昭和52年版 通信白書

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3 国際電気通信連合(ITU)

(1) 概   要
 国際電気通信連合(加盟国153)は,国際連合の専門機関の一つで電気通信の分野において広い国際的責任を有する政府間国際機関である。
 我が国は,1879年に万国電信条約に加入して以来,引き続いて累次の条約の当事国となり,電気通信の分野における国際協力の実をあげてきており,1959年以降は,連合の管理理事会の理事国及び国際周波数登録委員会の委員の選出国として連合の活動に積極的に参加している。また,連合の本部職員として我が国から現在6名が派遣されている。
(2) 管理理事会
 管理理事会は,条約,業務規則,全権委員会議の決定並びに連合の他の会議及び会合の決定の実施を容易にするための措置をとり,また,全権委員会議から付託された案件を処理することを任務としている。
 第31回会期管理理事会は,1976年6月14日から7月2日まで3週間スイスのジュネーブにおいて開催され,連合の会議・会合の計画,1977年度予算,人事関係,技術協力関係等について検討を行った。
(3) 12GHz帯における放送衛星業務の計画に関する世界無線通信主管庁会議
(1) 会議の概要
 上記会議は,1977年1月10日から2月13日までの間,ジュネーブにおいて開催された。この会議では,第1地域(ヨーロッパ,アフリカ並びにモンゴル及びソ連領のシベリア)及び第3地域(アジア, 太洋州)における放送衛星業務の周波数割当計画の作成及びこれに伴う関係規定並びに第2地域(南北アメリカ)の放送衛星業務の実施のための指針の制定等を行った。
 会議には,国際電気通信連合(ITU)の連合員(加盟国)114か国及び関係国際機関の各代表並びにITU事務局職員を加えて約700名が出席した。
 会議の諸決定は最終文書に収録されているが,この最終文書には106か国が署名した。
 なお,上記の周波数割当計画及び関係規定は,1979年1月1日グリニッジ標準時0001から実施され,この実施期日から少なくとも15年間12GHz帯における放送衛星業務及び関係業務の要求を満たすものと見込まれている。
(2) 会議の成果
 会議において決定された主な事項は次のとおりである。
[1] 周波数割当計画
 第1及び第3地域については,周波数割当計画が作成された。
 作成に当たっては,個別受信を前提に,各国の要求を最大限に満たすことを基本とした。チャンネル間隔を19.18MHzとして第1地域(11.7〜12.5GHz)は40チャンネル,第3地域(11.7〜12.2GHz)は24チャンネルを設定し,衛星相互の軌道間隔を原則として6度として,第1及び第3地域全体で延べ984チャンネルが割り当てられた。我が国は日本全域をカバーするのに最適とされる赤道上の東経110度の位置に8波の割当てを受けた。
 第2地域については,1982年までに地域主管庁会議を開催して放送衛星業務と固定衛星業務の周波数割当計画を作成することとし,それまでは第1及び第3地域の放送衛星業務の技術基準を指針とするとともに,現行の調整手続(1971年の宇宙通信に関する世界無線通信主管庁会議決議第3)の規定を継続適用することとされた。
[2] 放送衛星業務の技術基準等
 放送衛星業務の周波数割当計画を作成するための技術基準等を設定するに当たって,[1]貴重な資源である周波数及び軌道の有効利用に資するものであること,[2]衛星を使用するものであっても一般公衆を対象とする放送であるから,簡易に直接受信ができるようなものにすること,[3]周波数帯が他の業務と共用になっているので,他の業務と共存できるようなものでなければならないことなどが考慮された。
ア 技術基準の主なものは次のとおりである。
(ア) 変調方式:一つの映像信号と一つの音声信号で搬送波を周波数変調(FM)するもの
(イ) 偏波面:円偏波
(ウ) CN比(搬送波電力と雑音電力の比):14dB
(エ) 混信保護比:同一チャンネル31dB,隣接チャンネル15dB
(オ) 受信機のG/T(受信機の性能指数受信アンテナ利得対受信機の雑音温度):個別受信6dB/K,共同受信14dB/K
(カ) 必要周波数帯幅:625本方式27MHz,525本方式(第3地域)27MHz,525本方式(第2地域)18〜23MHz
(キ) 軌道保持精度:±0.1度(東西方向,南北方向とも)
イ 他の業務との周波数共用の基準
(ア) 他の業務との混信保護は,第2-8-1表の基準による。
 BSS:放送衛星業務
 FSS:固定衛星業務
 BS:放送業務(地上)
 FS:固定業務
 FDM:周波数分割多重
 4φ-PSK:4位相変調
 VSB:残留側波帯振幅変調
 C/I:希望信号の搬送波電力と妨害信号の電力の比
 N:雑音電力
 dBW/m2/4KHz:4KHzでの1平方米当たりのデシベル・ワット
(イ) 放送衛星業務と他の業務との周波数共用を容易にするためにエネルギー拡散を採用することになった(拡散度22dB)。
(ウ) その他,放送衛星業務と地上業務及び固定衛星業務との間における周波数共用のための基準として電力束密度の制限値等が定められた。
