昭和53年版 通信白書

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第3節 画像通信と新情報メディアの展開

 交通・通信機関の発達によって,時間距離と経済距離が大幅に縮小されるとともに,情報の流通速度が高まり,情報流通量の増加がもたらされた結果,工業化社会から情報化社会への移行が唱えられるようになってから既に10年以上の歳月が経過した。この間,電気通信技術の開発が着々と進み,データ通信の分野等を中心とした情報流通量の加速度的な増大と,情報メディアの高度化,多様化が進行しつつある。
 この情報を人間の視覚に訴える情報と聴覚に訴える情報に分け,前者を視覚情報,後者を聴覚情報と呼んでいる。人間の日常生活においては,五感によって感知する情報の60〜80%は視覚により,聴覚によるものは10〜20%にすぎないとされており,視覚によって感知する情報量がいかに大きいかが分かる。この視覚情報の特徴としては,[1]パターン認識,色彩識別が可能であること,[2]2次元的空間に表示される豊富な情報から受け手が必要とする情報を任意に選択可能であること,[3]2次元あるいは3次元の広がりを持ったいわゆる空間情報であり,しかも冗長度が極めて大きいこと,などが挙げられる。画像通信は,このような視覚情報を主とする通信であって,一般的には可視的な情報を電気的信号に変換して伝送し,これを受信側で視覚情報の形で忠実に再現する通信形態をいう。
 画像通信は,転換期に立つ社会経済環境の中で既存のメディアである電信電話に続く極めて重要なメディアになるものと考えられ,個人生活の多様化や利便向上,社会企業活動の効率化,都市における交通,公害問題,地域格差の是正,省資源・省エネルギー,社会福祉対策などの種々の問題の解決に大きく貢献するものと期待されている。
 このような時代のすう勢にこたえて,ファクシミリやテレビ電話,テレビ会議等各種の画像通信方式の研究,実用化が進められており,既に商用サービスとして提供されているものもある。更に最近の特徴としては,情報化社会の進展に伴い,多種多様化してきた国民の情報に対するニーズを充足する新しい情報メディアの開発が進められており,キャプテンシステム,テレビジョン多重放送あるいは多摩ニュータウンでのCCIS(同軸ケーブル情報システム:Coaxial Cable Information System)等,画像通信を使った様々の通信形態が脚光を浴びつつあり,画像通信による新たな情報メディアの発展の胎動がみられる。
 本節では電気通信の主役として新しい段階を迎えた画像通信について,その現状を明らかにするとともに,画像通信を利用した新しい情報メディアとしてキャプテンシステムの実験構想及び多摩CCIS実験の成果等について紹介することとしたい。

 

 

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