昭和48年版 通信白書

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11 海上運送事業用

 船舶無線は明治41年から実用に供され,船舶航行の安全とともに海運事業の合理的運営に寄与してきた。当初船舶側及び陸上側の無線施設はともに国(逓信省)が公衆通信の取扱機関として設置したものであったが,大正4年無線電信法の施行によって船舶側の無線施設については国以外の者による設置が許され,更に昭和25年電波法の施行により電波の利用が広く一般に開放され,陸上側の施設についても自営のみちが開かれた。
(1) 外航海運用通信
 我が国海運は第2次世界大戦で壊滅的打撃を受けたが,その後における経済の驚異的な復興により世界第2の海運国となり,戦前をしのぐ船舶を保有するところとなった。これら外航船舶のうち大型船舶は,中波電信,中短波電話,短波電信,短波電話の周波数を使用した大電力の無線設備,世界の主要港湾において使用されている国際海上VHF無線電話設備のほかレーダ,無線方位測定機,ロラン受信機等の設備を備え,航行の安全及び貨物の輸送,手配等に関する通信を内外の海岸局と行うほか,船舶向けに行われる気象,海況,流行病その他航行の安全に必要な情報の放送を受信している。これら船舶における事業運営その他乗組員のための通信はすべて公衆通信によって行われるが,近時船舶の増加に伴いその通信が混雑してきたので,この円滑化を図るため新技術の導入による海上通信の自動化が検討されており.更に海事衛星の利用による通信の混雑緩和,高品質化が世界的規模で研究されている。
(2) 内航海運用通信
 日本周辺海域を航行する小型内航船舶については,昭和30年代の初期までは無線設備を設置するものが極めて少なかったが,これら船舶の海難事故多発の状況にかんがみ,郵政省は中小海運業者が容易に利用できる中短波無線電話の設置のみちを開き,これら海運業者を構成員とする団体を免許人とする専用海岸局(内航海岸局)の設置を認めた。また,44年10月船舶安全法の一部改正法の施行により,沿海区域を航行する貨物船等に無線設備の設置が義務づけられ,47年度末現在これら船舶局のうち500局は中短波無線電話を,2,826局はVHF無線電話(国際VHF)を設置して,有事の際海上保安庁海岸局に救助を求めるなど航行の安全に備えている。
 これら船舶局のうちVHF無線電話設備を備えるものは,同設備に組み込まれている公衆通信チャンネル(沿岸無線電話)によって陸上の加入電話との間に随時通信ができるので,これによって事業運営のための通信を行っている。また,中短波無線電話を設置する船舶は,全国12か所に開設されている内航用海岸局を利用して事業運営のための通信を行っているが,上記のような陸上の加入電話と接続する通話業務のみちが開かれていないため,最近はVHF無線電話に移行する傾向にある。近時内航船舶の大型化,高速化,フェリー化が進められているが,これら船舶の運航を能率的に行う目的で,専用の海岸局の開設を希望するものが多くなり,47年度には15局が開設され,それらの数は145局に達した。以上のほか,海運事業に使用される無線局としては,船舶にレーダのみを設置して航行の安全を図る無線航行移動局,港内のみを航行する船舶と陸地間を結ぶための陸上移動業務の無線局などがある。

 

 

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