[3] 管理規定等
 第1及び第3地域の12GHz帯における放送衛星業務の周波数割当計画が作成されたことに伴い,その計画の安定性を確保するとともに他の業務との両立性を確保するため,計画に含まれる周波数割当ての技術特性の変更及び計画にない新たな周波数割当ての設定をしようとするとき又は計画に含まれる放送衛星業務の局に影響を与える地上業務若しくは固定衛星業務の局を新設しようとするときは,関係主管庁の間で合意又は調整を要することとされ,そのための手続規定が定められた。
[4] 決議及び勧告
 最終文書に含まれている周波数割当計画及び関係規定を1979年の無線通信規則及び追加無線通信規則の全般的改正のための世界無線通信主管庁会議において,無線通信規則の附録とするための決議等並びにCCIR及び各主管庁に対する同主管庁会議のための準備等に関する勧告が行われた。
(4) 国際無線通信諮問委員会(CCIR)
 CCIRは,無線通信に関する技術及び運用上の諸問題に関して研究し,勧告を行うことを任務としている。
 51年度においては,5月3日から6月4日までジュネーブにおいてCCIR研究委員会中間会議(Bブロック)が開催された。中間会議のAブロックは51年2月〜3月にすでに開催されている。
 Bブロックの会合において開催された研究委員会は,第一(周波数の有効利用及び電波監視),第四(通信衛星),第九(無線中継),第十(音声放送),第十一(テレビジョン放送),CMTT(テレビジョン及び音声プログラムの長距離伝送)の各委員会であり,このほか,中間作業班(IWP),PLEN-2(放送衛星システムの技術的・経済的可能性)及び合同作業部会(12GHz帯の放送衛星業務の計画に関する世界無線通信主管庁会議の準備)の各会合もあわせて行われた。
 これらの委員会及び作業部会等には,主管庁40か国,認められた私企業34団体,学術工業団体15団体,国際機関5機関,国際連合の専門機関1機関等が参加し,参加者総数は約600名であった。
 会議に対する各国からの寄与文書は680件(うち日本からは合計44件)であり,これらの寄与文書を基に,458件の勧告案及び報告案の文書が作成された。
 審議結果のうち,主要事項は次のとおりである。
(1) 放送衛星システムの技術的・経済的可能性
(2) 高精細度テレビジョン及び静止画像の放送等の新しい放送方式
(3) 国際接続用テレビジョン回線の伝送規格
(4) 電波技術の発展に対応できる発射の表示法
(5) 衛星通信回線の雑音規格,誤り率規格及び他の衛星システムからの許容干渉量
(6) 対地静止衛星の位置保持
(7) 無線中継におけるディジタル方式の標準擬似回線
 さらに,12GHz帯の放送衛星業務の計画に関する世界無線通信主管庁会議(WARC-BS)の準備のための合同作業部会(JWP)においては,放送衛星システムの技術特性,放送衛星業務の計画に必要な技術基準,周波数計画法,放送衛星業務と他の業務との周波数共用基準等に関して包括的な技術報告書が作成された。
 また,先に我が国から提案し採択された新研究問題「40GHz以上の電磁波スペクトラムを利用したシステム」に関しては,我が国から提出したレーザ技術の現状に関するデータを基に審議が行われ,新しい報告案が採択された。この分野の研究は,周波数有効利用の研究に新しい分野を開くものとして各国とも高い関心をもって進めており,今後の研究はますます活発になるものと予想される。
 なお,今後の会合の予定としては,52年9月から10月までの間に放送,通信衛星,無線中継等に関する各研究委員会の最終会議が,また53年1月から2月までの間に周波数の有効利用,移動無線,電離層伝搬,標準周波数等に関する各研究委員会の最終会議がジュネーブで開催され,さらに53年6月には第14回総会が前述の中間会議及び最終会議においてまとめられた報告案や勧告案を審査し承認するとともに,次会期以降研究すべき課題,その審議計画,審議体制等を決定するため,京都で開催されることとなっている。
(5) 国際電信電話諮問委員会(CCITT)
 CCITTは,電信及び電話に関する技術,運用及び料金の問題について研究し,勧告を作成することを任務としている。
 1976年度には,9月27日から10月8日までジュネーブにおいてCCITT第6回総会が開催され,前回の総会(1972年)で定められた研究課題について全研究委員会から最終報告が行われ,新勧告の採択,次回総会までの研究会期(1977年-1980年)に関する必要な決定等を行った。
 今次総会においては,特に電報業務に関する新語数計算規則,新データ網,電子交換技術,ファクシミリ,データ伝送等について,新しい勧告が採択されたが,我が国は,ほとんどすべての研究委員会の会合に参加するとともに多数の寄与文書を提出し,これらの勧告の作成に積極的に貢献してきた。
 また,各研究委員会の議長,副議長の選出も行われたが,我が国からは1名の議長及び6名の副議長が選ばれ,新研究会期のCCITTの研究活動の中心的役割を果たすこととなった。

第2-8-1表 周波数共用の基準
 

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