昭和53年版 通信白書

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1 情報化と情報流通センサス

 現代の我々の生活においては,電話,カラーテレビ,ラジオは言うに及ばず,ファクシミリ,オンラインの座席予約や銀行預金引き出し等のデータ通信の存在は当然のこととして利用されている。しかし,これらはごく最近になって可能となった技術であり,これらたくさんの新しい情報メディアの誕生,普及によって,わずか15年余りの間に我々の情報処理能力は何倍にも,あるいは何十倍にも飛躍的に増大したということは,実感として誰もが共通に認めるところであろう。
 それでは一体,いつ,どのようにして,どの程度社会の情報化は進展し,それによってどれだけの富が築かれ,どれ程の社会的利益あるいは損失があったのか,といった情報化の程度を定量的には握する方法については,かろうじて電話機の普及率,テレビ受像機の総台数,コンピュータのオンライン化率等,個々のメディアについて各々異なった基準を用いて数値を提供するのがせいぜいで,総合的,全体的に情報の量をは握することは,「情報」というものの性質からみて困難であるとされ,ほとんどこの方面に対する研究はなされていない。
 郵政省が48年度から実施してきた「情報流通センサス」(注)は,この方面における数少ない研究の一つであって,理論としての厳密さや,仮説の設定の方法等多くの未解決の問題を残してはいるが,情報化の動向を総体的には握する一つの有効な材料となっている。以下ではこの「情報流通センサンス」の手法に基づいて行われた35年度から50年度までの我が国の情報流通の動向に関する調査結果から,我が国の情報化について論じてみよう。
(注)情報流通センサス
 情報流通センサスは,あらゆるメディアによる情報流通の量を共通の尺度で計量し,情報流通の実態を情報流通量(供給量,消費量),情報流通距離量及び情報流通コストという三つの要素から定量的かつ総体的にとらえようとするものである。
 計量方法を定めるに当たり,次のとおりいくつかの前提を置いている。
[1] 対象は郵便(手紙・はがき),電報,電話,データ通信,テレビジョン放送,新聞,書籍等の情報流通メディアをはじめ,会話,学校教育,観劇といった情報流通を含め,34種類とする。
[2] 各メディアの情報流通を,(a)言語,(b)音楽,(c)静止画,(d)動画の4つのパターンに分類し,その間に「換算比価」(例えばテレビジョン放送1分間の情報量ははがき何通分に相当するか)を設定するとともに,各メディアに共通の単位として日本語の1語を基礎としたワードという単位を設け,これによりすべての情報量を換算集計する。
 また,「白黒」と「カラー」という情報量の差も同時に設定した。
[3] 情報の持つ「意味」あるいは「価値」については計量の対象としない。
[4] 電話,手紙等のパーソナル情報流通メディアでは供給情報量はすべて消費されるものとする(供給量=消費量)。
[5] 情報流通コストは情報を流通させるために要した経費を表し,情報の生産,処理に要する経費は含まない。
 また,情報流通メディアは,流通経路の物理的特性,流通の形態及び情報の表現形式の三つの要素により第1-1-14表のとおりに分類できる。本センサスにおいては情報流通メディアをこれらの分類により,相互に比較して,その現況及び将来の発展の可能性について分析を行い,情報化の進展によってどのようなメディア選択がなされていくのかについての判断材料とすることも大きな目的の一つとなっている。

第1-1-14表 情報流通メディア分類表

 

 

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