昭和51年版 通信白書

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第2節 通信需要と経済要因

1 所得水準の上昇と家庭通信

(1) 家庭通信としての郵便の利用動向
 「昭和48年9月郵便利用構造調査報告書」によれば,第1-2-4表に示すとおり,私人から差し出された郵便物の割合は全体の19.5%であり,更に,私人から私人に差し出されたものが全体の17.1%となっている。また,家計における郵便支出の面から郵便利用の動向をみると,第1-2-5表及び第1-2-6図に示すとおりである。これによると,名目支出額を郵便料指数でデフレートした1世帯当たり年間実質郵便支出は,すう勢的に横ばいに推移している。また,家計における郵便支出と所得水準の関係をみると,40年から50年までの10年間に実質所得が約1.6倍に上昇しているのに対し,実質郵便支出はほぼ一定であるという事実が示すように,家庭通信としての郵便の利用は所得水準の推移の影響をほとんど受けていない。
(2) 所得水準の上昇と住宅用電話の普及
 50年度末現在の住宅用電話の普及率は100世帯当たり62.8加入に達し,10年前の同7.5加入に比べると,その普及は目覚ましく,電話がこの間に生活必需品として急速に成長したことを示している。このような住宅用電話の著しい増加の背景には,所得の増大,核家族化,人口の都市集中等経済的社会的構造の変化が存在するが,特に,高度経済成長によってもたらされた所得水準の上昇は電話を普及させた基本的要因と考えられる。ちなみに,第1-2-7図は電電公社が実施した加入電話需要構造調査における平均月収別にみた加入電話新設申込意向の有無を表したものであるが,これによれば,調査対象世帯のうち,架設申込済と回答した世帯は所得階層が上位になるにしたがって増加しており,電話の加入と所得水準との密接な関係を示している。また,第1-2-8図及び第1-2-9図は,住宅用電話普及率と所得水準との関係について,世界8か国のデータ及び我が国の一定期間のデータにより相関をとったものである。結果はほぼ同じで,両者の相関は極めて高いことがわかる。
 このような結果から,今後の我が国における住宅用電話の普及を考えると,他の条件に大きな変化がない限り所得水準の上昇につれてカナダやスウェーデンにみられるように1世帯に1台以上の普及率に達することは十分予想される。
(3) 家計における通信関係支出の動向
 家計における1世帯当たり年間の通信関係支出(郵便料,電報・電話料及び放送受信料)は,50年(1〜12月)において29,326円である(第1-2-10表参照)。これは全消費支出の1.6%,雑費支出の3.8%に過ぎないが,過去の推移をみると,この10年間に4.8倍と著しく増加している。その原因は,第1-2-11図で明らかなように,住宅用電話の普及に基づく電報・電話支出の急増であり,家庭通信における電話の役割は非常に大きくなっている。また,第1-2-12図は通信関係支出,雑費支出及び可処分所得をそれぞれに対応する消費者物価指数で実質化し,その推移を指数で比較したものである。家計における情報化の程度を表すと考えられる雑費支出は所得とほぼ同率で上昇しているが,雑費のうちに含まれる通信関係支出は急激な増加を示しており,家計におけるいわば通信性向は所得の上昇とともにますます大きくなっている。

第1-2-4表 私人・事業所間の郵便物の交流状況

第1-2-5表 家計における郵便支出

第1-2-6図 家計における郵便支出の推移

第1-2-7図 平均月収別加入電話新設申込意向

第1-2-8図 各国の住宅用電話普及率と所得水準

第1-2-9図 我が国における住宅用電話普及率と所得水準(昭和38〜48年)

第1-2-10表 家計における通信情報関係支出

第1-2-11図 1世帯当たり年間通信関係支出額

第1-2-12図 1世帯当たり通信関係支出,雑費支出及び可処分所得の推移
 

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