昭和48年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

4 国際電気通信衛星機構(INTELSAT)

(1) 恒久制度の発足
 インテルサットは1961年7月,米国の故ケネディ大統領の世界商業通信衛星組織設立構想に基づき,1964年8月20日,ワシントンにおいて,日本を含め11か国で発足した。このインテルサットは米国,欧州間に組織に対する基本的対立を残したまま通信衛星の実用化に伴って暫定的に設立させたもので,この暫定的制度は1970年までに恒久的制度に移行することとされた。
 組織を恒久化しようとする政府間会議は米国政府の招請によりワシントンにおいて1969年2月から数次にわたって開かれ,難交渉の後に1971年5月21日国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定が採択された。この協定は1971年8月20日から署名のために開放され,我が国は同日受諾を条件として署名を行ったが,1972年6月16日国会の承認を得て,同年6月27日協定の寄託国である米国政府に対し受諾書を寄託した。
 この協定は協定自らの定めにより,1972年12月22日までに署名開放の日の暫定協定加盟国80か国の3分の2,すなわち54か国が批准等の手続を完了することを協定発効の条件としていたが,手続完了国は1972年12月14日54か国に達し,この協定はその規定に基づきその60日後1973年2月12日発効した。この間我が国は未批准国等の手続促進につき,米国,英国,カナダ,オーストラリアの諸国と協力し積極的に貢献した。
 恒久制度は,インテルサット事業そのものは暫定制度が実体的に変化なく引き継がれるものであるが,暫定制度下の問題点が解消され大きく前進している。
 第一に暫定制度下のインテルサットは法人格のないコンソーシャムであったのに対し,恒久制度下のインテルサットは政府間協定によって法人格が付与されたことである。これに伴い従来コムサットがインテルサットの管理業務を行っていたのに対し,恒久制度下ではインテルサットが自らの事務局を持ちその管理を行うこととなった。また,通信衛星などの所有も参加事業体の不分割共有という考え方からインテルサット自らが所有することとなった。また,インテルサットは政府間国際機関として一定の特権及び免除を有することとなった。第二に,暫定制度下では必ずしも明らかにされていなかったインテルサットの活動範囲が明確にされたことである。暫定制度下のインテルサットは主に国際公衆電気通信業務を扱うものとされたが,恒久制度下のインテルサットは国際公衆電気通信業務を主たる業務とするほかに国内公衆電気通信業務,無線航行・放送衛星等特殊電気通信業務を提供することができるように拡大された。一方,締約国はインテルサットとの一定の手続を要するが,独自にこれら衛星を打ち上げることができることとなっている。第三に組織の機構が整備され,すべての締約国政府で構成される締約国総会,すべての参加事業体で構成される署名当事者総会,従来の通信衛星暫定委員会(ICSC)に代わるものとしての理事会,更に事務局の四つの機関が設けられた。締約国総会はインテルサットの主たる機関として主権国としての締約国に関係する事項を扱うこととなる。理事会は従来と同じく出資率の大きさによって選ばれる理事のほかに,出資率に関係なく一定の地域を代表する地域代表制が取り入れられた。第四に出資率はインテルサットの使用実績に応じて分担されることとなった。インテルサット運営の中心的機関である理事会での意思決定は出資率による加重投票制で行われることとなるが,出資率の大きい理事国の絶対支配を排除するよう最大の投票数を40%に押さえるとともに,また出資率に関係なく多数の合意によって決定することもできるようになっている。
(2) インテルサットの現状
 インテルサットは1965年4月のアーリーバードを皮切りに次々と高性能の衛星を打ち上げてきたが,現在商用に供せられている衛星はインテルサットIV号系衛星であり,大西洋上2個,太平洋上,インド洋上各1個の計4個が配置され,衛星1個で電話換算約5,000回線の容量を有している。なお現在のIV号系衛星は1975年大西洋地域において飽和点に達するので,電話換算約7,000回線の容量のある新しいインテルサットIV-A系衛星が1975年打上げを予定し計画されている。
 大西洋,太平洋,インド洋上各衛星の利用状況は第3-8-1表のとおりである。これら衛星を利用する地球局は48か国80局に達している。
 恒久制度ではインテルサットの出資率は原則としてインテルサットの使用実績に応じて決定されることとなった結果,日本の指定事業体である国際電電は従来の1.7%から一挙に4.7%の出資率を有することになり,米国(40.6%),英国(10.6%)につづき第3位の地位を占めることとなった(第3-8-2表参照)。
 インテルサットの中心的機関である理事会では,各理事はこの出資率に基づく発言権を有するので,第3位を占める日本はインテルサットにおいて重要な地位を占めることとなり,国際的責任が倍加されたということができる。我が国は今後インテルサットの一層の発展に積極的な役割を果たさなければならない。

第3-8-1表 インテルサット衛星の利用状況(47年度末現在)

第3-8-2表 インテルサットに対する主要国の出資率

 

 

3 国際電気通信連合(ITU) に戻る 5 その他の国際機関 に進む