13 漁業用：昭和48年版通信白書

　明治45年，農林省漁業指導船に初めて無線局を設置したことによって始められた漁業における無線通信の利用は，これが遭難救助に役立ったこともあって漸増し，昭和16年には1，109局に達した。
　その後これらの無線局は第2次世界大戦の打撃によって一時激減したが，戦後漁業の復興とともに年々増加し，47年度末には3万7，661局に達した。漁業用船舶局の普及状況は第3-3-18表のとおりである。
　漁業通信は漁船の操業形態によってその使用電波が異なるが，沿岸，沖合漁業はＶＨＦ又は中短波帯，遠洋漁業は短波帯が主に使用され，全国漁業基地に設置された432局の漁業用海岸局を中心としてそれぞれの通信系を構成している。
　また，これらの漁業用海岸局のうちには2，091ｋＨzの遭難信号自動受信機又は27，524ｋＨzによる注意信号自動受信機をそなえて，漁船の安全確保のための聴守を行なっているものもある。
　漁船の船舶局が使用する電波は中短波帯102波，短波帯286波に達しているがなお不足の傾向にある。47年度においても，いかつり漁業の漁船の船舶局が使用することのできる周波数1波の割当てを行った。また，周波数の効率的使用並びに電波聴守の改善を図るため，これらの船舶局に選択呼出装置の使用が認められた。
（1）沿岸漁業及び沖合漁業用通信
　沿岸漁業の漁船，特に10トン未満の漁船の電波利用のため，昭和38年から27ＭＨz帯1Ｗ・ＤＳＢによる電波の使用が認められた。
　1Ｗ・ＤＳＢの設備は比較的簡便であること，及びこの設備の対象となる10トン未満の漁船が我が国の海水動力漁船全体の90％を占めているところから，その船舶局数も2万4，018局で全漁業用船舶局3万7，661局の約64％を占めている。
　これらの漁船相互間の船間通信は，漁海況の交換，投網揚網のさいの連絡が主で，同一漁場に多数の漁船が集まる入合い操業の場合は，この船間通信が非常に有効となっている。漁船と漁業用海岸局の陸船間通信は，漁業用海岸局が所属漁船との間に気象，漁海況，操業上の注意及び入港時間等の通報の交換を行うが，この通報によって港における水揚準備や漁船の安全操業に大きな役割を果たしている。
　沖合底びき網漁業，大・中型まき網漁業，近海かつお・まぐろ漁業，中型さけ・ます流し網漁業，同はえなわ漁業等のいわゆる沖合漁業に従事する漁船の船舶局は，中短波帯の電信電話あるいは短波帯の電話によって漁業通信を行っている。中短波，短波の電波を使用する漁船の船舶局は，戦後漁業の発展とともに上昇し，昭和28年に3，511局であったものが47年には1万879局に達し，実に3倍の増加を示し，その普及率においても10トン以上100トン未満の海水動力漁船1万4，767隻のうち，1万1，588隻が無線設備を装備しており普及率は78.5％となっている。
（2）　遠洋漁業用通信
　我が国の遠洋漁業は，その出漁海域が太平洋全域，インド洋及び大西洋の世界全海域に及び，遠洋かつお・まぐろ漁業，遠洋底びき網漁業等に従事する漁船は，いずれも操業期間が長期にわたるため，無線通信特に陸船間通信が極めて重要なものとなっている。
　これらの船舶局が使用する電波は主として短波帯であるが，短波周波数は世界的に使用されている関係上混信が多いこと，及び我が国海岸局との通信は伝搬の特性上，地域によっては通信可能の時間が極めて短い等のため，必要通信の疎通に困難をきたすことが多い。
　47年度末現在，遠洋漁業の漁船の船舶局を通信の相手方としている漁業用海岸局（12ＭＨz以上の電波を有するもの。）は63局で，27ＭＨz1Ｗ・ＤＳＢの小型漁船を通信の相手方とする漁業用海岸局を除いたその他の海岸局143局に対し，44％となっている。
　また，漁業通信を中央漁業用海岸局について見ると第3-3-19表のとおりである。
（3）　母船式漁業用通信
　我が国の母船式漁業には，南氷洋捕鯨漁業と母船式北洋漁業があり，これらの漁業においても無線通信は漁獲の向上並びに安全操業に重要な役割を果たしている。母船と捕鯨船，母船と独航船との間の船間通信には中短波及び短波が使用され，母船と我が国漁業用海岸局との間の陸船間通信には短波が使用されている。
　母船式漁業においては，その通信量が膨大であることと限られた通信可能の時間帯にこれを疎通させる必要があることなどから，短時間に多量の通信疎通が可能である印刷電信方式の導入が図られ，46年以来試験通信が行われているが，まもなく実用化され，通信時間の短縮及び省力化に寄与することとなろう。

第3-3-18表漁業用船舶局普及状況(47年度末現在)

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