昭和48年版 通信白書

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6 鉄道事業用

(1) 概   況
 鉄道事業においては,列車の安全運転と定時性の確保が最も重要な任務である。このため,線路,列車等の事故による運転ダイヤが乱れた場合の復旧及び誘発事故防止対策等のためには運転,電力,駅等のすべての機関が集中的に活動し,緊急に措置する必要があるので,各機関相互間の自営の通信回線を有している。これらの回線は一般には有線による直通回線であり,電話,テレタイプ,データ伝送,ファクシミリ,テレメータ等の各種端末機器が総計26万1,421台,線路こう長で約164万3,500kmに及んでいる。
 企業体別にみると国鉄(端末機器22万4,530台,線路こう長約163万km)が群を抜き,以下東武鉄道(端末機器4,844台),近畿日本鉄道(同3,826台),名古屋鉄道(同2,734台),南海電鉄(同2,535台)の順となっている(47年12月末現在)。
 国鉄及び大手私鉄においては、回線数が極めて多くなるため,通信効率の向上と経済性の観点から特急列車停車駅等の主要駅,主要変電所等を中心とする局地的有線回線網を構成し,これを運転指令所,電力指令所等の中央機関に集中しているものが多い。この局地集中機関と中央機関との回線は回線数が多く,機能上極めて重要であって,瞬断が許されないため多重無線回線とし,また,局地有線回線が切断した場合にも通信の疎通を確保するため局地有線回線網相互間の接続によるう回ルートの設定が可能なようになっている。
 これらの回線は,運転指令及び電力指令についてはすべて直通回線とし,緊急通信を確保する対策が講じられているほか,旅客に対する列車運行状況の周知,特に最近では乗車券,座席の予約販売に利用されている。
 通信方式は電話が主であるが,運転指令,電力指令においては,その正確度が要求されるので指令書のファクシミリ伝送,座席予約等電子計算機による情報処理のためのデータ伝送が併用されている。また,最近における列車の過密化,高速化に伴い,運転指令においても信号機及び転てつ機の操作の集中化,自動化と運転指令者から運転者に対して直接指令する列車無線の採用及び列車のプログラム運転等が実施されつつあり,また電力系統の集中管理及びこれに伴う変電所の無人化が逐次進行しているので,電子計算機による情報処理及びこれに基づく制御等のためのデータ通信が増大し,通信回線の重要度が高まるとともに回線信頼度の向上が要求され,無線化区間が増大する傾向にある。
(2) 現状と動向
ア.日本国有鉄道
 国鉄では1日,約2万6,100本の列車の運行,ヤードにおける貨車の分解,列車の組成,旅客の要望に対応した座席予約システム,貨物輸送に関するあらゆる情報を処理するシステム等に無線が利用されており,その主なものは次のとおりである。
 [1] 本   社-鉄道管理局・・・・・・7.5GHz帯(固定系)
 [2] 鉄道管理局-現場・・・・・・60MHz帯(固定系),400MHz帯(固定系,移動系),2GHz帯(固定系)
   現   場-現場・・・・・・400MHz帯(移動系)
 [3] 新幹線列車無線・・・・・・400MHz帯(移動系)
 [4] 乗務員無線・・・・・・400MHz帯(移動系)
 [5] 災害用無線送電線保守用無線・・・・・・150MHz帯(移動系)
 [6] ヤード作業用無線・・・・・・400MHz,150MHz帯(移動系)
 これらの無線回線は,国鉄の情報処理の進展と設備の近代化,合理化等によってますますその信頼性の向上と規模の拡大,質的向上の要請が強くなっている。
 特にデータ伝送回線網の拡充強化と制御通信網の拡充は緊急の問題として進展していくものとみられる。
 47年度には,山陽新幹線の運転に不可欠となる電話,データ,制御用回線を構成するため,マイクロ回線の建設を行うとともに,必要な列車無線基地局の建設が進められたが,今後引き続き東北,上越等の全国新幹線網の整備に伴い,これら無線系の増強整備が行われていく計画である。
 一方,在来線では,45年度から使用を始めた乗務員無線は現在ほとんどの線区で使用され,47年度までに約2万台に達している。乗務員無線は,列車の運転士車掌間の連絡及び列車ともより駅との間の緊急連絡に使用され列車の運行,保安確保に非常な効果をあげつつある。
 去る47年11月に発生した北陸トンネル内の列車火災事故では,機関士と車掌間の連絡や,救援列車と駅との間の連絡などに可能な限り有効に活用され効果をあげたが,遺憾ながらトンネル内の列車と駅との連絡には使用できなかったため,今後はこの事故にかんがみ,トンネル内でも駅と列車間の連絡ができるようトンネル対策が進められている。
イ.私   鉄
 国鉄とともに我が国の陸上輸送の主役を果たしている私鉄では,増大する輸送量に対処するため,列車本数の増加,列車のスピードアップに力を入れるとともに,その使命である旅客の安全輸送を確保するために,踏切りの改善,CTC,ATCの導入をはじめ,事故発生時における運転指令と乗務員との間の緊急連絡のための列車無線,又は列車事故,踏切事故発生の際における二重事故を避けるために対向列車,後続列車に警報を送るための防護無線等が逐次整備されている。その他,保線作業の能率化のための作業用無線も利用され,更に構内における列車入れ替え作業のためのヤード無線も一部で採用されている。
 また,保線作業上の安全確保のための列車接近警報無線を採用している私鉄もある。
 更に一部の私鉄では経営の近代化,合理化のため,電子計算機を導入し信号設備,変電所等の自動化を進めようとしており,これに必要な手段として通信回線の拡充整備を図っている。
 このように主要幹線回線であるマイクロ回線の設置,運転指令と走行中の列車乗務員との間の連絡用の列車無線の整備等が,今後急速に行われるとみられる。
 なお,主な私鉄における鉄道用無線利用状況は,第3-3-14表のとおりである。

第3-3-14表 私鉄における鉄道用無線利用状況(47年度末現在)

 

 

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