昭和48年版 通信白書

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3 電子交換方式と新電話サービス

 最近の情報化社会を指向する社会環境にあっては,経済活動や社会生活などにおける電気通信サービスに対する依存度は一段と高くなっており,需要の増加,要求の多様化とともに,更にデータ通信や画像通信といった新たなメディアが加わってきた。
 このような社会的な要求を十分に満たし,また,経済的に実現するためには,各種の情報を伝送,交換する電気通信システムを,いかに合理的に総合化するかが重要な問題であり,総合的,体系的なシステム・エンジニアリングの必要性が生じてきている。
 以下,総合化された通信網の中心をなす電子交換方式について,新しい通信サービスとの関連を含めて述べる。
(1) 交換技術の開発動向と電子交換方式
 電子交換機の研究開発は,第2次世界大戦前にさかのぼる。しかし,実用品としての電子交換機の可能性がでてきたのは,戦後における半導体の出現によってであり,かつ機能として蓄積プログラム制御技術を導入してからである。この技術を使った電子交換機としては,1965年にベル・システムNo.1ESSがニュージャージー州で商用化されたものが世界最初であった。欧州各国でも1950年から1960年にかけ電子交換機の研究に着手し,スウェーデンのAKE方式,西独のESK方式,フランスのEIシステムなど特徴のある方式が開発されている。
 我が国における電子交換機の本格的な実用化研究は,昭和39年より電電公社電気通信研究所を中心に進められており,第3-7-1表に示すような各方式のものが試作され46年から実際に運用されている。
 一方,国際電電でも増大する国際電話トラフィックを能率よく交換するため,46年同社の研究所に実験用国際電話交換システムKDX-0を設置した。その後ソフトウェア,ハードウェアの室内総合実験を行い,47年初めこれを完了した。今後KDX-0の成果を基礎として実用国際電話電子交換システムの開発を進め,51年ごろより運用を開始する予定である。
 電子交換方式に関する将来の研究開発の方向として最大の課題は,時分割技術を通話路に使用した時分割電子交換機の実用化であり,これとPCM(パルス符号変調)伝送路を結合してPCM統合網を実現し,効率的な画像情報の交換,高速度のデータ伝送などを可能とすることであろう。
 当面の問題としては,サービスの広域化を図るために中小規模の局における経済的な方式や遠隔制御技術の確立,半導体技術など関連技術の急速な進歩に対応する機器の経済化などが考えられるが,多様なサービスに容易に追従し得るソフトウェア技術の開発,あるいはソフトウェアの管理技術の向上も重要な検討目標である。
(2) 新電話サービスと交換機の機能
 我が国の経済的豊かさの向上と,電気通信需要の多様化によって,新たな通信サービスが要求されている。従来の電信,電話サービスのほか,これらの要求にこたえるためデータ通信サービス,画像通信サービス等の研究開発及び実用化が公衆電気通信事業体を中心に進められている。
 ここでは,これら新通信サービスのうち,データ通信,画像通信は他項にゆずることとし,新しい電話サービスについて述べる。
 新電話サービスは第3-7-2表に示されるように多種にのぼるが,主として交換機の機能に関連するものとして,現在第3-7-3表のような項目が想定される。
 これらのサービス項目に対してその実現性を検討するには,交換機能上や宅内機器としての可能性など技術的観点ばかりでなく,必要度の程度や通信事業者の経営面など総合的な評価が必要である。新電話サービスは電子交換機ではすべて実施可能であるが,既に多数設置されているクロスバ交換機では困難なものもあるので,その実施上の問題について公衆通信システム全体に対する影響も含めて,検討が行われている。
(3) 通信網の総合化と電子交換機能
 情報化社会における公衆電気通信サービスに対する需要は多量,多様化しており,これにこたえるためには,急速に進歩発展する通信技術の動向から,従来の電話網などのような単能的な回線網ではなく,データ通信や画像通信といった新通信サービスに対して高度な適合機能をもつ通信網の形成が必要である。
 通信網の形成対象としては,電話網,データ網,画像網などがあり,これらの通信網は,必要に応じて高度な性能をもった交換機を介して相互に有機的に結合されることによって総合化されるものである。
 通信網の総合化の目的は,各サービスのシステム間で設備の共用により,経済的な網構成を可能とすることであり,かつ,多様なサービスを対象として,端末相互はもちろんのこと,電子計算機相互,更には異種のサービス端末間の接続を,網構成のいかんにかかわらず可能とすることである。
 国際的にも1972年の国際電信電話諮問委員会の総会で,総合通信サービス網が検討課題として取り上げられた。我が国においても電子交換機を中心に研究が進められているが,その発展形態を展望すると,現在の電話交換網のように端末から端末までの回線接続を行う回線交換期,変換処理を含む蓄積交換を行う情報処理機能との融合期,及び交換機とディジタル伝送路とが機能的に統合化され高品質の通信システムを提供する伝送機能との統合期の段階に分けて進むものと予想されている。

第3-7-1表 我が国の電子交換機の開発経過

第3-7-2表 新電話サービスの分類と定義

第3-7-3表 新電話サービスの種類

 

 

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