昭和51年版 通信白書

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2 業務用郵便の利用状況

 48年9月に実施した「郵便利用構造調査」によると,郵便物の約80%は,会社,官公署,商店等,事業所から差し出されている業務用郵便であった。
 業務用郵便について,50年度に,1か月平均1千通以上の通常郵便物を差し出す大口利用の事業所(以下大口事業所という。)の郵便利用状況と業務用郵便の中でも利用の多いダイレクトメールの利用状況の調査を行った。
(1) 大口事業所の郵便利用状況
 郵政省では,49年10月,1か月平均1千通以上の通常郵便物を差し出す郵便の大口事業所について,全国の総数,地域的分布の特色,産業別の特色等をは握するため調査を行ったが,大口事業所の数は約3万8千に上り,また,これらの大口事業所が差し出す郵便物は全国で差し出される郵便物数の約40%をも占めるという結果を得た。
 この調査に引き続き,50年10月これらの大口事業所が業務上で郵便をどのように利用し,どの程度の必要性を感じているかなどについては握するため,上記3万8千の大口事業所の中から約4千事業所を抽出して,「業務用郵便の利用状況に関する調査」を行った。
 その調査結果のあらましは次のとおりである。
ア.大口事業所の1か月差出郵便物数
 全国の大口事業所が50年10月1か月間に差し出した内国通常郵便物は約4億3,200万通と推計される。同月の全国引受物数は,約9億3,400万通であったから,大口事業所の差出郵便物は全体の約46%を占めることになる。
 大口事業所の差出郵便物を内容別にみると,ダイレクトメール,商品見本,カタログ等の「宣伝・広告関係」が約1億5,300万通で最も多く35.4%を占めている。更に,電気,ガス,電話等の料金を金融機関の口座を利用して払い込んだ場合に郵送されてくる領収証(振替済通知書)等に代表される「金銭関係」が21.0%,「新聞・書籍・雑誌」が18.6%,これら以外の「通知・連絡関係」が23.9%となっている。
 また,前記「郵便利用構造調査」の結果により,郵便物の内容別に,更に差出主体別に案分推計すると,これらの大口事業所の差し出す郵便物の占める割合がいかに高いかが一層明確になる。
 すなわち,「宣伝・広告関係」は全国で差し出される同種郵便物の,実に86%がこれらの大口事業所から差し出されており,ダイレクトメール等の利用動向は,ほとんどこれらの大口事業所の動向にかかっているといえる。
 また,「金銭関係」や「新聞・書籍・雑誌」についても,それぞれ51%,68%と高い割合になっている(第2-1-2表参照)。
イ.大口事業所における郵便物の業務上の必要性と他の通信手段への代替可能性
(ア) 大口事業所における郵便物の業務上の必要性
 「日常の業務を遂行する上で,郵便がどの程度の必要性ないしは重要性をもっているか」について,大口事業所の評価は第2-1-3表のとおりであった。
 「宣伝・広告関係」以下4種類(内容別)の郵便物ともに,ほぼ60%以上の大口事業所が「減らすことはできない」と回答しており,事業活動上郵便が重要な役割りを果たしていることがうかがわれる。中でも「金銭関係」の郵便物を減らすことはできないとする大口事業所が最も多いのが注目される。
 一方,はっきりと「場合によってはやめてもいい」とする大口事業所は極めて少ない。
(イ) 他の通信手段への代替可能性
 「現在利用している郵便の用件を,電話,テレックス・テレタイプ,ファクシミリ,データ通信,マスメディア,自社便・使送便等の他の通信手段に切り替えられるか」について,大口事業所の評価は第2-1-4表のとおりであった。
 「容易に切り替えられる」とする大口事業所は2〜3%と極めて少なく,ほぼ過半数の大口事業所が「不可能」と答えている。
 また,「できないことはない」とする大口事業所が20〜30%あるが,特に「宣伝・広告関係」に多くなっている。
 第2-1-5表は,第2-1-4表で「郵便を他の通信手段に代替することが容易にできる」と回答した事業について,「どのような代替手段を想定しているか」を調査したものである。
