昭和52年版 通信白書

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第4節 宇宙通信の展望

1 宇宙通信技術の発展と利用の可能性

 インテルサットや諸外国の国内衛星通信システムに見られるように各国において衛星通信技術の研究開発が活発に進められており,その成果が期待されているが,今後も社会の高度化に伴い,通信需要の増大と需要形態の多様化によって,衛星通信の重要性は一段と高まるものと予想される。
 通信,放送衛星の伝送容量は衛星重量に密接に関連しているが,現在のところ,この衛星重量はロケットの打上げ能力に依存するところが大きい。我が国においては50年代末までに500kg以上の静止衛星の打上げが可能なロケットの開発研究を進めており大容量衛星の出現が期待できる。また,米国においては,大型ロケットに加えスペース・シャトルの開発が進められているので,今後ますます衛星打上げ能力の拡大が図られ,通信,放送衛星の多様化が予想される。また,超LSIの開発に見られるように最近の電子通信技術の発達は目を見はるものがあるが,特に固体,集積化技術の進歩により衛星とう載機器の小型,軽量化が可能となり,単位重量当たりの通信容量は格段に増大する傾向にある。
 加えて,衛星に関する各種の技術開発が進展するに従い衛星の性能の向上が可能となり,軌道保持技術,姿勢制御技術等の向上と相まって衛星の長寿命化が図られているので,より経済的な衛星通信システムの実現が予想される。
 周波数についてみると,通信衛星では現在,主として6/4GHz帯が利用されているが,増大する通信需要を満たすことが困難になってきているので,スポットビームの利用による空間分割や直交偏波利用等による周波数再利用の技術開発が進められてきているが,さらに10GHz以上の準ミリ波,ミリ波帯の新規周波数開発を積極的に進める必要がある。我が国のCS及びECS計画は,このような観点から世界で初めて30/20GHz帯及び35/32GHz帯を使用する予定であり,その成果が期待されている。
 放送衛星システムは一般家庭における個別受信を最終目標とするため地上受信設備の経済性が要求される。このため放送衛星の大出力化と地上受信機の低価格化が技術的課題となっている。
 衛星送信電力を大きくするためには,とう載中継器に使用されている進行波管(TWT)の高能率,高出力化が必要であり,現在各国でその研究が進められている。
 地上受信機については,外国においても研究,開発が積極的に進められているが,NHKが開発した小型受信機が国内はもとより諸外国においても注目を集めている。しかし,実用段階での小型受信機については,さらに価格の低廉化及び性能の安定化等についての研究が必要である。
 一方,衛星を移動通信のために利用する傾向は,今後とも海上,航空及び陸上の各分野において強まって行くものと考えられるが,海上移動通信についてはLバンドにおける高出力管,成形マルチビームアンテナ,小型船上端末設備等の開発及び研究が早期に進められていくであろう。
 このように衛星通信技術は今後ますます発展するとみられ,こうした技術革新を背景に様々な利用形態が可能になると考えられる。既に諸外国においては,衛星通信は一般公衆通信や行政等の専用通信として実用に供されているのみならず,米国,カナダ,ヨーロッパ等においては教育,医療の分野での利用実験を実施し多大な成果を上げている。我が国においてもこうした分野への利用は社会生活の向上,福祉の増進に役立つと考えられるが,さらに衛星通信は離島等との通信,放送の充実及び地震等の災害に備えての伝送路の確保にも大きく寄与することが期待されている。
 

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