昭和52年版 通信白書

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7 電離層の観測

 電離層の観測は,短波無線通信回線の設計及び運用上不可欠なものであり,我が国では,国際地球観測年をはじめとする数次の国際共同観測に参加し,電離層の世界分布の究明に貢献してきた。研究面では,地上からの観測と人工衛星,ロケット等により上空からの立体観測が行われ太陽地球間物理学(STP)の新分野を誕生させた。
 人工衛星を利用した宇宙通信は急激に利用が上昇し,国際幹線は短波通信からマイクロ波通信に移行した。しかし設備が簡便で経費の安い短波通信は,国際幹線通信から,その利点の大きい小型船舶等移動用の通信への利用の転換が進み,日本では重要な通信手段となり,その電波の伝搬状況の利用地域における詳細な予報・警報の必要性がますます重みを増してきた。
 郵政省電波研究所では,このため国内の5観測所で実施している電離層定常観測と平磯支所で行っている太陽電波等の観測から電波の週間予報や3か月先の電波伝搬予報を行っており,異常現象の警報も高確率で実施してきている。
 51年は電離層観測衛星「うめ」が打上げられ,地上観測点のない無人地域の観測結果が得られ,一層の精度の向上が期待されたが衛星の機能停止で目下中断している。本年は,国際磁気圏観測計画(JMS)の初年度であり,秋田では流星レーダ観測が始められ電離層下部の研究が進められている。コンピュータを利用した電波予報システムも完了し,52年1月分の月間予報には,国内3地点を基点とする国内近距離漁船用のより使い易い短波予報のサービスを行うようになった。
 南極地域における電離層の観測には毎年参加しており,今期は,オーロラ発生時のロケット観測の成功により極地域の上層大気の研究に有益な資料が得られた。
 近年各種公害問題が話題になっているが,超高速航空機によるオゾン破壊が日常生活に影響することが指摘され,地球環境の監視が重要視されるようになった。このため電離圏に限らずもっと広範囲(特に中間圏以下成層圏まで)の大気の観測が必要とされ,電離層観測技術の応用・発展が期待されつつある。
 

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