 これによると,郵便の内容の特性によって代替手段が異なってくるのがわかる。すなわち,「宣伝・広告関係」はマスメディア(ラジオ,テレビ,新聞広告)がその半数を占め,自社便・使送便が26%となっている。また「新聞・書籍・雑誌」は,約59%の事務所が自社便・使送便に代替することを考えている。一方,「金銭関係」,「通知・連絡関係」はいずれも約半数の事務所が電話に,22%が自社便・使送便に代替する可能性があるとしているが,「通知・連絡関係」では事業所の約30%がテレックス・テレタイプに代替させるという点が特徴的である。
(2) ダイレクトメールの利用状況
 ダイレクトメールの送り手と受け手を対象として,50年12月,郵便の社会的機能に関する意識の調査を行った。この調査は,ダイレクトメールを月500通以上発送している東京所在の企業200社を対象とした調査と,首都圏に住む20才〜69才の人々から1,000人を抽出して行った個人調査とから成っている。この調査結果のあらましは次のとおりである。
ア.ダイレクトメールの送り手
 ダイレクトメールの発送は,定期的に行われているのか,あるいは随時行われているのかを調べてみた結果は第2-1-6図のとおりである。定期的にのみ発送する企業が19.5%とやや少なく,特に発送日を決めず随時発送する企業が50.5%と多い。自由に,いつでもタイミングよく,集中的に,目ざす相手にメッセージを伝達させることが,ダイレクトメールの特徴の一つであり,そのように多くの企業が利用しているといえよう。
 発送地域は,第2-1-7図に示すとおり,全国的に発送している企業が特定地域に発送している企業を上回っている。
 ダイレクトメールな出す目的を調査した結果は第2-1-8表のとおりである。これをみると,直接購入,知名,顧客維持,関心高揚をあげる企業が多い。ただし,ダイレクトメールの目的についての考え方は業種によって差があり,直接購入に高いウェイトをおいているのは印刷・出版業,知名を目的にしているところは建設・製造業である。卸・小売業では,他業種と比べて,顧客維持,来店促進をあげている企業が相対的に多いという特徴がみられる。金融・保険・不動産業では,訪問を円滑にする目的でダイレクトメールを出している企業が多い。
イ.ダイレクトメールの受け手
 「本人あて,あるいはあて名は本人あてでなくても,内容的に本人あてと考えられるようなダイレクトメールの1か月間の受信通数」は第2-1-9表のとおりである。受信通数は1〜3通の人が多く約3分の1を占めている。0通を含めると,受け手の7割までは3通以下である。
 「ダイレクトメールな受け取ったことのある人にふだんダイレクトメールに目を通すかどうか」を尋ねた結果は,第2-1-10表のとおりである。これをみると,「ほとんど全部のダイレクトメールに目を通す」人が36%,「見ないものもあるが目を通すダイレクトメールの方が多い」人が18%と,ダイレクトメールは割合とよく目を通しており,目を通さないものが多い人は2割にすぎない。
 第2-1-10表で少しでもダイレクトメールに目を通すと回答した1〜4の人に対して「ダイレクトメールを読む主な理由」を尋ねた結果は,第2-1-11表のとおりである。これによると,「自分の関心がある商品のことが書いてあるから」と,「一応目を通しておけばいずれ役に立つから」というのが多い。しかし,人々のダイレクトメールを読む理由は多様であり,特定の理由への集中傾向はそれ程強くない。

第2-1-1表 50年度総引受郵便物数

第2-1-2表 大口事業所の内容別差出郵便物数等(通常郵便物,50年10月1か月間)

第2-1-3表 大口事業所における郵便物の業務上の必要性に関する評価

第2-1-4表 他の通信手段への代替可能性に関する評価

第2-1-5表 郵便の代替手段に関する評価

第2-1-6図 ダイレクトメールの発送の仕方

第2-1-7図 ダイレクトメールの発送地域

第2-1-8表 ダイレクトメールの発送目的

第2-1-9表 1か月間のダイレクトメール受信通数

第2-1-10表 受け手のダイレクトメール接触度

第2-1-11表 ダイレクトメールを読む理由
 

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