昭和52年版 通信白書

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1 ファクシミリ技術の動向

 ファクシミリは,電話にはない記録性があること,漢字を含む日本語並びに図形の情報伝達に適合する通信手段であることなどの特長を持ち,今後の発展が期待されている。
 我が国においては,47年度のいわゆる網開放を機に公衆電話網を利用するファクシミリが発展し,事務合理化の手段として広い分野で積極的に利用ざれつつあり,そのため,電電公社の電話ファクスや各社の自営端末用ファクシミリ装置が商品化されている。
 また,電話回線を利用するファクシミリ伝送の高速化のため,信号の冗長度を除去する技術と伝送路に送り出す情報量を高密度伝送するための各種の帯域圧縮技術の研究開発が進められており,A4版の原稿の伝送速度が6分から3分へ,更には1分へとより高速のファクシミリの開発が進められている。
 国際電電では,52年1月から2月にかけて,同社で開発した超高速ディジタルファクシミリ装置の日米間対向試験を行った。実験に用いた装置は,RAC(Relative Address Coding)方式により信号の冗長性を削減して高速ファクシミリ伝送を可能としたものであり,専用データ回線だけでなく公衆電話回線においても効果を発揮する。
 実験は,第2-7-9図に示すように,太平洋上のインテルサット<4>号衛星,太平洋海底ケーブル,米国内のRCAアメリコム衛星などを組合せた専用回線及び国際デーテル交換網を使用して行われ,その結果,本装置の高速性,高信頼性が確認された。また,受信画質は,伝送誤りの自動再送訂正を行っているため,予想どおりの好結果が得られている。
 ファクシミリ伝送の各種規格に関しては,国際的にも種々審議されており,例えば,帯域圧縮等の技術が異なると相互通信が不可能となり,ファクシミリ通信の今後の発展に大きな支障をきたすため,CCITT(国際電信電話諮問委員会)においても電話回線を利用したファクシミリについて,グループ1(6分機),グループ2(3分機),グループ3(1分機)の分類の下に冗長度圧縮方式,変調方式,制御手順等の規格の標準化が審議されている。
 51年秋に開催されたCCITT総会において,グループ1(6分機),グループ2(3分機),グループ3(1分機)の制御手段に関する新規格並びにグループ2(3分機)の新しい規格が正式に決定されたのに伴い,各国のメーカーが一斉にCCITT規格に準じたファクシミリの開発を開始しており,我が国でも電電公社をはじめ各社で急ピッチで開発が進められている。円滑な相互通信を目的とする標準化傾向は,今後一層強まるものと予想される。更に,ディジタルデータ交換網を利用するディジタルファクシミリ方式,同報通信方式及び異機種端末間通信を行うためのファクシミリ蓄積交換方式等の研究開発も行われている。
 ファクシミリは,その記録性から不在受信もできるため,家庭でも便利な通信手段であり,小形化,経済化を図った操作の容易なファクシミリ装置の開発が進められている。ファクシミリの走査方法については,高速化等に対処するための電子的走査方法の開発が進み,記録方法についても放電記録,静電記録,化学写真記録のほか,感熱記録,インクジェット等の各種の方式についても研究開発が進められている。
 国際電電では,将来のファクシミリ交換サービスに備え,方式の異なる端末装置間の相互通信,同報,預りサービス等の新サービスを指向する実験用ディジタル・ファクシミリ交換システムの試作研究を進めている。
 本システムの特徴の一つは,回線交換と蓄積交換のハイブリッド交換方式を採用し,サービスの迅速性と融通性を兼ね備えていることである。すなわち,両通信端末が,情報圧縮方式,解像度,伝送速度等において同一で,かつ回線があいている時には,回線交換により通信の迅速性を発揮する。両端末の方式が異なる場合又は回線がふさがっている時あるいは同報,預り等情報蓄積を必要とする場合には,蓄積交換とし,きめ細かい情報処理を行うとともに回線の利用効率の向上を図っている。

第2-7-9図 超高速ディジタルファクシミリ装置の日米間試験回線構成
 

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