 外国の異なる地点の対話者を同時に呼び出して数人の通話者が会議式に行う通話で,このサービスの取扱地域は現在のところ米本土及びカナダに限られている。
 国際電話の料金は,対地別に定められており,取扱地域によっては日曜割引料金を設けているところがある。
 なお,韓国との国際電話については,日曜の通話のほか平日の夜間通話にも割引料金を適用している。
 48年3月30日から国際電話自動化サービスが開始されるにあたって,それまですべての国際電話について最初の3分間までの料金を基本とし,その後は超過1分までごとの料金を加算することとしていたのを,加入者ダイヤル発信のものについては最初から1分までごとの料金とすることになった。
ウ. 国際電話の自動化
 48年3月30日から東京,名古屋及び大阪のそれぞれの一部加入者(電電公社の電子交換機に収容されている電話の加入者に限る。)について,米本土,ハワイ,西独及びスイスに対する加入者ダイヤル発信ができるようになった。
 なお,外国から日本あての加入者ダイヤル発信は,米本土(ニューヨークの一部),西独,ベルギー,スイス等においてそれ以前から実施されている。
(4) 国際専用サービス
 国際電気通信回線を特定の利用者に賃貸するサービスは27年に開始されたが,同サービスの利用者は当初は設備の都合上,政府機関,新聞・通信社,放送事業者及び航空会社に限られていた。その後,設備の拡充等に伴い37年10月からは一般商社,銀行等に対しても同サービスが提供されることとなった。
 国際専用サービスとして提供される国際電気通信回線の種類は,1/4速度,1/2速度,標準速度(50ボー),75ボー,100ボー,200ボー及び1,200ボーの電信回線並びに音声級回線である。音声級回線は,電話,ファクシミリ,写真電送,テレプリンタ等を交互又は同時に組み合わせて使用するため分割することが認められている。47年度末の賃貸回線数の合計は,音声級回線76,電信回線342である。
(5) 国際テレビジョン伝送
 海外とのテレビ伝送は,衛星通信の出現によってはじめて商用サービスが可能となったものであって,我が国では41年12月インテルサットの太平洋衛星経由による日米間の国際テレビ伝送サービスが開始された。
 その後,インド洋衛星の運用開始(44年8月)や世界各地に新しい地球局が次々に建設されたことに伴い,第3-2-34表のとおり取扱地域が拡張されている。
 国際テレビ伝送の取扱件数は11年度30,42年度97,43年度157,44年度313,45年度210,46年度322,47年度251となっている。47年度中に取り扱った国際テレビ伝送のうち主なものは,オリンピック・ミュンヘン大会,日米首脳ホノルル会談,田中総理訪中等の関係である。47年9月の田中総理訪中に際しては,国内放送事業者から日中間テレビ伝送の実施方について要望があったことにこたえ,我が国の通信関係者が訪中して中国側と協議した結果,北京に日本の可搬型地球局(アンテナ直径10m)を空輸,設置し,日中両国の技術者が協力して運用することにより総理訪中時の実況を太平洋衛星経由で日本に生中継した。日中間の衛星通信は,開始した当初には特別行事のための臨時取扱いとされていたが,日本から持ち込まれた北京地球局を中国側が買い取ったことに伴い常設化された。
(6) その他のサービス
 データ通信に属さない公衆電気通信サービスであって国際電電の提供に係るものとしては,上記以外に次のようなものがある。
[1] 国際写真電報・・・・・・ニュース写真,図面等の写真電送
[2] 国際無線電報・・・・・・外国の沿岸無線局を経由して日本船舶に発着する電報又は日本の無線局を経由して外国船舶に発着する電報
[3] 国際航空業務報・・・・・・航空会社が航空機の運航業務(乗客名簿,積荷情報等)について海外の事務所との間に交換する電報
[4] 国際放送電報・・・・・・通信社等の依頼により電信でニュース等を外国に放送し,又は受信するもの
[5] 国際ファクシミリ電報・・・・・・文書,図面等をファクシミリ電送し,受信記録紙を受信人に配達又は郵送するもの
[6] 国際デーテル・・・・・・日本の加入者と外国の加入者との間のデータ・コールを随時交換,接続するもの(ファクシミリ,写真電送等も可能)
[7] 国際無線電話通話・・・・・・我が国又は外国の沿岸無線局を経由して大洋を航海中の外国船舶又は日本船舶に発着する短波(HF)による通話
[8] 国際航空無線電話通話・・・・・・東京,大阪及び那覇の各空港に離着陸する外国航空機とその航空会社の空港事務所との間の超短波(<5>HF)による通話
[9] 音声放送伝送・・・・・・放送事業者のニュース,スポーツ番組の音声級回線による送受
 このうち,国際ファクシミリ電報は47年12月に韓国との間に試行サービスとして取扱いが開始されたもので,国際サービスとしては日韓間のものが唯一であり,アルファベット以外の文字を母国語とする国にとっては将来有力な国際通信手段となることが期待されている。

第3-2-26図 国際電報・国際加入電信・国際電話取扱数の推移

第3-2-27表 対外直通回線の現況(47年度末)

第3-2-28表 対外直通回線設定地域(47年度末現在)

第3-2-29図 国際電報の利用構成

第3-2-30表 国際電報料金例(通常電報1語当たり料金)(47年度末現在)

第3-2-31図 国際加入電信の利用構成

第3-2-32図 国際電話の利用構成

第3-2-33表 国際電話料金例(最初の3分間まで)(47年度末現在)

第3-2-34表 国際テレビ伝送の取扱地域

 

 

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