昭和48年版 通信白書

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第7章 技術及びシステムの研究開発

第1節 概   況

 我が国の電気通信は,明治2年東京・横浜間に開かれた有線による電信業務に始まり,明治24年逓信省電務局内に電気試験所が,更に同29年に電気試験所内に無線電信研究部が設置され,ここに電気通信,無線通信の研究開発が開始されることとなった。
 今や有線通信では,広帯域海底ケーブルが世界各地に伸び,また国内においては,伝送網の広帯域化及び電話交換の自動化技術の進歩改良に伴って,全国即時ダイヤル化が可能になるなど,電話の普及発達が促進され,電話サービスの多様化も進められているが,なお今後世界各地とのダイヤル即時化の拡大,電子計算機と結んだデータ通信サービス,その他電気通信サービスのより一層の多様化等のための研究開発が進められることとなろう。
 無線通信においては,その使用周波数帯が10数kHzの超長波から数10GHzのミリ波,更にそれ以上の光の分野に属するレーザまで,非常に広範囲にわたって多様な形で利用されつつある。
 その主なものについてみると,固定通信では,マイクロ波による超多重通信あるいは見通し外通信などへと発展し,無線航法では,中波のみならず超短波からミリ波まで利用する種々の航行援助方式が開発され,移動無線,放送においても,マイクロ波の領域まで実用化が進められているなど,電波利用の形態は非常に広範な分野にわたっている。
 また,ソ連の人工衛星打上げ成功に始まる宇宙開発では,急速な発展をみせ,人工衛星を中継体とする衛星通信は,広帯域海底ケーブルとともに国際固定通信に重要な地位を占め,テレビニュースなど即時世界中継も可能となった。
 その他,航行衛星による無線航法,国内通信衛星による固定通信,テレビ放送の難視聴解消のための衛星放送,その他衛星利用の新しい通信形態の開発が進められている。
 一方,無線利用に対する需要は激増の一途をたどっており,ミリ波帯からレーザの実用化に至る使用周波数帯の拡大,及び同一周波数の同時使用,使用帯域幅の狭帯域化,通信内容の高品質化,回線の高信頼化等有効な周波数帯利用技術の研究開発が重要な課題となっている。
 また,テレビ放送における難視聴対策の一つとして登場した有線テレビジョン放送(CATV)から発展した同軸ケーブル情報システム(CCIS)は,一般家庭を対象とした多種多様の情報交換システムとして,いわゆる情報化社会を担うものとして今後の開発が期待されている。
 その他最近においては,海洋開発に伴う電気通信利用の一環として,特異な伝搬特性を示す海中通信,山岳の多い我が国の地理的悪条件を海洋利用により解決しようとする海洋マイクロ波中継等の研究開発が大きくとりあげられてきている。
 これら現在の電気通信技術は,半導体工学,もう少し範囲を拡げて固体エレクトロニクスによって支えられているといっても過言ではなかろう。
 第2次世界大戦後の1948年,米国のベル電話研究所のバーディーン,ブラティン両博士により世に送り出された点接触形トランジスタは,まもなくショックレイのp-n接合理論に基づく接合形トランジスタが1950年に開発されるに及んで,飛躍的な発展を遂げ今日に至った。
 この間,拡散技術の応用等製法の研究開発により,周波数特性,電力特性及び信頼度が著しく改善され,また電圧制御素子として電界効果トランジスタ(FET)の開発等があり,トランジスタの応用分野が一段と拡大された。更に,小形,高速,経済化等の要求を満たすべく集積回路(IC)が開発され,高集積回路(LSI)へと発展している。
 また,コヒーレント光を利用することにより,超々広帯域通信その他広い分野に利用の可能性をもつレーザの開発などが進められている。
 このように電子回路を形成する能動素子及び部品などとともに,通信方式の研究開発により今後の電気通信はますます進歩発展していくことになろう。
 以上のような電気通信に関する基礎分野,応用分野についての我が国における主な研究機関として,次のようなものがある。
 郵政省における研究機関としては,電波研究所がある。同研究所には224名の研究者がおり,47年度予算は歳出16億6,000万円,国庫債務負担行為1億9,000万円である。
 電電公社,NHK及び国際電電もそれぞれ研究部門をもっている。電電公社には,研究開発本部,武蔵野電気通信研究所,茨城電気通信研究所及び横須賀電気通信研究所があり,研究者は1,983名,47年度予算は334億円である。NHKは総合技術研究所及び放送科学基礎研究所を設置しており,研究者は495名,47年度研究費は27億9,200万円である。国際電電にも研究者109名を擁する研究所がある。
 なお,研究機関ではないが,郵政省に電波の規律に必要な技術的諸問題に関し,郵政大臣の諮問に応じる機関として電波技術審議会が設置されている。
 以下次節においては,巨大プロジェクトといわれる宇宙開発,海洋開発及び日常生活に密着した最近の目新しい研究開発について述べることとする。

 

 

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