昭和51年版 通信白書

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1 我が国の情報流通

(1) 情報流通量のは握
 我々は日々テレビジョン放送を見たり,新聞を読んだり,友人に手紙を出したりするなど,様々なメディアを通して情報を受け取って消費し,あるいは他人に情報を提供している。ところで,このような情報の量は,過去と比べてどの程度増減しており,また,国民1人当たりではどのように変化しているのだろうか。
 主な情報流通メディアの普及状況をみてみると,1人当たり年間郵便差出通数が45年度111通から50年度126通へ,100人当たり電話機数が22台から38台へ,100人当たり1日平均新聞発行部数が35.0部から36.5部へ,1人当たり年間雑誌発行部数が18.7部から21.8部へと,いずれも普及拡大の傾向にあり,我々は年々より多くの情報を供給され,かつ消費していると言えよう。
 しかし,上記のようなメディアごとの動向の分析は,情報量を総体的に計量化したものでなく,したがって各メディアが情報流通メディア全体の中でいかなる位置を占めているか,メディア間にいかなる相関関係があるかなどの点を量的に明確にすることができない。
 そこで,このような点を明らかにし,情報化の動きを総体的に計量化するため,日常の会話から放送やデータ通信にいたるまであらゆる情報の流通量を共通の尺度で計量する情報流通センサス(注)が実施されている。以下,この調査結果を中心に,我が国の情報化の動向をみてみよう。
(注)
 情報流通センサスは,あらゆるメディアによる情報流通の量を共通の尺度で計量し,情報流通の実態を情報流通量(供給量,消費量),情報流通距離量及び情報流通コストという三つの要素から定量的かつ総体的にとらえようとするものである。計量方法を定めるに当たり,次のとおりいくつかの前提をおいている。
[1] 対象は,郵便(手紙,はがき),電報,電話,データ通信,テレビジョン放送,新聞,書籍等の情報流通メディアをはじめ,会話,学校教育,観劇といった情報流通を含め,34種類である。
[2] 各メディアの情報流通を,(a)言語 (b)音楽 (c)静止画 (d)動画の四つのパターンに分類し,その間に「換算比価値」(例えばテレビジョン放送1分間の情報量は郵便何通分に相当するか)を設定するとともに,各メディアに共通の単位として日本語の1語を基礎としたワードという単位を設け,これによりすべての情報量を換算集計する。
[3] 情報のもつ「意味」や「価値」は対象としない。
[4] 電話,手紙等のパーソナル情報流通メディアでは供給情報量はすべて消費されるものとする(供給量=消費量)。
[5] 情報流通コストは,情報を流通させるために要した経費を表し,情報の生産,処理等に要する経費は含まない。
(2) 情報流通量の推移
 第1-1-19図は,我が国において1年間に流通した供給情報量と我々が実際に摂取した消費情報量の推移を示したものである。これによると,50年度の供給量は45年度のそれに比べ1.71倍となっており,実質国民総生産よりもはるかに大きい伸びを示している。消費量は同じく1.22倍となっており,供給量に比べるとその伸びは小さいものの着実な増加を示している。
 情報の供給量の伸びが消費量の伸びを上回っているということは,一面において情報の消費について選択性が増したことを意味している。すなわち,同一メディア内においては,例えば本でもいろいろな種類のものが大量に発行され,その中での選択の可能性が増大しており,異なるメディア間においては,例えば音楽をラジオ放送で聴くか,レコードやテープで聴くか,あるいは生演奏を楽しむかといった選択,ニュースを新聞,ラジオ放送,テレビジョン放送のいずれで知るかといった選択の可能性が以前に比べ大きくなってきたと言えよう。
 一方,このような選択可能性の増大は,情報の消費率の低下と表裏の関係にとある。45年度において13.4%であった消費率は50年度には9.5%にまで低下しており,読まれなかった雑誌,ブラウン管に再現されなかったテレビ信号等の量が9割にも達し,供給情報量が増加すればするほど情報の消費率は低下する傾向にある。

第1-1-19図 我が国情報流通量の推移
 

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